ヘルプの仕事は黒子役 【噂のホストNO.1】その3

naoki1014

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 ホストクラブとは男性従業員が女性客の隣に座って接待をする飲食店。主役はあくまでもお客様である女性です。ホストは女性を良い気分にさせて喜ばせるのがお仕事です。「イケメン!色恋トーク!枕営業!自分の持つ武器を駆使して女性を満足させてみろ!」という成果主義の特殊な世界。そんなファンタジーワールドに迷い込んだ僕のホスト体験記を告白します。 

ヘルプの接客マナーを学ぶ

「凄い優しい子が来る!」歓喜の声を上げたのは2部営業No.1ホストのアキトさんです。店の壁にはホストの写真がズラリと飾られていて、月の売上No.1~No.5の顔写真がピラミッドのような形で並んでいます。2部営業のホストは約10名。No.5から下のホストはヘルプ専門でパシリのような存在です。 No.1のアキトさんはとにかくカッコいい!というか可愛い!という印象を受ける人でした。アイドル系の甘いマスクに母性本能をくすぐる高い声が魅力のピチピチの21歳。日の出営業(午前5時~正午)という厳しい時間帯でも売上を確実にあげるカリスマホストでした。

「イナバくん、お客さんが来る前に接客マナーを教えておこう」幹部ホストのカイトさんにヘルプの接客マナーについて箇条書きされたプリント用紙を渡されました。内容は以下の通りです。

1.「いただいてよろしいですか?」と一礼をして補助席に着く
2.お客様⇒担当ホスト⇒先輩⇒自分という手順で酒を作る
3.年齢、職業などプライベートに関する質問はしない
4.担当ホストがついているお客様には名刺を渡さない
5.席を移動するときは「ごちそうさまでした」と一礼してグラスの酒を飲み干す

カイト「とりあえず、先輩のやり方をマネして困ったら笑っとけばいいから」

僕    「なるほど、わかりました!」

なんとも単純かつ勇気の持てるアドバイスに気持ちが楽になりました。

ビビりながらもヘルプにつく

体験入店初日。営業時間も残り2時間を切ったころ、遂に最初のお客様が現れました。アキトさんに連れられて入店したのはパーティードレスのような派手な服を着こなした20代前半の女性です。「いらっしゃいませ~い!!」居酒屋の10倍くらい気合いの入った声で客を出迎えるホスト。アキトさんは手際よく女性客をエスコートすると、先輩ホストが氷とおしぼりを持ってテーブルを整えます。

カイト  「あの人はアヤさんていうキャバ嬢の子。最初だから新人3人でヘルプについてみようか」

ユウヤ「イナバさん、大丈夫ですよ。ちゃんとフォローしますから」カズヤ「俺が酒を作るので、見といてくださいね」

同期で入ったユウヤさんとカズヤさんはホスト歴とボーイ歴のある頼りになる存在です。2人の動きに合わせてマネしていれば何とかなるだろう!という大船に乗ったつもりでテーブルに着きました。

色恋営業に遭遇して面を食らう

「いただいてよろしいですか?」新人ホスト3人組がヘルプとして補助席に付きます。テーブルではアキトさんがアヤさんの肩に手を回し、イチャLoveトークに花を咲かせていました。

元ホストのユウヤさんは2人のトークを盛り上げつつ、絶妙のタイミングでツッコミを入れて笑いを取ります。元ボーイのカズヤさんはお酒を注ぎ、タバコに火をつけ、グラスの水滴を拭いてテーブルを綺麗に整えます。それぞれの個性を生かして黒子役に徹する姿は正にヘルプの鏡です。

一方、自分は・・・顔を引きつらせて必死に笑顔を作り、ひたすら笑う!これに徹しました。

アキト「はははっ、こいつ~!」
アヤ  「あ~ん、もうやだ~!」

イチャコラとまるで本物の恋人同士のような会話が目の前で繰り広げられます。僕は見よう見まねでお酒を作ったり灰皿を交換したり、テーブルマナーを習得しようと必死でした。そんななか、おしぼりでグラスの水滴を拭いていると、時折2人の会話が途切れる瞬間があります。

ふと、顔を見上げるとアキトさんとアヤさんが目の前でチューしているのです。それも、かなり濃い目のディープなやつです。他人のキスを目撃したのは初めてだったので衝撃を受けました。でも、これが不思議と全然エロくないんです。映画のワンシーンを見ているような綺麗な絵でした。

美男と美女が絡むとエロスも格好よく見えるものだと感心しました。『5分に1度会話が途切れる⇒顔を見上げる⇒2人のディープキス』この構図が1時間以上続きながら、ヘルプが酒を作るという光景は客観的に見れば異常です。でも、これがホストの色恋営業なんですね。きっと・・・。

 ~【噂のホストNo.1】 全エピソード・リンク集~
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