ホストクラブとは男性従業員が女性客の隣に座って接待をする飲食店。主役はあくまでもお客様である女性です。ホストは女性を良い気分にさせて喜ばせるのがお仕事です。「イケメン！色恋トーク！枕営業！自分の持つ武器を駆使して女性を満足させてみろ！」という成果主義の特殊な世界。そんなファンタジーワールドに迷い込んだ僕のホスト体験記を告白します。

ホストは女性を喜ばせるお仕事ですが、正確には女性を喜ばせて酒を飲ませるのが仕事です。どんなに女性を上機嫌にさせてもお酒を注文してくれなければ売上が伸びません。なので、ホストはお客様に高いお酒をオーダーしてもらうことを最大のテーマにしています。だからこそ、ホストは出されたお酒を全て飲み干す使命があるのです。

目の前の酒を飲み干して、次の酒をオーダーしてまた飲み干す。この繰り返しで売上を伸ばすのがホストの鉄則です。僕自身、ホストとしての欠陥がここにありました。『顔がなだぎ武、服がダサい、トークが下手』。これもマイナス要素ですが、最大の欠点は酒が飲めないことです。1滴も飲めないわけではないものの、水割り2杯で顔が青ざめて無口になってしまいます。

体験入店の3日間、ヘルプとして酒を飲まされる機会が多くありました。新人ホストに任されたヘルプの仕事には、先輩ホストの指名客がオーダーした酒を飲み干すという役割があります。「飲めば慣れる」という言葉がありますが、最初の3日間は酒に飲まれて地獄でした。

仕事が終わって自宅に帰ると、体の節々が痛んで風邪を引いたような状態に陥ります。水をがぶ飲みしてオシッコからアルコールを排出したり、ぬるい風呂に長時間入って汗からアルコールを搾り出したり、いろいろ試してもアルコールは完全に体から排出されません。ほとんど寝たきりの状態が3日間続きました。

ほとんど下戸に近い自分がホストになれたのは、ある秘策があったからです。それはアルコールを分解するサプリメントを大量に摂取していたことです。120粒入り4000円という価格でインターネットで販売されている代物でした。メジャーリーガーのドーピングみたいな感覚です。

その怪しいサプリメントを1回に4粒ほど摂取すれば、瓶ビール1本飲んでもほとんど酔いが回りません。開店前に4粒、閉店後に4粒飲むことで身体にかかる負担はかなり軽減されました。それでもシャンパンコールでイッキ飲みしたときは倒れそうになることもあります。そんなときはもう、アルコールを体から排出するしか手はありません・・・。

ヘルプでテーブルに着いたとき、接客が終わると「ごちそうさまでした！」と一礼してグラスの酒を飲み干します。普通なら直ぐ次のテーブルに着いてヘルプを続けるのが通例です。しかし、僕は次のテーブルをスルーしてトイレに直行していました。

洗面台の水道水をがぶ飲みすると、無理矢理オシッコからアルコールを排出します。小便が出ないときは、踏んばって大便からアルコールを排出するのです。そうやって1回ごとにトイレで排便してからテーブルに着くことで急場をやり過ごしていました。

先輩ホストのなかには、『ヘルプ⇒トイレで吐く⇒ヘルプ⇒トイレで吐く』を繰り返す人もいました。僕はその先輩ホストとトイレを奪い合っていたのです。汚い話ばかりでホストクラブに夢も希望もなくなってしまいますね。しかし、強引に酒を飲む行為は確実に体を壊します・・・。