【シリーズ・この人に聞く!第44回】振付師のユニークさを俳優業にも活かす パパイヤ鈴木さん

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おやじダンサーズとして活躍する一方、サザンオールスターズやユーミンなど多くのミュージシャンの振付を担当し、歌うこと以上に踊りの楽しさを伝える舞台づくりに欠かせないプロデューサーとして不動の地位を築く。現在放映中のNHK大河ドラマ「天地人」では、甘粕景継という実在した家臣の役柄を熱演中。私生活ではお二人のお子さんを育てるお父さん。子どもたちに求めることを熱く語っていただきました。

パパイヤ 鈴木(パパイヤ すずき)

1966年東京都東久留米市生まれ。
幼少の頃より父親のラテン音楽を聴き、越路吹雪を唄う!
山本リンダを真似れば心ここにあらず、気がつけば踊っていた!高校時代、バンドで米軍キャンプをまわる。17歳の時、ポリドールより「ダンシングゼネレーション」でレコードデビュー。16~21歳までの間、ダンサーとして活動。東京ディズニーランドを最後に振付師になる。その後バンド活動を再開し、第18回世界歌謡祭(日本武道館)日本代表として出場。'86 CBSソニー(現ソニーミュージックエンタテインメント)で振付、タップダンスの インストラクターを務める。
'98 パパイヤ鈴木とおやじダンサーズを結成、'00 初の全国ツアー「DISCO deおやじ」では1万5千人を動員、秋の学園祭ミュージシャン部門でも、最多出場となる。おやじダンサーズとしてツアー、イベント、TV出演の他、振付師・俳優・作詞/作曲、アレンジャー、マニピュレーター、プロデューサーとして幅広く活躍。
近年ではダンサーの地位向上を応援するイベント「DANCE向上委員会」の会長を務め、自身が各ジャンルのスペシャリスト6人と共演するダンス公演「SEVEN SAMURAIS」や若手ダンサーの舞台の演出も手掛けている。

 プランチャイム|パパイヤ鈴木、おやじダンサーズ、LiLiCo、電撃チョモランマ隊、KoRocKなど
www.oyj.co.jp  

ミュージシャンの父をもつ音楽好きな男子

――私はパパイヤさんと同世代で、6才まで同郷の東久留米市に住んでいました。あの頃は子どもが多くて遊びに事欠きませんでしたが、どんな幼児期をお過ごしで?

11歳頃。小学校5年生からトランペットを吹き、学校に器楽部を作り活躍した。

11歳頃。小学校5年生からトランペットを吹き、学校に器楽部を作り活躍した。

実家は下宿屋をやっていました。戸建ての家で2階に細かい部屋が4つあって。そこに大学生のお兄ちゃんが何人もいて、その人たちと遊んでいました。みんなでご飯食べて。知らないお兄ちゃんがいつもいて。あとは近所の悪ガキたちと一緒に、外で遊ぶことが多かった。野球、こま、メンコとか昔の遊びを。木登り、鬼ごっこというスタンダードな遊びをずっとしていました。そういう時代で映画「Always」の世界。旧きよき日本の子どもたちという感じです。

――パパイヤさんは何が得意なお子さんで。ご家庭ではどんなふうに過ごされていました?

親父が歌手だったので、将来は歌の仕事をしたいと思っていたみたいで、卒業文集にはそんなふうに書いてありましたね。親父はラテンミュージックの歌い手で、ラテンといっても陽気なのではなく、日本の演歌みたいにしっとりとしたものが多かったんですけど。音楽は小さな頃から身近にあって歌ったり聞いたりしていました。
お袋はすごく字のうまい人で「習字をしなさい」と。習っていたんですが、書くことがどうも好きじゃなくて。字を書くということはいまだに苦手(笑)。
姉が2歳上にいますけれど、僕は悪がきでしたよ。不良ではないけど、やんちゃ坊主。もう、このままです!学校の勉強は全部平均。音楽は多少詳しかったけれど、音楽の歴史とかクラシックとかあんまり興味なくて。算数とか理科は楽しかった。実験とか面白いじゃないですか。

――うちの息子(小6男子)はサッカーばっかりで手を焼いていますが、パパイヤさんの小6時代は?

