網走の坂道で職務質問【青春18きっぷ道中記 北海道編vol.3】

tanoshimasan

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 (前記事)約2時間の途中下車・上川駅【青春18きっぷ道中記 北海道編vol.2】 のつづき
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青春18きっぷを手にすると、どれだけ電車に乗っていても平気になってしまう。

---------------------------------------------------------------------------------------  ■青春18きっぷ
  ・JR北海道からJR九州まで、すべてのJRの普通列車が乗り放題になる。
   (特急列車は不可)             ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ・使用期間は大まかに春、夏、冬。学生の休暇時期と重なるように設定される。
  ・5枚つづり11,500円で販売されるため、1日あたり2,300円で乗り放題。
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札幌~網走間2,300円、ホテルには泊まらない

網走方面北見行き。上川駅(かみかわえき)を出発した列車「特別快速 きたみ」は、思いのほか混雑していた。上川駅から網走方面へ行く特急以外の普通列車は1日2本のみ。とても少ない本数だが、そのぶん、網走方面へ行くには貴重な存在のようだ。列車内はちょうど僕のような、大きめのバックパックを背負った人が目立つ。

左右とも森に囲まれていて、変わり映えのしない景色が続いた。暇だったのでwikipediaで調べてみると、この石北本線は、旭川駅から上川駅までの間に14駅あり、走行距離は44.9km。しかし、その上川駅から隣の上白滝駅までは、一駅区間にも関わらず34.0kmも離れている。たったひと駅進むだけなのに、40分以上かかるらしい。人けのない山道を、ただただ延々と走って行くのだろう。鉄道には詳しくない方だが、こういう情報を得ると、なんだかおもしろい。

車内は一人旅らしき人たち、遠出でもしていたのだろう年配の方々、という、都会の電車とは全く違う不思議な客層で占められていた。その乗客のほとんどが、景色を眺めるか、寝ているだけ。車内アナウンスもしばらくは流れないだろう。静かな雰囲気のなか、線路を走る音だけが響く。

「特別快速 きたみ」は、上白滝駅を通過し、さらに次の白滝駅まで進む。

―――目が覚めると、時刻は18時すぎ。列車は終点の北見駅に近づいていた。何があったのか、列車は10分ほど遅れているらしく、「北見駅にも10分遅れで到着します」との車内アナウンス。北見駅では網走行きの列車に乗り換える予定だったが、ちゃんと待ってくれるそうなのでホッとする。

北見駅に到着し、再び重い荷物を背負い、列車を乗り換える。太ももや肩から筋肉痛を感じた。日は傾き始め、徐々に薄暗くなりつつある。列車の客層は地元の高校生やスーツ姿のサラリーマンらしき人々。先ほどまでとは一転、バックパックを背負った乗客は僕くらいしかおらず、その地域の日常にお邪魔している感覚になる。横に座っている奥さんの袋からは白ネギが顔を出し、高校生らしき女の子は英単語帳を眺めていた。

網走駅。駅前は薄暗かった

網走駅。駅前は薄暗かった

網走駅に到着したのは19時30分過ぎ。目的地である喫茶店「停車場」(※1)のある北浜駅は、この網走駅の4駅隣。だが、夜も遅いので、今日は網走市内に泊まることにし、明日、「停車場」へ行こうと決めた。

宿泊先は網走市内に唯一あるネットカフェ(※2)。網走市内の民宿はどこに電話しても「当日予約は厳しい」と断られた。ホテルもあったが、学生の僕には高い。その点、ネットカフェなら12時間2,000円程度で済む。

そもそも今日1日、札幌から網走までの長距離を、青春18きっぷを使ったことで、片道実質2,300円と安く済ませたのだ。ホテルみたいな高い宿に泊まってしまえば、すべて台無しだ!!

……と、当時の僕は本気で思っていた。すっかり貧乏性である。

網走駅前は思っていた以上に閑散としており、20時前だというのに申し訳程度の街灯しかない薄暗さだった。手持ちの観光マップと携帯電話で東西南北を確認し、ネットカフェのある方向まで歩くことにする。ネットカフェは駅から少し離れた道道490号線沿いにあるらしい。

  (※1)今回の旅の目的は、「1年前に食べた喫茶店「停車場」のオホーツク
      ラーメンを食べに行く」というもの。(vol.1参照)

  (※2)現在は閉店しているらしく、網走市内にネットカフェは無い。
     (2013年時点)

網走の坂道で職務質問

1年半前に訪れている網走駅だが、昼と夜とではまったく違う別の街に見えた。携帯で地図を見ながら、目的のネットカフェまでの距離を歩く。バスも無い、タクシーはホテルと同じ理由で使わない。無心に3kmの道のりを歩く。少し要領が良ければ、もっと楽に移動できるはず。それでも僕は、「安く済ませること」にこだわり、慣れない土地の見知らぬ車道沿いを、地図に従ってひたすら歩くことにした。

