東京電力「吉田調書」を読む(9)2,3号機に迫る危機

iRyota25

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いつ止まるかわからないRCIC

RCICが動いているかどうかの状況は、原子炉建屋の奥に入っていかなければ分からない。しかもRCICの水源は、炉心で発生する蒸気を冷やしたものだから、水源の水位を見るという防火水槽を使った冷却の時のような方法もない。質問者は問う。

○質問者 (前略)いつ止まるかわからないという状況で、ずっと日々時間が経っていくわけですね。

○回答者 ですから、基本的には1号機が大変な状況になって、次に3号機ですね、1、3、2ですから、要するに、少なくともシリーズで来てくれたのがラッキーだと思っているぐらいで、どのタイミングで来てもおかしくないわけですよ。

人が足りないという状況で、頭の中がパニくっているんですよ。私もはっきりいって、だけれども、さっき言ったように、やることは水を注水、どの号機も水を注水することとベントだと、これしかない。

その中で、いろいろ状況が、1号機が爆発しただとか、その収集もしなければいけない、その間に2号機、3号機の状況が変わってきつつあるのを確認しながら対応しているという指示をしていたと、本当の混乱期ですから、そんなロジカルに、どのタイミングで何がということはないんですね。そのときに気がついたことから、どんどん指示をしてやっていくというような状況ですから。

吉田調書 2011年7月29日 16~17ページ

爆発、あるいは危機的状況が「シリーズで来てくれたのがラッキー」という言葉、これはしっかり記憶されるべきだろう。まとめて来られていたら、手の打ちようがなかったという告白ともとれる。

重ねて述べられている「頭の中がパニくって」「本当の混乱期ですから、そんなロジカルに、どのタイミングで何がということはない」「そのときに気がついたことから、どんどん指示」…。

吉田所長以下、原発で働く人たちの努力があって、ということはもちろんだが、事故がこのレベルで済んでいる要因のもっとも大なるものが「運」でしかなかった。

原発事故の実像を物語る言葉として、多くの人に知ってほしいと思う。

吉田所長のこころのつぶやき

今回は吉田所長の「こころのつぶやき」が聞こえてくるような言葉が多い。強気なのか気弱なのか。2号機の非常用炉心冷却装置に関連して、重ねて次のような発言がある。

○質問者 そうすると、その時点では、3号機なんかは、1号機の爆発当時、HPCI(高圧注水系。炉心の上から高圧で注水する非常用炉心冷却装置のひとつ)が起動しているんですが、2号機はもう起動しないものだと思っていたんですか。

○回答者 それは、何とか起動させろということはずっと言っていましたが、どうも現場へ行くと、HPCIはバッテリーがだったか、番だったかわからにですけれども、そこがだめだと、何とか復旧しろという指示はしていましたが、復旧班の方で無理だと、

多分、同じところで、同じタイミングに所長になられたら多分わかると思うんですけれども、これだけ、3つ暴れているものがあって、いろんな情報が来て、判断しないといけないときに、もうわからなくなってしまうんですね。

だから、指示をしたのは、私の指示は、単純に注水しろ、何とか工夫して注水しろ、海水でも何でもいいから、それと格納容器の圧力を下げろ。

それで、今、おっしゃったように、RCIC、HPICは、それに行くまでの時間かせぎですから、これは何とか活かせるだけ生かせと、これだけなんです。

吉田調書 2011年7月29日 17ページ

所長として経験すればわかるだろうけれど、

暴れているのが3つもある。
いろんな情報がくる。
その中で判断しなければならない。
もうわからなくなってしまう。

「たいへんな仕事だったんですね」と心情的な側面を強調すべき場所ではない。おそらくそうとうに強気な吉田所長でさえ、こんな弱音を吐いてしまうほどに、原発の事故はたいへんだということだ。またシビアアクシデント対応と言葉が事故前からさんざん言われてきたにも関わらず、事故原発のダメージコントロールというものが、所長個人の判断と、その所長にすら把握できていない「物すごく大変」な現場の人達の犠牲の上に委ねられるほかなかったという現実を、しっかり見なければならない。

もう少し、震災前に打っておくべき手はなかったのか。

悔やんでも仕方がない。当事者はそれを為さなかったのだから。事故はここからさらに深刻化していく。

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