小学5,6年生でトランペットを吹いていました。楽器をやっていたので皆と合わせるというのをやらなきゃいけない。チームワークですから合奏って。例えば、リレーとか、野球とか、バスケとか。そういう団体行動ができるようなものをやるのがいいと思う。バランスが取れる子になるので。2人以上複数でやれるスポーツでも文化系な活動でもおすすめです。人数多いとわからないけれど、10人でやることっていいなって思う。

――音楽好きでいらして、習い事というより小学校の活動として得意分野を発揮されて。

トランペット吹ける子なんて、当時はいなかった。その頃は学校にブラスバンド部がなくて、器楽部を作った。僕が5年の時はクラスに4人しかいなくて。その次の年にメンバーが増えた。先生が僕らに教え、先生一人と僕ら4人で始めて、いろんな発表会、学芸会でファンファーレを吹いたりしてね。それを通じて器楽部を宣伝していった。
トランペットはどういうもので、こういう音が鳴って、3つのバルブを駆使していろんな音を出すんだとかね。そういうことを教えあったりして。小6になってメンバーが30人くらいになった。卒業後、またさらに何十人と増えて、全国大会へ行くようになった。最初は4人だったけれど。一番良かったのは、宇宙戦艦ヤマトとかね、そういうアニメの曲とかスターウォーズとか、そういう系のものを演奏した。クラシックをあんまりやんなかった。知らない曲よりも、皆が知っている曲を選ぼうと。

子どもは自然児。のびのび育てたい

――パパイヤさんのお子さんは、お嬢さん(小2)と僕ちゃん(年中)がお二人いらっしゃいます。ご家庭ではどんな教育方針でいらっしゃいます?

娘(小2)と息子(5歳)は、躾は厳しくのびのび育てるのが信条。

娘(小2)と息子(5歳)は、躾は厳しくのびのび育てるのが信条。

子どもは皆、天才である。どんな可能性を持っているかわからない。想像力を豊かにしよう。・・・・・・これは子どもが通っている学校のコンセプトでもあります。想像力が働かない子は何ができてもダメ。これをやったら誰が嫌な思いをするだろうって考えられるのも想像力。これをやったら喜んでもらえるんじゃないかなと考えるのも想像力。こういうことって、子ども時代から考えないと大人になってからじゃ遅い。子どもの目線は、ほんとに面白いものがいっぱいあるから、それをストップさせるようなことはさせたくない。

――具体的には、どんなふうに可能性を伸ばすことができるとお考えですか。

子役として活躍していた?!というほど凛々しく賢そうな9歳頃

子役として活躍していた?!というほど凛々しく賢そうな9歳頃

「これやっちゃダメ!」と禁止することとか、絵画なら「太陽はこう描きなさい」と決めつける、そういう何の面白みも無い、枠にはめてしまうのは可能性をつぶします。「もっと違う角度から描いてみたら?」とか、逆に煽ってあげないと。壁に落書きしても、怒るのは簡単だけど、もう一回書いてみようか?とかね(笑)。どうせ壁紙張り替えるからいいや!だったら壁にたくさん絵を描かせようくらいのキモチじゃないと。例えば、冷蔵庫を開けちゃダメと言うと、「なんでダメなの?」と聞かれます。「うちのはいいけど、よそのお宅のはダメだよ。冷蔵庫ってのは、いろいろごちゃごちゃしてて嫌なんだよ。自分の筆箱のなか無断で見られるのは嫌でしょ。それと一緒なの」と教えてあげると、じゃあ筆箱見られてもいいようにきれいにしようとか。冷蔵庫ってお家で大切なものがいっぱいあるからあけないようにしようとか。そういう子どもの純粋な疑問とか、気持ちを尊重することで、親子で結構勉強になります。

――子どもにちゃんと話して理解させるのは根気も必要ですが大切なことですね。家の中で使わないように心がけている言葉とか、使うようにしている言葉はございますか?

