甘利明経済財政担当大臣の金銭授受疑惑についてネットでの議論が白熱している。「まるでおとり捜査だ」とか、「用意周到すぎて怪しい」、「マネートラップに相違ない」などなど。なるほど確かに、隠し録音くらいはまだしも、お札の通し番号を記録するといったストーリーは常軌を逸しているように思えなくもない。
しかしそんな枝葉の「?」を差し引いても、甘利大臣の対応には基本的なところで疑問を感じる。甘利大臣は1月21日、参議院の決算委員会で問題の建設業者に大臣室で会ったことは認めたにも関わらず、金銭の授受があったかなかったかについては言及しなかった。続いて25日の記者会見では次のように述べたと伝えられる。
この記事での甘利大臣の発言に思うこと、それは「トラップに引っ掛かってのオフサイドならオフサイドにならないのか?」ということに尽きる。
甘利明経済再生担当相は25日の記者会見で、週刊文春が報じた金銭授受疑惑をめぐり甘利氏側に現金を渡した千葉県の建設業者について「先方は最初から隠し録音をしたり、写真を撮ることを目的とした人たちだ。こちらは慎重になっている」と述べた。さらに「こちらにアプローチ(接触)する最初から、いろいろな仕掛けを行っているのか」とも語り、業者の姿勢に疑問も呈した。
「先方は最初から隠し撮り目的」 金銭授受疑惑で甘利氏会見 (産経新聞 1月25日(月)20時12分配信 ) - Yahoo!ニュース
言うまでもなく、オフサイドトラップはサッカーの試合で日常的に採られる作戦だ。相手を引っ掛けるというやり方には、だまし討ちのような印象もあるものの、試合でオフサイドを取られたチームが、「だって今のはトラップじゃん」なんて言い訳するのを見たことはないし、そんな理由で判定が覆ることもまずないだろう。
ところが甘利明大臣の会見での言葉は、まさに「だって今のはトラップじゃん」に終始しているようにしか受け取れないのだ。金銭の授受がなかったのなら「ない」の一言で足りるだろう。それを「(相手が)いろいろな仕掛けを行っている」かもしれないからという理由で明らかにしないというのはどうにも解せない。
しかし困ったことがある。
オフサイドの判定であれば、ビデオで確認することができる。しかし、虚偽記載にとどまらず斡旋収賄罪や斡旋利得罪まで疑われる現在の状況では、甘利大臣が誠実に説明責任を果たさない限り、罪の有無を判断することすら難しいのだ。甘利大臣側からの説明がなければ事は動かない。それがオフサイド判定と大きく違う点なわけだ。
状況説明について先延ばしすると言い続ける甘利大臣は、いったい何のために時間が必要なのだろう。自身の説明は今週中に、秘書も含めた事務所の対応についての説明はさらに先延ばしとするが、その意図するところは何なのだろうか。こんな意味不明な対応を見せられてしまったら、「何かあるのか」と勘ぐりたくもなってしまう。たとえ責任ある立場の人物でも、説明をのらりくらり先延ばしるものだ、などという良からぬ印象を青少年たちに与えるようなことがあれば、日本の将来に関わる大問題だ。
「ない」と一言で片付けることなく、闇雲に時間をかける甘利大臣のその姿勢が、日本の政治風土の劣化をもたらさないことを祈りたい。
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