『なでしこジャパン』の下の世代、『ヤングなでしこ』の存在を知っていますか？U-20代表と呼ばれている20歳以下の若い選手達です。2012年8月19日より、FIFA U-20ワールドカップが日本で開催されました。各選手はこの大会で自分の力をアピールし、ビッグクラブへの移籍やA代表への選出を目標にしています。今回はヤングなでしこの左サイドハーフ、仲田歩夢選手のプレーの魅力に迫ります！

【仲田歩夢】なかだ・あゆ

生年月日：1993年8月15日（19歳）
出身地：山梨県山梨市
身長・体重：161cm 55kg

在籍チーム：INAC神戸レオネッサ
ポジション：MF
背番号：13
利き足：左足

仲田歩夢は高校女子サッカーの名門である常盤木学園高校に入学。各年代別の代表にも選出され、日本が準優勝した2010年FIFA U-17女子ワールドカップでは6試合中5試合に出場しました。高校卒業後、なでしこリーグの『INAC神戸レオネッサ』に入団した女子サッカー界のエリートです。

U-20W杯で銅メダルを獲得して一躍全国区の人気となったヤングなでしこ。仲田は左サイドハーフのレギュラーメンバーとして期待されていましたが、初戦から調子が上がらず、2戦目で足を故障をしてベンチに退きました。それ以降は出番がなく、ベンチで歯がゆい表情を浮かべていたのが印象的です。 0-3で大敗した準決勝のドイツ戦では「ここに仲田が入れば！」という場面が何度もありました。

横山久美や西川明花などアタッキング能力に優れるプレーヤーが多い日本は、サイドから強引にドリブル突破をしかけては潰されるシーンが目立ちました。仲田歩夢が万全の状態であれば、左サイドから多彩なパスでゲームを組み立て、中盤でタメを作りながら創造的なコンビネーションでディフェンスを崩す場面も見られたでしょう。

仲田歩夢は攻撃の引き出しが多く、戦況に応じて最適なプレーを選択できます。この年代としてはフィジカルコンタクトが強いプレーヤーで、1対1では相手に体をぶつけながらボールを保持し、一瞬の切り返しで身体を入れ替えて相手を置き去りにします。激しいコンタクトプレーをいとわず、強さとスピードを備えたドリブルから緩急をつけたダイナミックなフェイントでサイドラインを突破します。

好機と見るとサイドからカットインして中央にドリブルで切れ込み、ディフェンスの裏に絶妙のスルーパスを送ります。左足のミドルシュートも強力で、ほとんど角度のない場所からでも狙える高いシュート精度を誇ります。左足のプレースキックも得意とし、コーナーキックやフリーキックから多くのアシストを決めています。

左足から繰り出されるクロスボールは正確無比で、ロングレンジからのアーリークロス、シュート性の速いグランダークロス、ファーポストにふわりと上げるロブボールなど、自在にキックを蹴り分けるクロッサーです。ビルドアップの能力も高く、鋭い縦パスとサイドチェンジでリズムに変化を与えます。ポスト宮間の一番手は田中陽子だと言われますが、田中と宮間の共通点は両足を自在に操るプレースキッカーであることです。

しかし、宮間の本職はサイドハーフであり、ボランチやトップ下を主戦場とする田中陽子とは特徴が異なります。むしろ、宮間に近いプレースタイルを持つ選手は仲田歩夢です。サイドからの正確なクロスボール、戦況を一変させるサイドチェンジ、一発のプレーでゲームを決めるキラーパス。宮間も仲田も突破力に優れるプレーヤーですが、本質的にはクロスやパスを武器にするパサータイプのゲームメーカーです。宮間あやの後継者として新しい世代の司令塔となる存在は仲田歩夢だと思います。

ポニーテールをなびかせて可憐にピッチを走り回る仲田歩夢。しかし、美麗な容姿とは裏腹にディフェンスでは激しいボディコンタクトをいとわないハードタックラーとして知られます。1対1のマークに独特の間合いを持ち、相手が仕掛けてきた瞬間に強烈なスライディングタックルでボールを弾き出します。ボールへの寄せが早く、球際に強いのも特徴です。左利きであるということから、近未来のなでしこジャパンでは左サイドバックやセントラルミッドフィルダーとして中盤の底からゲームメークも期待できます。

U-20では出場機会の少なかった仲田ですが、近い将来なでしこジャパンに召集されるのは間違いないでしょう。サイドハーフ、サイドバック、ボランチなど、左サイドのスペシャリストとして全てのポジションに大きな可能性を見せるスーパーレフティーです！