「夏到来!キャンプ~」の楽しみ《その2》♪

Kazannonekko452

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「夏到来!キャンプのススメ♪ ~前編~」を書いた「sKenji」さんが後編を書いて下さったので、こちらも続けて《その2》です。

sKenjiさんの「夏到来!キャンプのススメ♪ ~後編~」、とても実用的で勉強になりますね。とくに後半の「キャンプに必要な道具一覧」は必見です。プリントアウトしてキャンプに出掛ける時の持ち物リストにしてもいいかも。と思いながら、蘇ってきた記憶がありました。それは、キャンプに持っていくグッズって、「最初はどんどん増えていって、そのうち逆に減っていく」ということ。

身近な山好き自然好きな人に聞いても、同じようなことを言う人が多いので、まあひとつの傾向としてそういうことがあるのかなと、そんなあたりを思い出しながら書いていこうと思います。でも、前回の最後に「次は無理矢理登山道でビバークした話」と宣言してしまっていたので、そのエピソードからつなげていくようにしてみます。さてさてしかし、もう睡魔がドアをノックしはじめているから、どこまでたどり着けるやら。

と、その前に、sKenjiさんの「夏到来!キャンプのススメ♪ ~後編~」、こちらをぜひご覧下さいね。

 【ぽたるページ】夏到来!キャンプのススメ♪ ~後編~
potaru.com

ついでによろしければこちらもどうぞ。

 【前回】「夏到来!キャンプ~」の楽しみ《その1》♪
potaru.com

よい子、立派な大人は絶対にまねしないで下さい

自分で振っておいて…ですが、「無理矢理登山道でビバーク」って話はやばいです。

ビバークというのは、天候の急変とか体調が急に悪化してしまったなど、生命に危険が及ぶ可能性がある場合に、急遽野営する「フォースト・ビバーク」を指すことが多いみたいで、つまりキャンプ指定地じゃない場所で勝手に野営するってこと。緊急避難的意味合いが強いフォースト・ビバークという言葉があるくらいなので、それに対して、事前に予期して行なうビバーク、「フォーキャスト・ビバーク」って言葉もあります。詳しい説明はいつかどこかの機会に譲りますが、まあ、ビバークとは、どこぞで勝手に寝ちゃうこと、なんて考え自体が間違いではありますが、人間も生き物である以上、そういう状況に追い込まれることもあるわけで。

その日は、翌朝の日の出を山の稜線で迎えたいと金曜日だったか、仕事を終えた後早めに登山口へと向かったのですが、事故渋滞にはまってしまって到着が夜中になってしまったのです。とはいえ、登山口で仮眠して、未明のうちから登り始めたとしても日の出に間に合うかどうか分からない。じゃあ、少しでも高度を上げておこう。山頂までの半分くらいのところにあるテント場まで行っておこうと夜道をヘッドランプで登り始めたものの、どうにも眠くて仕方ない。夜中だから当然登山道も真っ暗で何が起きるか分からない。

で、「これはフォースト・ビバークなんだ」と自分たちに言い聞かせて、登山道がカーブになってて、ぎりぎりテントを張れるくらいの場所(道幅1.5mくらい)でテント張って仮眠したのであります。よい子、理性のある大人の方は絶対にまねしないで下さいね。なにしろ、国立公園内は指定場所以外の場所でテン泊(テント張って宿泊)するのは違法行為なんですからね。くれぐれも、くれぐれも……

そしてその晩、私は恐怖のどん底というほかない経験をすることになったのです。

季節は11月の末。目指すその山では、頂上から稜線辺りにはおそらく雪が軽く積もっているようなそんな季節でした。しかし、ビバーク的にテン泊した登山道には雪などありませんし、霜すら下りてない。まあコンディション的にはまずまずかなと思っておったのでありますが、テントを張ったのは土むき出しの場所だったのです。

いつものようにテント張って、テントマット敷いて、寝袋に入って、念のためにダウンジャケットを肩口に掛けて寝始めたのですが眠れない。どうしても眠れない。なんで眠れないかというと、寒いのです。寒いといってもテントの中がではありません。体の下で、テントマットとテントのシートに隔てられているはずの背中の辺りが氷よりもさらに冷たく感じられるのです。

11月です。厳冬期なんて時期じゃありません。寒いのは気のせいだと思おうとしていました。でもどうにもできないくらいに寒い。お腹の側、テントの空間に面している方はそんなでもないんですよ。でも、地面側に接している方、といっても、繰り返しますけどテントマットをしっかり敷いていはいるのです。敷いているにも関わらず、背中側から体がどんどん冷えていく。

そのうち、夢うつつなのか、寒さにモウロウとしてなのかは分かりませんが、こんなことを夢想していました。地球という、自分の体重と比較すると無限大ともいえるような物質に自分の背中は接している。その無限大の物質が、自分の体温を奪っていっているのだと。

比熱とか比重とかテントマットによる断熱とか、そんなの関係ないのです。相手は無限大の質量を持っているのだから、このままでは自分の体温は地球に吸収されてしまい、ちょうど平衡するところまで低下していくに違いない……!

