福島市が「放射線に負けない体をつくりましょう」と題するページで、こども向けと思われるファイルを公開している。このところネットで話題だ。
放射線に負けないからだをつくろう
放射線に負けないからだをつくろう
「生活習慣のポイント」
1 新陳代謝をよくするための生活習慣
新陳代謝がよいと、もしからだの中に放射線物質が入っても、早くからだの外に排出されるといわれています。
1 早寝・早起き・良質な睡眠をとれるような生活リズムをつけましょう。
2 朝ごはんをしっかり食べましょう。
3 バランスのとれた食事をとりましょう。
4 適度な運動を習慣にしましょう。
(散歩や外で遊ぶことも大切です)
5 過度な心配はしない。
ストレスをためこまないようにしましょう。
2 日常生活の中で心がけたいこと
1 窓を開けて室内の換気をはかりましょう。
2 洗濯物は日光にあてましょう。
3 天気の良い日は布団を干しましょう。
4 外から帰ったら手洗い、うがいをしましょう。
ネットで話題というのは、「なんだこれ!」「とんでもない!」という意見がほとんどのように見える。でも、条件反射のように反発したくなる気持ちはちょっと抑え、一歩引いて見てみよう。何しろぼくたちは、低線量被曝が人体にどんな影響を与えるのか、確たる情報を持っていないのだから。
それにしても、タイトルを「夏休みの過ごし方」とかに差し替えてもそのまま通用しそうな内容には、やはり驚きを禁じ得ないのだけれど。
飛散した放射能を含む粉塵が無主物ではないのは当然なわけで
7月14日、原発から20キロも離れた南相馬市の水田で基準値を超える放射性物質が検出した原因として、昨年8月に3号機のがれきを撤去した際に大量に飛散した大量の放射性物質の影響ではないかという記事をメディア各社が伝えた。
東京電力は、その時のセシウムの総放出量を最大4兆ベクレルと試算していたと発表したが、基準値を超えたイネとの関係については、コメントできないという対応。
まるでゴルフ場裁判で「放射性物質は無主物」と主張した時と変わらないスタンスには驚かされる。大量の放射性物質、しかも放射性セシウムを排出するのは事故原発をおいてほかには考えられない。もともと事故原発の中にあった物が外界に放出されて、大変な被害をもたらしているのだから、もっと誠実に取り組んでほしい。
そしてだ、事故から2年以上経過した昨年8月にも、大量の放射性物質が原発から放出されていたということの重さである。さらに、1号機でも建屋に取り付けられているカバーを外してがれき撤去作業がごく近日中に始められる予定だ。
収穫したイネが基準値を超えるくらいだから、人体への影響が懸念されるような放射性物質が、事故原発から遠く離れたところまで飛散する可能性は、今後も十分に考慮しておかなければならない。
行政は放射線に負けないからだをつくろうと言う。でもどうすればいいの?
外で遊ぼう、窓を開けて換気をしよう、洗濯物には日光を、天気の良い日は布団を干そうと福島市は呼びかける。
しかし、1号機のがれき撤去が始まろうとしているいま、そんなことを推奨して本当にいいものなのだろうか。
ぼくたちは低線量被曝が人体に与える影響について確たる情報をもっていない。それは素人だろうが専門家だろうが同じこと。主語「ぼくたち」とは人類という意味だ。
外で遊んでいる時に。
開け放した窓から。
外で干した洗濯物に引っ付いて。
干した布団に引っ付いて。
低線量被曝のレベルではない、農作物の基準値を超える放射性物質を人間が取り込むことになってしまうかもしれない。その危険はある。
ぼくたちはどうすればいいのだろう。
ストレスをためなければいいなんて、答えにならないと思うのだが。
文●井上良太
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