建設時から「事故は起こらない」といっていたのに…
四国電力伊方原発の5キロ圏内の住民を対象に、原発事故時に放射性ヨウ素131による内部被ばくを抑制するための安定ヨウ素剤の事前配布が9月28日から始まった。
愛媛新聞ONLINEによると、対象となった5,494人の34.2%に当たる1881人が安定ヨウ素剤を受け取ったという。原発での過酷事故では、原子炉から漏れ出る、あるいは放出される可能性がある放射性ヨウ素131を体内に取り込むことで、甲状腺ガンが発生する懸念がある。安定ヨウ素剤はあらかじめ大量のヨウ素を摂取することで、仮りに放射性ヨウ素を体内に取り込んだ場合にも、甲状腺に定着しにくくするための予防薬。
東日本大震災の原発事故では、国の指示がない中、福島県三春町といわき市が自治体の自主判断として配布を実施した。
事前配布としては、九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市に続いて全国で二番目となる。
事前に配布するということは、事故が起こりうることが前提となる。それだけにヨウ素剤を受け取った住民の心情は複雑だ。
町民会館でヨウ素剤を受け取った豊之浦の無職山嵜松雄さん(67)は「いつでも取り出せるよう家の壁に貼っておく」と話す一方、「ヨウ素剤を飲む事態になればあきらめなければいけないだろう。原発建設時から事故は起こらないと言っていたのに、事故に備えて配るのはいかがなものか」と懸念した。
伊方原発の建設が争点となった過去の選挙では「事故は起きない」との言葉を信じて建設推進につながる一票を投じた人も少なくないはずだ。その人たちにとって、今回のヨウ素剤配布はどのように映るのだろう。
一方、原発に反対してきた人たちにとってヨウ素剤配布はどんな感情を呼び起こすか。
配布された小さな錠剤が引き起こす波紋は小さくはない。これは、四国のとある小さな町の出来事でないのだ。
四国電力 伊方発電所
(ちなみに…)
読売新聞も同じニュースを報じている。同じ人物と思われる「豊之浦の無職山崎松雄さん(67)の言葉として、「いざというとき、すぐに服用できるよう、居間の壁などにテープで張り付けておく」とのコメントを紹介する一方、愛媛新聞が伝えたような「事故は起こらないと言っていたのに…」といったコメントは掲載されていなかった。
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