「お前」とか「腹減った」とか、そういう言葉は使わないようにしています。僕がうっかり娘を「お前」というと、「お前じゃない、さやちゃん!」と諭されます(笑)。使っちゃいけない言葉というより、使わなきゃいけない言葉のほうが大事。「ありがとう」と「ごめんなさい」。それと、やってはいけないことがいくつかある。うちはね、押したり、物を投げたり、戸をバンッと閉めたりするのは禁止。危ないじゃないですか、ドアに指挟んじゃったり。知り合いで指とれちゃった子がいて、運よく手術でくっついたんですが。この話をすると本当にやめる。「取れちゃうんだよ指!」といって。

――危ない時は本気で真剣に伝えないと、伝わりませんよね。

子ども達が通っている学校は、のこぎりやかなづちで指を打って泣いてしまう子がいっぱいいる。怪我をさせなきゃわからない。しなければいいんですけど、痛くないとわかんないから。この前もホッチキスを指に刺して、イタイイタイって血が出て。僕がホチキスをいじっているのも見ていられない。もう二度とホッチキスは、いじらない!と言って。絶対にダメだっていうことは痛みで覚える。うちはすごく厳しいですよ。絶対ダメってことはダメなんです。ものを粗末にしたり、ご飯を食べている時に遊んじゃったり。そういうのは僕、メッチャメチャ怒る。子どものお尻は叩くんでなく、つねる。叩くのって難しい。叩きすぎてもきかないし、足りないと効かない。遊んでいるだけになっちゃう。つねるほうがレベルが調整できる。真剣になったらやめればいい。それ以上やると泣いちゃうので。

加圧トレーニングで約30キロ減量成功!

――パパイヤさんはダンサーであり、振付師でもあり、現在はNHK大河ドラマ「天地人」も出演されて、俳優さんとしても存在感があります。一時期のパパイヤさんよりずいぶんシェイプされたような。役作りでしょうか?

スリムでアイドルのような容姿の18歳頃。TDLのステージで活躍

スリムでアイドルのような容姿の18歳頃。TDLのステージで活躍

僕の仕事は、ダンサーから出発しました。10代はTDLで踊ったりしたこともありました。30歳過ぎてからは振付師としてミュージシャンの振り付け指導をしていました。
体重は今82キロで、一時は110キロくらいあった(笑)。ドラマが始まって8キロ落ちました。僕が演じているのは甘粕景継という実在した人物。この方は本当に男の中の男、頑固で男臭い星一徹みたいなタイプ。当時の人たちは皆そうだったと思いますが、殿のいうことは絶対。「天地人」自体が義をテーマにしていますが、義に厚い人だったようです。僕はもうひとつ、役作りとしては「感情がすぐ表に出る。単純なヤツですぐ怒るし泣くし喜ぶし、喜怒哀楽が激しく1分間で全部でちゃう」という人に設定しています。台本に書いていない部分を細かく考えると面白い。衣装さんと、どういう服にしましょうかと相談して、熱しやすくさめやすい、感情が激しい人物だから、赤と黒にします?とかね。そんなふうに衣装決めたりとかする。人物像の裏ストーリーをつくるんです、いつも。

――物語の裏話もあっておもしろいです。今年いっぱいドラマは続きますよね?健康管理も大変ですね。

ダンスを始めた15歳頃にスタジオで。目もとに面影が?!

ダンスを始めた15歳頃にスタジオで。目もとに面影が?!

撮影自体は10月には終了します。僕が最終回まで出るかわかりませんが、登場人物がそろそろ少なくなってくるんじゃないかな、全47話で完結ですから。
健康管理でいうと、僕は加圧トレーニングをやっています。あとは普段の生活管理を。普段から健康的に過ごします。お酒をすごく飲むので、健康とは言い切れませんが、タバコは吸わないですし、食べ物とか私生活での運動、なるべく階段の上り下りをしようと。それだけでずいぶん違う。

――加圧トレーニングで体がどんなふうになるんでしょう?

