ホストクラブとは男性従業員が女性客の隣に座って接待をする飲食店。主役はあくまでもお客様である女性です。ホストは女性を良い気分にさせて喜ばせるのがお仕事です。「イケメン!色恋トーク!枕営業!自分の持つ武器を駆使して女性を満足させてみろ!」という成果主義の特殊な世界。そんなファンタジーワールドに迷い込んだ僕のホスト体験記を告白します。
新人ホストはパシられる
新人ホストに課せられる任務の1つにパシリがあります。先輩が新人を使いっ走りにする行為ですね。「タバコ買ってこい!」や「ライター買ってきて!」というように、買い物に行かされるパターンが多いです。意外かもしれませんが、僕はパシられるのが大好きでした!理由は店外に出られるからです。僕がいたホストクラブは雑居ビルの地下にあり、窓らしい窓がないのです。キッチンに換気扇が1つあるだけで、店内の空気を喚起するには不十分です。常にタバコの煙が蔓延していて、2時間くらいで呼吸困難に陥りました。
外の空気を吸って体調を整える
「タバコ買ってこい!」という一言は天使の声に聞こえました。コンビニまで徒歩5分、タバコを買って往復で12分。この時間は思いっきり深呼吸できる貴重な時間です。僕はタバコを吸えないので、副流煙を吸い込むと直ぐに具合が悪くなりました。『酒は飲めない、タバコは吸えない』ホスト向きとは言い難い体質ですね。
売れてるホストが誕生日のときは、誕生日パーティーと称したイベントが開催されます。こんなときはイベント用の飾りを付ける関係で雑貨が必要になってきます。最寄のドンキホーテに買出しに行くわけですが、買い物に40分以上かけられるのは天国です。
あまりにも体調が悪いときは、意図的に外出時間を伸ばすときもありました。タバコを買うのに20分もかけたりすると、店から携帯にガンガン着信が入ってきます。「どこにいる?帰ってこい!」と注意されるわけですが、副流煙で肺がやられてるときは、少しでも外出時間を伸ばさないと死んでしまうのです。
キャッチもパシりの1つです
新人ホストは客を捕まえるために、よくキャッチに出されます。キャッチとは路上で呼び込み営業をして店に客を誘う行為です。「30分キャッチに行ってこい!」と言われると、30分休憩時間が与えられたような錯覚を起こします。「キャッチは飯を食う時間でもないし、休憩時間でも無いんだぞ!」と釘を刺される上に、見張りまで付けられます。ちゃんとキャッチをしているか、先輩ホストに密着マークされるのです。しかし、これが・・・声をかけようにも人が歩いてないんです。
2部営業の勤務時間は午前5時~昼12時。駅前や商店街で若い子を見つけても通学途中か通勤途中でまともに話を聞いてくれません。「おはようございます!ちょっといいですか?」なんてチャラい服を着た男に声をかけられても怪しいだけです。歌舞伎町なら仕事を終えたキャバ嬢に声をかける手段もありますが、都心部から離れた小さな駅で午前中からキャッチをするのは絵的にも無理がありました。
パシりでウケを狙った新人が干される
酒屋にお酒を注文するのもパシリの1つです。ある日、カズヤさんという新人が酒屋に電話をかけました。「え~と、鏡月4本と~、カフェドパリのオレンジ2本と~、あと~ドンペリ1本お願いできないかしら~?は~い、お願いね~~♪」なぜか、オカマ口調で注文するカズヤさん。「おい!今電話してたやつ誰だ?」幹部ホストのヒロヤさんが怒鳴ります。「僕です・・・」カズヤさんが恐る恐る手を上げると、「ふざけんな!」とブチ切られて灰皿が飛んできました。
カズヤさんはヘルプでも場の空気を盛り上げられず、毎日パシリばかりでストレスが溜まっている様子でした。一発ギャグをかまして存在価値を見せつけようとしたのでしょう。その結果、幹部ホストにブチ切れられて失敗に終わります。カズヤさんは翌日から店に来なくなってしまいました。パシりでストレスを溜め、パシりでスベッて店を辞める。頑張るポイントを間違えてしまったカズヤさんに同情します。
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