やっぱり一人の仕業ではなかった
『免震偽装、担当交代後も…同じ手法で数値操作』
東洋ゴム工業(大阪市)の免震ゴムの性能が偽装されていた問題で、データを改ざんしていたとされる50歳代の課長代理が異動した2013年1月以降も、課長代理時代と同じ手法で「性能偽装」が続いていたことが21日、分かった。
担当者が一人で行ってきたデータ改ざんを疑問だとして、下記リンク【免震どころか激震 東洋ゴム工業株式会社(2)】では書きましたが、21日に判明した事実では、後任の担当者が引き継ぎ後も、前任者と同じ手法(係数の数値操作)により性能データの改ざんを行っていたようです。
報道のとおりであれば、後任に代わってからも、あくまでも一人の担当者がデータの改ざんを行っていた事になります。ん、誰が見破ったの?
当初の謝罪会見では、「前任の担当者が10年以上に渡り、業務を担当してきたが、配置転換により、後任の担当者が2014年2月に前任のデータ改ざんの不正に気づいた」としていました。その後任の担当者が、実は2013年1月から前任者の「性能偽装」の手法を引き継いで、同じようにデータ改ざんを続けていた事になります。
よくわからない話です。不正と言い出したのはいったい誰でしょうか?
自らもデータ改ざんを引き継いでいた後任担当者が、「前任者がデータ改ざんをしていたようです」と報告するでしょうか。話に矛盾がありすぎです。
記者会見の中で山本社長は、「営業からのプレッシャー(納期)で、このようなことをしてしまった可能性がある」と事件の背景を分析しました。
ここからは架空の話です。企業不祥事ドラマならこんな展開ではないかと。最初のデータ改ざんに手を染めるシーンの台詞。
「納期はどうなっているんだ?」(営業サイド)
「間に合わない」(製造サイド)
「何故だ?」(営業サイド)
「品質がアバレて建築基準法の基準の性能が出ない」(製造サイド)
「なんとかしろよ!」(営業サイド)
「なんとかしろって言われても・・・」(製造サイド)
「お客さんになんて言うんだ?工事が始まるんだぞ」(営業サイド)
「そんなこと言っても、不良品は出荷できない」(製造サイド)
「納品出来なきゃ損害賠償を請求されるぞ、誰が責任取るんだ?」(営業サイド)
「今回だけだ、上手い方法ないのか?数値をちょっと操作しろよ」(エライさん)
「えっ?!」(製造サイド)
「責任は俺が取るから、やれ」(エライさん)
とまぁ、こんな台本になるのではないでしょうか。
製造の現場、ましてや品質管理の担当といえば、堅物中の堅物という人がほとんです。自らデータを改ざんする必要性がありません。彼らの仕事は忠実な検査です。出荷検査で性能が満たされていなければ、不良品シールをはり、不良の内容を報告して終わりです。いくら営業からあれこれ言われても聞く耳もたない人たちが、品質管理部門なのです。その結果、技術や生産技術の担当と製造現場とが一緒に必死になって対策をたて良品を作り出していくのです。だから日本企業の製品の品質は向上し、世界でも評価されているのです。
常識的には、出荷検査の担当者が、事情はどうあれ、自らデータ改ざんの行うことこそが、もっとも不自然だと思います。
組織の風土、文化に問題があるのでは
山本社長が言った「営業からのプレッシャー・・・」が意味するものは?
同社は営業が東洋ゴム本体、今回の免震ゴムの製造工場は、子会社の東洋ゴム加工品の明石工場です。グループ本体から子会社への圧力とも受け取れます。これは、8年前に発覚した防火断熱パネルでも同じです。15年間組織ぐるみで不正を続けました。
さすがに今回は、「また同じです」とは言えず、「一人の担当者」に罪をかぶせた会見を開きました。しかし、会見から約1週間で、不正を行った「二人目の担当者」が発覚しました。その担当者は、最初の会見では『不正に気づいた第一通報者』だったはずではないでしょうか。
8年前の防火パネルの不正認定取得の件も【免震どころか激震 東洋ゴム工業株式会社(2)】で紹介しましたが、東洋ゴムの不祥事はこれらに留まりません。
2010年7月に同社桑名工場で、ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物を鉄くずとして処分してしまったことを三重県に報告しています。PCB廃棄物は、人体に非常に有害な物質である廃棄物として、『ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法』が制定され、法令に基づいて処分が決められている超有害物質です。また、『中間貯蔵・環境安全事業株式会社法』の第3条で、「国は、中間貯蔵及びポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理の確実かつ適正な実施の確保を図るため、万全の措置を講ずる」とし、PCB廃棄物は、国の監督下にある中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO、旧日本環境安全事業株式会社)が、国と一体になって処理をすることが決められています。この会社こそ、福島県の放射線廃棄物の中間貯蔵施設を運営する会社でもあります。
毒性の強い、危険な有害廃棄物を専門に処理する特殊な会社(旧環境事業団)でしか処理が認められていない廃棄物で、処分・処理されるまでの保管にあたっては、保管者は、毎年都道府県知事等へ保管量等を届けなければならない廃棄物であるPCB廃棄物を2007年12月に鉄くずとして処分したことを2010年7月に報告したのです。
2007年12月に間違えて処分した?
2010年7月に報告した。
それまで三重県知事には何の報告をしていた?
保管しているものとして報告していた?
実際は保管先から紛失しているのに。鉄くずとして処分しちゃったのに。要はろくな確認作業もせずに、適当に県知事に報告してただけですよね。確認したら、ないことがすぐわかりますから。PCB廃棄物なんですよ、東洋ゴムさん。
こうしたことを繰り返しながら、「グループ・ガバナンスの充実」やら「コンプライアンス体制の強化」やら「内部統制システムの整備」やら「リスク管理体制の強化」やら「CSR経営の推進」やらと言ってる訳です。ならべている語句だけは立派なラインナップです。
「御託を並べる」とは、まさしくこのこと。それに対して消費者は、「ちゃんちゃら可笑しい」というしかありません。
ちゃんちゃら可笑しいとき、日本人はへそで茶を沸かす能力が備わっているらしいです。防災で役に立つかな?
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