盛駅の「ふれあい待合室」は三陸鉄道の名物のひとつだった。震災で大打撃を被った三陸鉄道に代わって駅の業務を行ってきたのは、NPO法人夢ネット大船渡。まだ列車の全線運行が再開される前から、駅舎を利用した街の賑わいと交流の場づくり、平成25年4月からは乗車券の販売など駅業務も委託運営してきた。
都会の鉄道とは違って運行本数が少ないため、駅での待ち時間は長い。お茶のサービスや物品の販売、三鉄と沿線を盛り上げるイベント関連の情報などが溢れるように並ぶふれあい待合室は、旅行者にとってもなごみの空間だった。
しかし、夢ネットによる駅業務は3月31日で終了。年度がかわった4月1日からは三陸鉄道社員による駅業務がスタートした。
夢ネットによる運営が終わる直前に行ってみると、ふれあい待合室の中で販売されていたグッズはほとんど完売されていたが、新年度になって訪れると、待合室はさらにガランとしていた。
三陸鉄道の制服を着た駅員さんは、「まだ不慣れなものでね」と苦笑しながら、仕事に慣れたら少しずつでも以前のような雰囲気に近づけて行きたいと語っていた。
駅のホームや車庫前に佇む車両も、心なしか寂しそうに見えてしまう。
夢ネット大船渡は盛駅の事業の他、仮設住宅や復興公営団地などでの支援活動も行ってきた。とくに、夢ネットが継続的に取り組んできた手芸教室は、被災した人たちの間で根強い人気を持っていた。
新年度からは手芸教室などの支援活動も再編・縮小されている。東北の被災地での活動に対する助成金がとりにくくなったことが背景にあるとの声もある。
夢ネット大船渡の活動がなくなってしまうわけではない。活動を縮小せざるを得ない状況があるのは現実だ。
盛駅に関してはそもそも三鉄の駅なのだから三鉄が運営するのが当たり前と見る向きもあるかもしれない。しかし、この変化が震災から6年という時間の意味を考えさせられる出来事であることも間違いない。
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