相手である地球の地表温度がたとえばほぼ0度だとしたら、相手は無限大の質量を持っているのだから、要するに自分の体温もそのうち0度になってしまう! という峻厳な物理の法則に気づいた時、もう寝てなどいられなくなってしまいました。できるだけ地球に接する面積を少なくしなければ死んでしまう!

その状況で自分がどうしたのかというと、まず背中を地面から離しました。つまり座るという体勢に切り替えたのです。しかし、地球に接しているのがケツだけでも、それも寒い! やっぱり体温を地球に奪われてしまう。立つしかない。でもテントの中じゃ立とうにも立てない。♪し~かたがないので、テントから出てさ、その辺の登山道を行ったり来たりするしかなかったのさ。

バカだと思うでしょう。はい、バカです。でも、この寒さの恐怖って相当なものなんですよ。とくに、季節がいかんかった。11月です。下界ではまだあったかい日も多い時期です。体が寒さに慣れていません。しかも11月じゃあ、まだ雪も積もってません。雪が積もれば、雪って空気をたくさん含んでいるから、そんなに体温が奪われるものじゃないんです。でも、やっぱり体が慣れていなかったというのが一番大きいな原因だと思います。とにかく、11月、12月初めの頃のキャンプは要注意なのです。

でも、一緒に登っていた仲間は、テントマットにエアマット(空気で膨らませるマットでクッション性・断熱性ともピカイチ)を重ねて使っていたので、「お前、なにやってんの、うるさいぞ」とぶつくさ文句を言いながらも、ガーガーいびきをかいて寝ておったのであります。

教訓。高性能な道具は身を助ける

そうです。フォースト・ビバークはあくまでも緊急避難的なもの。上にご紹介したように、「目的地まで行けなかったら途中でビバークすればいいか」なんて甘い気持ちで臨んではならないのです。そして、もうひとつ重要なことは、キャンプ道具は性能がよけばよいほどいいということ。

しかしですね、後者に関しては、その後、考えがガラガラと音を立てて崩れていくのです。キャンプやってると、より機能的なもの、より高性能なものを求めようという意識が強く働くものです。だって、普段は快適な家で生活しているのに、わざわざ自然との接点とも言うべき、多少は過酷な環境に入っていくわけです。いつもと同じような快適さに少しでも近づけたい。となると、道具は非常に重要というわけです。

それが高じていくと、山でおいしいコーヒーを飲みたいからパーコレーターを持っていこうとか、ダッチオーブンでローストビーフとかパエリアとかホットケーキとか作りたいと夢想してしまったり、ダケカンバの枯れ枝でスモークした薫製がぜひ食べてみたいからスモーカーを持っていこうとか、いやいや冗談じゃないんですよ、すべて実話、自分ふくめて周囲の山屋さんでもハマってしまったことなのです。

車でキャンプサイトまで乗り付けることができるようなオートキャンプ場だったらいいんです。でもそれじゃきっと物足りなくなって、人は未開の原生林とか山奥とかを目指すものだと(個人的にデスが)思うております。その時にですね、パーコレーターやスモーカーのようにバカバカしいほど容積をとる道具や、鋳物でできたひたすら重たいダッチオーブンを持っていくなんてことは非現実的なのです。

そりゃもちろん、パーコレーターやダッチオーブンクッキングに命をかけてるキャンパーもたくさんいるし、そういう方とご一緒するキャンプは楽しいし美味しいから大歓迎なのですが、自分でやるか? となると「?」というか、個人的にはないですね。

いったん家を離れ、それが非日常とはいえ、そんな環境の中でも生きていることに気づいたからには、人間の野性を解放する方向に気持ちが前のめっていく。少なくとも自分や自分の仲間の多くはそういう感じの人が多いように思います。

するとですね、ダッチオーブン云々ではなく、上段で優れものと紹介したテントで寝る時に快適な「エアマット」とか、南極クラスの寒さでも大丈夫というグレードのシュラフ(寝袋)とかでさえも、いつの間にか無用なものになっていくのです。

道なき道が人間の野性を解放していく

とくに、山登りの中にひとつのジャンルとして「沢登り」というのがあるのですが、要するに登山道ではなく沢筋を登って行くという登山です。この世界に一歩でも足を踏み入れてしまうと、考え方とか人間性とかががらっと変わってしまう人が多いように思います。考えてみれば登山道なんてない時代から、人々は山を登り、山の向こうの集落と交易したりしていたわけで、そんな昔の頃から沢筋は自然の山道だったわけですから。沢登りは大地との対話であるとともに、自分に連なるじいちゃん・ばあちゃん、ひいじいちゃん・ひいばあちゃん、ひいひいじいちゃん・ひいひいばあちゃん、ひいひいひいじいちゃん・ひいひいひいばあちゃん……といった具合で遠いご祖先様と関わらずにはいられないような山歩きでもあるのです。

