ここまで来る人はほとんどいないよ

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岩手大学の学生と教員による陸前高田市応援チーム「岩大E_code」が発行しているガイドブック「だいぶそこまで秋号」にはおもしろい記述がある。

このまちにはいわゆるただの「そば屋」はない。でも「やぶ屋」や「かもん」はある。「本屋」はなくて「伊東文具店」がある。

『だいぶそこまで秋号』岩大E_code

その伝でいうならば、陸前高田でお茶屋さんと言えば「小谷園」ということになる。この小谷園さん、かさ上げ工事の影響で、下和野団地近くの仮設店舗を閉鎖して、先日高台に新たな仮設店舗をオープンした。

新しい仮設店舗を訪ねてみたら、そこは造成されたばかりの高台の一番奥。周辺は住宅区画なのだが、まだほとんど着工されてもいない。

震災後、最初に再開した店舗から数えて3軒目の仮設店舗。本設の店舗がつくれるのはまだ先のことだという。小谷園の小谷さんはまちづくりについても一家言持っていて、なにより話が面白い方。言葉は東北弁なのだが、歯切れがよくてどこか江戸っ子みたいな感じでぽんぽん話が飛び出してくる。

先月閉鎖された小谷園の旧仮設店舗
先月閉鎖された小谷園の旧仮設店舗

新しい仮設店舗に入ると、間取りこそ違うものの雰囲気は以前の仮設店舗にも通じるものがある。小谷さんは笑いながら「ここまで訪ねて来る人はほとんどいないよ」と言い放った。

でも、店の中に設えられたお茶っこスペースにはお客さんがいて、小谷さんや奥さんとおしゃべりしている。さらにやってくるお客さんもいる。

周囲にはまだ何もないのだから、何かのついでになんてことはあり得ない。やって来る人はみんな、小谷園さんを訪ねてやって来ているのだ。

わざわざ訪ねたくなる店。訪ねておしゃべりしたくなる人。小谷園や小谷さんのような人、小谷園を訪ねて来るような人が。これからの新しいまちを形づくっていくのだろう。

そう思うと、仮設店舗から見渡せる海の色までが暖かそうに思えてくるのだ。

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