女の人は筋肉がついちゃうと抵抗あるかもしれませんが、筋肉よりも血管。血管が強くなるのはものすごくいいこと。毛細血管が増えるのは、これまでいかされなかった毛細血管があって、それが強くなって網目のように広がってくる。毛細血管はすごく大事。冷え性にもならない。でもやっぱり体形が太くなるのにコンプレックスがある。腕や足が太くなったりするのが女性は嫌みたい。中身を鍛えるならピラティスとかリンパヨガとかいいのかもしれませんね。僕は加圧トレーニングのおかげで、元気がみなぎっていますよ!全然疲れない、何をやっても。無意味に永田町の階段も一段抜かし(笑)。106段。エスカレーターとかぜったい乗らないですもの。登ると疲れるけど30秒くらいすると、もう一回いく?って。神社も全部一段抜かし!大江戸線の階段なんて、もう大好物。

――画面でパパイヤさんを拝見すると、そのエネルギーを感じますもん。俳優さんは演じるまでの見えない部分で苦労がありますね。最後に子供の習い事に迷う読者の方へメッセージをお願い致します。

先生に気をつけなきゃいけない。習い事を通じて、自分の可能性をどんどん出せるような教え方をする先生に巡り合えるかどうか。絵を教えるときに、うまい絵を教える必要なんかまったくない。イイ絵を描ける子になってほしいし、イイ歌が歌える子になってほしいし、イイ男の子、イイ女の子、イイ子供になってほしい。「良い子」ではなく「イイ」子。ダンスでもそうですが、上手なダンスには全く興味なくて、イイダンスに興味がある。ある時、うちの下の子が変な絵を描いてきた。緑のがばーっとあって、下に白いのがチョンと草むらみたいな。大根だというんです。上から見たらしくて。上からみると葉っぱがいっぱいあって、チョロンと下に白い物体。そういえば大根ってそうだね。みんな大根っていえば、横に白いのがあって……で、うちの子だけ上から見てた。その絵に僕と嫁さんで大喜びして「やった!でたよ、天才かもしれないよー」って(笑)。
その絵に託されたものを、親がちゃんとわかるかどうか。わからせる絵を描かせてあげられるかどうかは、指導者の責任。ダンスもそう。ダンスもこうやってやりなさいって教えた段階に、それ以上できなくなっちゃうものだから。

――ご自身のお子さんに対する思いとも通じますが、子どもが自分なりに考えて生み出せる視点とか、社会に出た時に負けない競争力をもつのが必要だと?

大事なのは大人が習い事を通じて子どもと話をする、この子をこういうふうに導いていこうとすること。子どもは皆天才、いろんな可能性を持っている。だからこそ優劣をつけなきゃいけない。小さい頃から挫折感をあじあわせなきゃ。大人になって挫折感あじわうから立ち直れなくなっちゃう。ゆとり教育なんてとんでもない話。子どもの時から一番、二番、三番ってつけてあげないと頑張れない。そういう考え方を僕は支持します。皆平均的になんて冗談じゃない。自分の子が劣等感を感じたとすると、それを乗り越える瞬間が大人になる瞬間。それを乗り越えさせないで、いいよ、だいじょうぶ、今そんな必要ないっていうのが一番よくない。うちの子を自然児にしたいっていうのは、つまりそういうことなんです。

編集後記

――ありがとうございました!パパイヤ鈴木さんは同世代。私も6歳まで東久留米市で幼児期を過ごしていたので、子ども時代のお話しを伺ううちにあの頃の風景を思い出しました。子どもをのびのび育てたい、と語るパパイヤさん。野放しにするわけでなく躾をきちんとされ、ぶれない方針をお持ちなのは素晴らしい。何よりも30キロ近くウエイトダウンされ、俳優としてもいい味をだされている今。ご自身の健康管理をしっかりできることも、家族をまとめて率いる力につながっているのかもしれません。これからも振付師をはじめ俳優として、ダンサーとしてさらにいい味をだして活躍されることをお祈りしております!※拙著「赤ちゃん絵本ノート」でも、パパイヤ鈴木さんのユニークな子育てについて掲載されています。

取材・文/マザール あべみちこ

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