沢に沿って峠に向かって登っていくと、登山道ではないですからもちろん道はありません。沢沿いの岸を歩いたり、場所によっては沢を泳いだり、ところによっては滝を登ったり、あるいは滝を迂回するために「高巻き」といって水のない斜面を場所によっては稜線の近くまでケモノ道をたどって遠回りしてから沢筋に戻ったりということを繰り返し、繰り返しして登って行くような登山なんですから、荷物なんて少ないに越したことはありません。

そもそも江戸時代とか、いえいえ奈良時代とかもっと昔とかに、沢伝いに山に分け入っていた人たちは、エアマットとかゴアテックスの雨具とか、テントですら持ってなかったわけですもんね。

そんな道なき道を歩いていくうちに、感受性が変わっていくんでしょうかね。

11月のビバークで背中から地球に体温を奪われるなんて言ってたくせに、テントマットがぺらぺらの薄手のもので大丈夫なようになる。シュラフもふかふかなのはかさばるから、インナーシュラフ(シュラフの内側に入れる補助的な薄手のシュラフ)とシュラフカバー(シュラフの外側に付けるカバー。綿や羽毛などの断熱材はなく、ただの布の袋)を重ねればいいやとか、テント自体も沢筋では張れる場所が限られているからツェルト(簡易テント:筒状のただのナイロン布をロープなどで木に引っ掛けて家型にしたり、歩行用ストックを柱代わりにしてテントみたいに建ててみたり、あるいは状況によってはタープみたいな屋根だけにしたり、臨機応変に使う)でいいやとか、いやいっそビニールシートでいいんじゃん、なんてことになっていく。

つまり、どんどん装備が減るというか、簡略化されていくのです。「断捨離」じゃありませんが、装備が減っていくことがよろこびみたいに思えてくるほどなんです。

沢登りのルートにはテント宿営地なんてものもないから、どこで泊まるかは自分で決めます。この木の下がいい感じだなとか、今夜は雷があるかもしれないから、高い木の下は止めとこうとか、気持ちのいい草地だけど雨が降ると水が出る場所だなとか、とくに考えるまでもなく、いい感じの宿営地が見た目で判断できるようになっていく。これ、本当に不思議なことでですね、知り合いの達人なんかに言わせると、「おーい、ここで泊まってけ」と、その場所の方から声を掛けられるような気がすることもあるのだそうです。

沢沿いでキャンプするとなると、平坦地がある方が珍しいくらいで、ごろごろ石が転がっている場所で寝ることも多いわけです。雨の心配がなければ、緊急時のためにいちおうツェルトは建てておくにしても、外で適当にごろごろ寝る。そんな時に、岩と岩の間に自分の体が上手い具合にフィットして、そのまますーって眠れたりすると、これがもう最高に快適で幸せな睡眠なんです。草地のテン場は快適だし、11月の土のテン場は体温が奪われるから最低、雪の積もった場所でのテン泊は、寝てるうちに体温で体の下の雪が融けていって、朝起きるとからだが半分雪に埋没しているとか、まあいろいろあるわけですが、最高のベッドはどんなとこ? と問われれば、沢沿いの岩場のフィットするところに勝るものはない。

どれくらい前のことかは分からないけれど、たぶん自分のご先祖さんもこうして自然の中で寝たりしていたんだろうなと妄想したりするわけです。それがまた楽しいんです。

まあ、とっくに時効だろうから白状しますが、若い頃、新宿辺りで呑んで終電を逃してしまった時なんかに、新宿御苑の森に忍び込んで仮眠場所を探していると、月明かりに照らされて、いかにもいい感じで休めそうな木の根元が見つかったりしたものです。

キャンプって、日常の便利な生活から自分のことを、より野性的な在り方に向けて押し出してくれる体験だと思います。でなければ、わざわざ不便なことを楽しむ理由なんてないわけですからね。

ダッチオーブン最高です。パーコレーターで美味しく淹れたコーヒー大好きです。もちろん薫製にも目がありません。コンセント付きのオートキャンプ場も便利だし、たとえキャンプ場とはいえ、トイレやシャワーが完備されていて、歩道には街灯が立っていたりする方がきっと快適だし安全だし安心でしょう。

だけど、それでも、別に無理しているんじゃないのに、なぜか不便な方へ不便な方へ突き進んでしまいたくなる気持ち。

キャンプの醍醐味が何だ、なんて言うことなんかできませんが、キーワードのひとつには、きっと「野性」ってのがあるんだろうなってことは確信しておるわけです。

(つづく、かな?)

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