社外調査チームの中間報告書で明るみになってきた疑惑の内容とは
東洋ゴムが繰り返してきた『嘘の会見内容』が明るみになってきました。
4月24日、社外調査チームが行っていた調査の中間報告の内容が公表され、この報告書を読むと、やはり今までの記者会見の内容が事実とはかけ離れていること判明しました。
しかも事件は途中から経営幹部がかなり関わっていたのに、担当者のみになすりつけてきた卑怯な実態も明るみになってきました。
確かにデータの改ざん、偽装は最初は子会社の東洋ゴム加工品株式会社の一人の担当者が行ったものでしたが、発表していた時期よりも早くから、子会社内のみならず、親会社の東洋ゴム工業株式会社まで不正の情報は共有されており、しかも経営トップをはじめとするほとんどの役員がその実態を知りながら、出荷を続けていたようです。
途中から完全に組織ぐるみになっていました。
この事件の前提としてハッキリさせておきたいことがあります。
子会社の不正が親会社に飛び火したわけではありません。免震ゴムのデータ改ざんや大臣認定の不正取得は2004年から行われていました。
東洋ゴム加工品株式会社が設立・発足したのは、2013年1月1日です。東洋ゴム工業株式会社のダイバーテック事業部の開発・製造部門を切り出して新会社の事業としたわけです。
ですから、不正の始まりは東洋ゴムの事業部としての時代からです。
そして、新会社として事業を引き継いで間もなく、不正の疑いに気づいています。
今回出された中間報告書と今まで東洋ゴムが発表してきた内容、そして報告書では匿名となっている(ただし役職は明記)関わった重要人物の実名、関係者の人事異動履歴を時系列で図解により整理しました。
まず、報告書ではアルファベット表記となっている関係者は次の通りです。
【ゴ】は東洋ゴム、【化】は東洋ゴム化工品です。
A氏:【化】担当者(2004年から2012年まで、一人で担当してデータ改ざんを行っ ていた課長代理)
B氏:【化】A氏の後任。
C氏:【化】同じくA氏の後任で、データ改ざんに気づいた人物。
D氏:【化】藤巻代表取締役社長(現【化】取締役)
E氏:【化】開発技術部長
F氏:【化】取締役技術生産本部長
G氏:【ゴ】新庄取締役ダイバーテック事業本部長
H氏:【ゴ】岡崎執行役員ダイバーテック事業本部新規事業担当(現【化】代表取締 役社長兼【ゴ】執行役員ダイバーテック事業本部長付新規事業担当)
I氏:【ゴ】信木代表取締役社長(現【ゴ】代表取締役会長)
J氏:【ゴ】伊藤常務取締役技術統括センター長
K氏:【ゴ】青木執行役員CSR統括センター長
L氏:【ゴ】山本常務取締役(【ゴ】代表取締役専務→現【ゴ】代表取締役社長)
M氏:【ゴ】久世常務取締役(現【ゴ】代表取締役専務)
以上の13人が中間報告書に登場しています。
Aは、2004 年 7 月から 2012 年 11 月までの間の合計 32 件に免震材料として出荷された G0.39 の性能検査時の水平等価剛性、等価粘性減衰定数及び鉛直等価剛性の算定に際し、技術的根拠のない恣意的な数値を乗じることにより、大臣認定の性能評価基準に適合しているかのように社内の生産管理部、品質保証部等の担当者に対し電子メール等で報告し、出荷に至らせていた。
また、Aの後任の B及び Cについても、認識の程度に差異はあったものの、2010(2012の間違い?)年 12 月から 2015 年 2 月までの間に出荷した G0.39 の性能検査に関し、A 氏からの引継ぎに従い A 氏が実施していたのと同様に、技術的根拠のない恣意的な数値を実測値に乗じる方法を踏襲し、結果的に大臣認定の性能評価基準に適合しているかのように社内の生産管理部、品質保証部等の担当者に対し電子メール等で報告し、出荷に至らせていた。
2013年夏、Cは上司のEに G0.39 の実測値と性能検査の結果データの不整合を報告する。 データ偽装の疑惑発生の瞬間です。
2014年2月26日、Cらが、東洋ゴム化工品の藤巻代表取締役社長に、技術的根拠が不明な補正が行われている旨及び大臣認定の基準を充足していない免震積層ゴムが製造・販売されている可能性がある旨の報告をする。
同社F取締役技術生産本部長が、Eらから、技術的根拠のないデータ処理の疑いについて引継ぎを受ける。
社長に報告されてから、現場のトップの取締役に引き継がれるまで、実に1ヵ月以上を要しています。データ偽装の疑惑発生から7~8ヶ月は経過しています。
東洋ゴムの新庄取締役ダイバーテック事業本部長、岡崎執行役員ダイバーテック事業本部新規事業担当、D及び Fが、Cから、性能検査において恣意的に大臣認定の基準に適合させていたようである旨の説明を受ける。
やっと本社サイドに偽装疑惑が報告されますが、詳細レベルではありません。2月には東洋ゴム化工品の藤巻社長は報告を受けており、4月にF取締役技術生産本部長に引継ぎを行いながら、GWをまたいで、子会社の担当Cから親会社の担当幹部へ偽装疑惑の説明を行っています。
Cは既に上司どころか社長にまで報告をあげているにも関わらす、上司が中心となって動いていない(積極的に取り上げていない)ように感じます。
典型的な上席者の逃げ腰の姿勢がここにうかがえます。
後任担当者のCは、前任者のAが行っていたデータ偽装による大臣認定の不正取得と不正出荷の疑いを2013年夏に上司へ進言していたにも関わらず、2014年5月のGW明けに至っても、何の判断も、何の指示ももらえず、同じ後任担当者のBとともに、Aが行っていたデータ改ざんの手法を引き継ぎながら、不適合品の出荷が続けられてしまうのです。
「おかしい!」と訴えているのに、社長や上司が全く聞き入れていないような状態の中で(組織の体質で)、Cは不正を引き継ぐしかなかったように思えます。
東洋ゴムの山本代表取締役社長が行った2015年3月13日の謝罪記者会見で「10年間たった一人で担当していた担当者の異動で、後任担当者がデータ改ざんの疑いに気づいたのが2014年2月」「担当者(A)が、一人でやったこと」と『嘘』の説明をしました。
データ改ざんのスタートは、確かに担当者Aが一人で始めたことかもしれません。しかし、2013年夏以降は、データ改ざんに気づいた後任担当CやBまで、同じ手口を継続せざるを得なくなっていて、会社はそれを黙認(暗黙の強要)しています。
その後も記者会見で『嘘』が繰り返されます。
中間報告で名前が挙がった関係者13人のうち、8人が本稿で登場しました。
あと5人、この後さらに東洋ゴムの重要人物(大物幹部)が登場します。そして幹部の不可思議な人事異動も加えて解説する予定です。
続編をお楽しみにしてください。 続く・・・
※以下はこれまでの東洋ゴム関連の記事です
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