駅前は閑散としていたが、車道沿いにはチェーン店が立ち並び、車もたくさん走っている。「地元の関西と違い、北海道は車社会。街は、駅前ではなく車道沿いにつくられている」。そんな当然のことが、新発見のように思えた。見知らぬ土地の夜ながら、明かりが多くてなんだか安心だ。

それでも、3kmという距離は歩けばかなり長い。特に、僕は長旅の荷物を全てバックパックに詰め込んでいる。重さにすれば20kg以上あるのではないか。それを背負いながら歩くのはなかなかキビシイ。特に想定外だったのは、道中に長めの坂道があったということ。だんだんと足が痛くなり、疲れてきた。

ちょうどイイところにコンビニを見つけた僕は、建物の壁にもたれて休憩することにした。

と、その時「ちょっといいかな?」と声を掛けられた。見上げてみると……警官だ!!

パトカーのあの威圧感は何なのでしょうか

パトカーのあの威圧感は何なのでしょうか

「はい??」

たとえ心当たりがなくても、あの制服に身を包んだ警官に声を掛けられるとびっくりしてしまう。男性警官が2人。コンビニ前にはパトカーが止まっている。

「何をしてるの?」

と、僕に尋ねる警官。

「い、いや、歩いていて疲れたので、ちょっと休憩を」

「何をしているの?」なんて聞かれても、ちょうど良い回答なんか用意していない。飲み込めない状況に声が上ずってしまう。もう1人の警官は僕を見ながら何やらメモを取っているではないか!!どういうことだ……。

「こんなところをわざわざ歩いているのかい?」

と、警官は意味深なことを言う。それもそのはず、この辺は申し訳程度に歩道があるが、なかなかの坂道。歩いているのは僕くらいしかおらず、車ばかりが気持ちよく走っていた。でも、それが何だって言うんだ。

「はい。それがどうかしましたか」

僕は聞き返す形でこう返事をしたが、警官はそれに答えることなく、

「それで、どこに行くの?」

と、聞いてくる。

「いや、もう少し行った先のネットカフェへ」

「ネットカフェ?」

僕が答えると、2人の警官はなんだか怪訝そうな顔をする。コンビニ前にパトカー、バックパックを背負った僕、コンビニのお客さんはチラチラと僕の方向を見る。店員までもが、不思議そうに覗き込む。これでは、どう見ても僕が不審者だ。何故こんなことに……。

「ちょっと、そのかばんの中身を見させてもらっても良いかな?」

と、警官。心当たりがないぶん、なんだか怖い。渋々応じると、僕のバックパックを探り始めた。荷物なんて、大半が「既に一度着た汗まみれの衣類」だ。それを真剣なまなざしで調べる警官たち。もう意味が分からない。何が嬉しくて、2人の警官に汗まみれの下着まで見せなきゃならんのだ!!しかもこんなコンビニの前で。

ひとしきり“検査”が進むと、警官2人はいまいちすっきりしない表情で、僕にバックパックを返してくれた。

「一体どういうことなんですか?」

と、僕は逆に質問したが、

「いや、申し訳なかったね」

としか言わず、そのままパトカーに乗って行ってしまった。パトカーを見送り、広げた荷物を片付ける僕。周りの視線がなんだか痛い。あれは、本当になんだったのだろうか。

さっきまでかいていた汗も引き、急に肌寒く感じた。ここはオホーツク海沿岸の市街地。8月下旬には気温も下がってくるらしい。

「網走の夜は寒かった」

映画『網走番外地 北海篇』(1965年)

という、フレーズを思い出した。もし、仮に僕が何かの犯人だったとして、あのまま警察に捕まっていた場合、やっぱり最終的には網走刑務所に行っていたのだろうか。そう思うとなんだかおかしくなり、さっきのことも「妙な出来事だったな」と割り切ることができた。

網走で食べたスープカレー
網走で食べたスープカレー

夜21時ごろ、僕はようやく目的地のネットカフェにたどり着く。近くのお店でスープカレーを食べ、ようやくチェックイン。ネットカフェに入る直前、流れ星が網走の広い空を駆けていった。6時15分に札幌駅を出発しての大移動。改めて「遠くに来たもんだ」としみじみ感じつつ、僕はネットカフェに入った。


(つづく)

 (次記事)北浜駅、思い出のラーメン【青春18きっぷ道中記 北海道編vol.4】
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目的地・喫茶「停車場」へ!

網走駅

札幌からの距離(約390km)を考えるとなかなかの大移動!

旅の記事、いろいろあります。

「これさえあれば、1日中JRの普通列車が乗り放題」という、青春18きっぷ。この夢のようなきっぷが導くスローな旅には、「ちょっとしたドラマ」が詰まっています。

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青春18きっぷであっちこっち旅をした時の話です!

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