免震どころか激震 東洋ゴム工業株式会社(2)

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23年間連続の不正商売

今回の免震ゴムのデータ改ざんによる不正は、明らかに建築基準法違反です。そして、2007年に同社が製造・販売した『硬質ウレタン製断熱パネル』で、防火認定(準不燃材料・不燃材料・準耐火構造・防火構造)の国土交通大臣認定を不正取得したことが判明し、基準よりも3倍燃えやすいパネルは学校などでも使われていて、当時の社長が引責辞任をした事件に続いて2度目の建築基準法違反です。

この会社がやったことを一言でいうと、
『自社の利益のために、人命を守るための製品が性能を満たしてないことを隠して「安全」を装い、2回も不正による国交大臣認定を取得して、23年間に渡る長い期間、まがい物(不良品)を販売し続けた。』
ということです。

数式で表すと、『他人の命<自社の利益』となります。
置き換えると、『他人の命<役員報酬』とも言えます。

不正商売を23年間続けたというのは、次の計算です。

不正認定の防火断熱パネルを1992年から2007年まで販売し、不正認定の免震ゴムを2006年から2015年までの販売していたため、1992年から2015年までの23年間ということです。

お気づきでしょうか。防火断熱パネルの不正が発覚して謝罪記者会見を行った1年前から、今回の不正は始まっていたのです。

しかも防火断熱パネルの不正については、15年間もの間、担当者は不正の事実を知っており、脈々と歴代の担当者に不正の事実の引き継ぎを行っていた。しかも公表に至った理由は、先に同事業大手の「ニチアス」に同様製品の偽装が発覚したためで、決して自発的な行動ではないと思われます。

おそらく、対岸の火事の飛び火を恐れての謝罪会見です。インチキ防火パネルを販売していたわけですから、さすがに飛び火には弱いと自覚していたのでしょう。

 【ぽたるページ】免震 東洋ゴム工業株式会社
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同社内で不正が発覚したのが2014年2月。それから発表するまでの1年余の期間、不正と知りつつ販売を続けています。会社側の弁明を要約すれば、「怪しいと思いながらも不適合であることの追跡調査に時間がかかった」ということになります。

本来は、安全性が確認されるまで、不適合ではないことが確認されるまで、出荷を止めるのがメーカーとしての正しい姿勢です。

リスクマネジメントが出来てません。コーポレート・ガバナンスが効いてません。
2007年の謝罪以降、強化してきたと言っているのですが、残念なことです。企業のトップの強い信念のもとでないとなかなか浸透しないものです。

同社の主力事業は、タイヤ事業です。不祥事は、2回ともダイバーテック事業です。売上の約8割がタイヤ事業で、ダイバーテック事業は約2割。しかもその中で、建築資材事業はというともっと比率が低いわけです。

本流と傍流でいえば、ダイバーテック事業部は傍流です。同じダイバーテック事業部の中でも、建築資材関連は、取扱う製品が会社全体のマーケットとは違っています。こうした焦りが建築資材の担当部署の中にあり、会社全体で2度と不正を起こさないという意思に反して、不正をしてでも売上を上げて日の目を見るという「温床」がそこにあるような気もします。

本当にたった一人の犯罪といえるのでしょうか?

昨日も書いたことですが、どう考えても担当者一人が行った改ざんには思いにくいのです。会社側の発表では、子会社で10年間以上一人で当該業務を担っていた製品開発部課長が行ったとしています。

ただこの課長が移動し、業務を引き継いだ後任が2012年2月に報告をあげています。その後も製品を販売していたわけですから、この報告を受けた者、或いは報告の内容を共有する者は、不正に加担しています。いくら一人の担当者のせいにしようとも、組織犯罪に発展しているわけです。

山本社長は「推定だが、担当者は、予定通り出荷することを優先させたのではないか」と発言しています。まさしく商売優先というわけです。
前述した『他人の命<自社の利益』とはこのことです。

前回の防火断熱パネルの不正の調査結果に「製品開発の遅れが市場参入への障壁となるとの判断が、不正をしてでも事業を継続しようとする動機となった。」とあります。その反省が全く活かされていないどころか、同じ論理でまた不正を行っています。そりゃそうでしょう、前回の謝罪会見の時には、今回の不正が始まっていたのですから。

どのような言い逃れをするのかが見ものです。

建築基準法違反どころではない

近年、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)ということが、非常に重要視されてきています。後継者問題も一つですが、災害時の備えも重要な一つです。ですから、建物に高価な免震機能を備え付けるのです。

消防本部、警察、官公庁、病院では、災害時に業務が継続できるように備えるために、新しい建物に免震機能を付加しているわけです。

こうした建物が期待通りの免震機能が発揮されず倒壊した時に、被害は建物の損壊だけではなく、業務上の機能が失われることです。災害時にこうした機能が失われたらと想像してください。まさしく国益を損なうのです。そしてわが国の「安全」に対する信頼も損ないました。

単なる建築基準法違反といったレベルではない不祥事です。

 【ぽたるページ】4年前の検証「チェーンメール」に隠された真・謎・怒り
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こちらのリンクもお読みください。東日本大震災の日、東京湾でコスモ石油の千葉製油所が爆発し、10日間炎上し続けました。隣接するチッソ石油化学(現社名はJNC石油化学)の五井製造所の倉庫には、劣化ウラン765㎏が保管されていました。チッソ石油化学からは、劣化ウランの保管施設に延焼する恐れがあると国に報告されました(国は公表せず)。

心配通り、劣化ウランの保管倉庫も延焼しました。この保管倉庫は、不燃性の壁で覆われていました。防火対策のおかげで、東京湾での大惨事(劣化ウラン燃焼による放射能汚染)は、ギリギリのところで防がれたのです。

もしこの不燃性の防火壁の材料が、不正で認定を取得し、基準より3倍も燃えやすい材料であったなら、福島の原発同様、千葉、東京、神奈川は緊急避難の対象範囲になっていて、東北地方の災害救援の拠点どころの騒ぎではなかったと思います。

小説のような話だと思いますか?現実に起こりうる話です。

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