数年前、僕はラブホテルと呼ばれるレジャー施設で清掃のバイトをしていました。ラブホの職場環境は「面白いと思えば面白い、特殊と思えば特殊、普通と思えば普通」という何とも不思議な感覚があります。このシリーズ？では謎の多いラブホテルの舞台裏に少しずつ迫っていきたいと思います（脇汗）。

　ラブホテルに5年間勤めるベテランのNさん（30代女性）は、清掃がとても上手で面倒見のいい人でした。従業員のトイレを進んで掃除したり、スタッフルームをホウキで掃き掃除したり、みんなが面倒くさがる作業を率先してやる人です。

社交的な性格で接客も得意だったNさんは、フロントの受付もそつなくこなす器用な人でした。幼い娘を持つシングルマザーでもあり、昼間は子供の世話をして夜はホテルで働く一家の大黒柱です。仕事も家庭も大切にするパワフルな人でした。

　あるとき、Gさんという30代の男性が入社してきました。Gさんは2歳になる幼い息子を持つ独身の人で、昼間は母親の実家に息子を預けてホテルで働き、夜は自宅で子供の面倒を見るというハードな生活を送っていました。シングルマザーとしてホテルでパート労働するNさんと同じような境遇を持つ人です。

Gさんは「息子の面倒を見る人が欲しい！早く再婚したい！」というのが口癖でした。面倒見のいいNさんは困っている人を見ると放っておけない性格らしく、いつしかGさんの息子の面倒を見るようになりました。この頃からNさんの様子が変貌します。今までは真面目に出勤していたのに、遅刻や欠勤が多くなってまともに出勤する日が少なくなりました。

Nさんは清掃中でもGさんと携帯でメールするようになり、トイレ清掃でもウン○を拭き忘れるなど、次第に奇怪な行動パターンに陥ります。一連の行動を見て心配になったY主任はNさんをフロント業務にコンバートしました。客室清掃を禁じられたNさんはフロント業務を真面目にこなすようになったのですが・・・

　ある日、夕方のニュースをテレビで見ていると『レジャーホテルのパート従業員、N容疑者（38歳）窃盗容疑で逮捕』という報道が流れて飲んでいたコーラを吹き出しました。N容疑者とは自分と同じラブホテルで働く、あのNさんだったからです。ニュースによると、Nさんは「ホテルに強盗が入ってきて金を奪われた」と警察に通報し、捜査に入った警察が不審に思ってNさんを問い詰めると「嘘でした！」と虚偽を認めたそうです。

実際にはレジの金を数十万円盗んでいたらしく、それを隠すために自作自演をはかったようです。窃盗の動機は今でも闇の中です。付き合っていたGさんに金を貢ぐためだったのではないか？とも言われています。事件が起きる数週間前にはY主任のサイフから現金2万円が消える被害が起きており、これもNさんの仕業ではないか？との疑いもありました。

どこでボタンをかけ間違えたのか・・・
Gさんと出会ったことが運の尽きだったのか・・・

あんないい人だったNさんが・・・
傷害事件で起訴されたフィリピン人のKさんに続いてNさんも逮捕・・・

次は誰か・・・それとも自分か・・・？
他人事とは思えない事件の連続に僕はへこみました。