【シリーズ・この人に聞く!第3回】落語家 林家きくおさんが語る「人をつくる家庭と家族の大切さ」

kodonara

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今年2月にご結婚された、新婚ホヤホヤの林家きくおさん。お父上は人気番組「笑点」で毎回笑いを取る黄色い着物の師匠・林家木久蔵という、落語界きってのサラブレッド?!高校2年生までプロ野球選手になるつもりでいた彼がなぜ落語家になる決意をしたのでしょう。また、どんな幼少期を過ごしてきたことが、今の原動力となっているのでしょう。落語家は、口先商売などという人はとんだ誤解で、相当な勉強と努力があって受け継ぐことができる伝統芸。二世落語家だからこそ期待され、人一倍努力家なきくおさん。落語家になるまでの選択と変遷について語っていただきました。

林家 きくお(はやしや きくお)

昭和50年9月29日生まれ。本名:豊田宏寿 東京出身。
玉川大学文学部芸術学科演劇専攻卒業。
1995年10月 林家木久蔵門下入門
1996年2月 前座入り 芸名 林家きくお となる
1999年9月 二ツ目昇進
2000年 日本テレビ「笑点」若手大喜利に出演、MVP獲得
2003年1月 日本テレビ「鶴瓶・南原・天野vs内村軍団vs関根軍団vs小朝軍団…続々結集90分無礼講初笑い(秘)ダメ出し」
2004年3月 ナショナル ラジオCMナレーション
2004年3月 NHK BS2「週刊ブックレビュー」出演
2004年9月 TBS「はなまるマーケット」木久蔵と親子出演
2004年12月31日 NHKラジオ レポーター
2005年1月 日本テレビ「笑点」正月特番 コント出演
2005年3月 TBS「ジャスト」木久蔵と親子出演
2005年5月30日 日本テレビ「情報ツウ」木久蔵と親子出演

落語家の父をもちながら、僕は高校2年生までプロ野球選手になるつもりでいました。

――ご結婚おめでとうございます。心境の変化はございますか?きれいな奥様ですよね。有名ブランド店でお仕事をされていたとかで。

心境は基本的には変わりません。僕の一方的な一目ぼれ。ジュエリー担当の女性でしたので、買ったり修理に出したりでキッカケを掴むために通い詰めました。出会って3ヶ月目でようやく食事に誘うことができました。本当にこのために「話術」を身に着けたんじゃないかと思うほどでしたよ(笑)。

――見事ハートを射止めたというのは素晴らしい。ところで木久蔵師匠が落語家であることを小さな頃はどのように感じていましたか。

家に居ませんでしたね。今と比べて交通の便もよくありませんから、地方へ行くとまとめて仕事をしてきたりでして。子どもの生活サイクルと芸人のそれとはまったく逆なのでめったに同じ時間に起きていることはない。僕が大学を卒業するまでそんな感じでした。緊張していたので、なかなか近づかなかったようです。幼稚園くらいの頃は無邪気に、お弟子さんの真似をして覚えたフレーズを言って師匠を喜ばせていたみたいですよ。でも、当時は本当に忙しかったらしくて、たまの長い休み(夏・春・冬)は家族で旅行に行ったり、夜ご飯を外食したりくらいでしたね。

――当時はサラリーマンでも父親が家庭不在の時代でしたものね。では、きくおさんが本格的に落語を始めたキッカケは?

何の根拠もなくプロ野球選手になるつもりでした。子どもってある時期まで「自分は特別なんだ」と思っているようなところがありません?僕はそれが高校2年生くらいまで続いた。野球に必要なのは基礎トレーニングだ、と思ってずっと陸上で長距離(マラソン)をやっていました。で、編入で高2から野球部に入った。しかし、すぐに挫折しました。まずボールがあんなに痛いものと思っていなかったんですよ。キャッチボールちょっとするだけでつき指したりね(笑)。現実を知った僕は、「落語家の親父をもっているのに、スポーツ万能であるわけない」と気づいたんです。

――カエルの子はカエルなんじゃないかと。その後、落語を選ぶことになったのはどうして?

師匠は僕がプロ野球選手になるんだ、というと「すごいねぇ」と、むしろ盛り上げてくれていました。そんな僕も大学進学にあたって岐路に立った。「先生になる」という道もあったわけですが、少子化ですぐに採用はされないだろうと。その他は「木久蔵ラーメンを海外展開するために国際経営を学ぶ」「新しいパフォーマンスを学ぶために演劇を専攻する」の選択肢があったんです。大学は国際経営も演劇も合格しましたが、結局「演劇」を選んだ。机の勉強よりも、パフォーマンスを学ぶこっちのほうが楽しいかなと。有名人の二世とかもたくさんいました。でも、芸能界って親の七光りなんかだけじゃ生きてゆけない厳しいものです。自分が他の人とどう違うかアピールするには「落語家」という肩書きだったんですね。父のように、落語をやっていてもラーメン屋をやったり、絵を描いたりできる。笑点なんか見ていると、くだらない駄洒落で皆を笑わせることもできる。落語家って色々できて楽しいかもなぁ、と。

肘をついているのが、やんちゃな小学1~2年の頃のきくおさん。
肘をついているのが、やんちゃな小学1~2年の頃のきくおさん。

机の上の勉強より、人間形成が大切。落語もスポーツも全部人としての内面が出るもの。

――なりゆきは軽い感じですが、やはり下積みも大変ですよね?落語を途中でやめたくなったことはありませんでしたか?

