組織を守る免震構造は、なかなかのお手並みかも
来る3月27日は、東洋ゴムの第99回定時株主総会です。
最初の稿でもお伝えしましたが、今回の株主総会の招集通知は、3月4日に発行されています。不正の発表の謝罪会見が3月13日ですから、招集通知は、不正の疑いを国土交通省に報告した2月から謝罪会見までの間に発行されています。
株主に事前に配布される資料には、今回の事件の件は一切触れられていません。こうした事態が起きうるリスクがあることも記述がありません。
そして、今回の株主総会の日をもって、取締役の8名全員と監査役3名が任期満了となります。そのため、株主総会の第3号議案が「取締役8名の選任」、第4号議案が「監査役3名の選任」となっています。
社内で不正が判明し報告があったのが、平成26年2月です。11月にはトップ3の異動が行われています。信木社長が会長に、山本専務が社長に、A常務が代表権を持つ専務になっています。代表権を持つ取締役が2名から3名に増えています。
明けて平成27年1月1日に、ダイバーテック事業本部長のC取締役が同事業部から外れ、後任に経営企画本部長だったD常務執行役員がダイバーテック本部長に就任します。
今回の(今回も)不祥事は、ダイバーテック事業本部が舞台です。昨年2月の不正発覚から、今年3月の発表までの間に、経営トップの人事があり、問題となった事業本部長が交代するということの、どこに不可解な点がないと言えるのでしょうか。
しかも、事件は担当の課長が一人で行ったことによる不正と発表しています。
加えて、1月1日でダイバーテック事業本部長を外れたC氏以外の社内取締役4名は、揃って再任の候補となっています。
こうした人事異動は事件と全く関係ない偶然でしょうか。関係があるようであれば、世間への公表の前に、社内の人事対応をしたことになります。
同社の定款で、取締役の選任の議案は、「議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数によって決する」ことになっています。どういうことかと言えば、可決しやすくなっています。
この上位株主が委任状も含め出席し、賛成票を投じれば、取締役の選任は可決となります。
株主がそれで良いといえば、それで良いのです。株式会社ですから。株価はすぐにストップ安となりましたが、株主が許せば、役員はそのままです。株式会社のルールですから。
上位株主のうち信託銀行の保有株は投資のために信託銀行の預かり担っている株式(ファンドなどからの預かり資産)だと思いますので、信託銀行が「モノ言う株主」とはならないと思います。保有比率が高いため、白紙委任を出す可能性がありそうです。
また東洋ゴムは2013年12月の決算期末において、ブリヂストンの株式を 3,893千株、トヨタ自動車の株式を2,739千株、三菱UFJフィナンシャル・グループの株式を7,565千株保有しており、ある意味上位株主とは持ち合いになっていますので、そのあたりも株主総会の見どころになると思います。
そうしてみると、社内に対する外部からの圧力への免震構造だけは、優れているように見えます。
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