僕は大学3年の20歳の時に弟子入りし、24歳まで修業でした。大学も行って、落語もあって、という二足の草鞋だったから逆によかったと思うんですね。落語は4年間修業で、そこで礼儀作法とか気遣いを仕込まれます。覚えることだらけですし、つまらないわけです。でも、僕にとって落語家になることは、メリットはあってもデメリットはなかった。例えば、大学時代に演劇をやって人間関係で色々あるわけです。素人でこんなことがあるわけですからプロになったらもっと熾烈なんだろうなぁ、と。でも落語は舞台に上がればいつでも主役は自分ですからね。売れても売れなくても100%自分のせい。他人のせいにしなくていい仕事って潔いじゃないですか。演劇は舞台が終わればその役も捨てることになりますが、落語は一度噺を覚えればどんどん蓄えることができて、芸が増えてゆく。まぁ、こんなに大変とは思わなかったですよ。

――いつも決断は速そうですが、その後の展開がおもしろいですね。小さい頃はどんなお子さんでしたか?

体が動いて仕方なかったですね。虫や動物が大好きで。話をすることが好きだったかというと、うん、そうだったかな。でも人前で何かをするよりも、スポーツをしているほうが好きだったかな。

――毎日どのような落語の勉強をされているのですか?

基本をしっかりやっています。新作をやっておもしろい人は古典もおもしろい。古典落語のルールが身についているんですね。僕らの世代だとビデオやテープから学ぶこともできるのですが、僕は何しろ死んだ人の声で教えてもらうのが怖くて(笑)。言葉だけでなく仕草も身につけないと。落語は奥が深いんですよ。今までこんなに頭を使ったことがないので、本当に頭が痛いです(笑)。

――以前、師匠を高座で拝見した時は笑点の時とはまた違っておもしろかった。やはり「木久蔵」は演じていらっしゃるのでしょうか。

高座がおもしろいのは落語家として名誉なことです。師匠はあまり変わらないし、何事も無理しない。理論はないんです。こういうものだというタイプなんです。独特でしょう?でも本能でわかる。言っていることは間違っていないし、信用できます。

――いまどきの子どもたち(主に小学生)をどのようにお感じですか。

給食、運動会、テスト…。どれをとっても僕らの子ども時代は、悔しい思いをするから頑張れたし、感情を揺さぶる要素がいっぱいあったと思うんです。人間なんて紐解けば平等なんかあり得ないですし、そういうことを知っておくのは大切なんじゃないかと。今は歯を食いしばって上を目指すんじゃなくて、下に合わせて皆を落とすように頑張っているような気がするんです。今、落語界も大学卒業してから入門する人がいますけれど、勉強ができても、コミュニケーションできない人だっている。人を思いやる気持ちをもてないんですね。嫌だと思う世界に近づかないで、自分の世界だけで生きていけてしまう。僕は、勉強より、人間形成を重んじたほうがいいんじゃないかと考えています。もちろん、これから自分の子ができたら違う見方があるかもしれませんが。

好きなこと、没頭できることを見つけて、楽しい!!と思えることを増やしてほしい。

――きくおさんが落語家として目指すものは?

根拠はないけれど、「あの人はおもしろい」と言ってもらえることでしょうか。「落語界の氷川きよし」みたいになりたいですね。たくさんの人を喜ばせてあげられるのは素敵なことですよ。

――寄席でのお客様の反応で一番うれしいことは?またはガッカリすることとは?

初めて落語を聞きにきてくれた人が「おもしろかった」と言ってくれる人や、だんだん好きになってくれる人が居るのも、付き合いで来るのではなく落語を聞きたいから来てくださるお客様がいることはやはりうれしいですね。逆に、お客さんが少ないのはガッカリしますね。それと、自分がある程度やったのに結果が報われなかった時ですね。

――毎月原宿で寄席をされていらっしゃいますね。小学生でも観覧できますか?

もちろんです。1,000円とリーズナブルですので。僕のコンセプトは「初めて落語を聞く人も笑える」ということですので。ネタによって色々楽しんでいただけると思います。

――落語家に憧れる子どもの親に対する要望は?

落語はその人の生き様。個性は日常の延長なんです。その時その時で楽しませてやることが大切なんじゃないかなと。好きなこと、没頭できることを増やすというか。僕は、好きな部活をやってこられてよかったですし、大学をちゃんと卒業できたのもありがたかった。自分の意思で何かを決めることは大事な経験です。家にジッとしているのが一番よくないし、外に行けば何か発見があるはず。それと、僕は家族が好きだった。家庭がしっかりしていたから楽しむことができたんです。

――これから誕生するお子さんにも落語家になってほしいですか?

そうですね、望めることでしたら。もし、本当にそうなったらうれしいんでしょうねえ。二世落語家は意外と多いんですよ。東西で15人位いるかな。今、二世が集まって「ぼっちゃん5」というユニットを組んでます。皆、パソコンしないとか、ピンクを粋に着こなしたいとか、共通項がある。これから落語をもっとおもしろくしようと色々企んでしいますのでお楽しみに!

取材・文/マザール あべみちこ

活動インフォメーション

<寄席スケジュール>

4月10日(月)
「林家きくお独演会 vol.6」
・時間 開場 18:00~
・開演 18:30~
・会場 原宿アコスタディオ 03-3408-4541
・料金 1000円
・お問い合わせ トヨタアート 03-3419-0821
・出演 林家きくお ほか

4月11日(火)~4月20日(木)
「桂三枝 初お目見え特別興行」
・時間 17:30~
・会場 鈴本演芸場
・料金 前売り 3500円(全席指定)
*完売 ・当日券30席のみ17時より発売
・お問い合わせ 鈴本演芸場 03-3834-5906
・出演 桂三枝・林家木久蔵(14・15日休演)
春風亭小朝・林家正蔵(14・16・17日休演)
林家たい平(14日休演)・林家きくお(18日休演) ほか

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