◆蒲田のベトナム料理屋「ミ・レイ」
沖縄行きの前日、「都民の台所・大田市場」のなかにあるホテルでチェックインを済ませ、夜になって再び蒲田へ繰り出す。今夜の目当てはベトナム料理「ミ・レイ」。ここを「東京で一番のベトナム料理店」に推す人がいるほどの人気店なので予約をしてある。JRの線路沿いを歩き、なまめかしいネオンがともる風俗店街に入ると、まもなく店に着いた。
ポップでかわいいイスやテーブルが並ぶ店内は店の周りの景色からは想像もできないが、いかにも繁盛している雰囲気がぷんぷんしている。とてもきちっとした対応の店員さんに案内されて、席に着いた。迷わずベトナムのビール、「333(バーバーバー)」を注文。さわやかなその味わいは、ミントやパクチーなどの香草を多用するベトナム料理と相性バツグン。
「エビの生春巻き」は、ヌクチャム(ヌックマム、水、レモン、酢、砂糖、ニンニク、唐辛子で作った、ベトナム料理を象徴する味の万能ダレ)ではなく、テンメンジャンに似た甘いみそベースのタレでいただく。生春巻きはよくウチでも作るが、「どうしてこんなに上手に巻けるんだろう」と、噛んだ断面をしげしげと見つめる夫婦は、「他店のスパイ」に見えたかもしれない。(食べ急ぐあまり写真がブレてます)
「青パパイヤのサラダ」がきた。甘みはなく、ドレッシングの味を素直に受け止める「野菜」としてとてもおいしい。食感も絶品。パクチーよりもむしろミントの方が多くかかっていて、食べ進むほどに食欲が湧く感じだ。この店、忙しいにも関わらず注文の品が来るのがとても速い。そして店員さんのサービスがとてもいい。
「ムール貝の網焼き」も運ばれてきた。焼いた後に、細かく砕いたナッツ、ニンニク、唐辛子の入った、やはりヌクチャムに近いソースがかかっている。香ばしいのにさわやか。いくらでも食べられそうだ。
「牛肉のレモングラス炒め」は、カレー粉がかかっていて、唐辛子もかなり効いている。あちらでは「肉じゃが」的な「家庭の味」なのだと思う。若い女性が「得意料理は?」と聞かれてとりあえずこの料理名を答えたりしそうだ。
「ベトナム風水餃子」は、餃子の皮でなく、春巻きの皮。それが茹でられているので食感は「ふるふる」。口の中で勝手に溶ける。関根勤が子どものころ初めてトロを食べた時、勝手にとろけていくことを「ずるいよ」と思ったそうだが、この水餃子もずるい(笑)。付け合わせの野菜と、さらにパクチーとともにいただく。また、上に乗っている「ベトナムソーセージ」がとても美味。単品でも注文してしまいたくなる。
仕上げに「牛のフォー」。これもウチで一時期よく作った。それに比べて「本物」はスープがとても上品。幅の広い麺の茹で具合もカンペキで、妻と交互に、均等な量を食べようとしてはいたのについついひとくち多めに頬張ってしまうほどのおいしさだった。
東京のベトナム料理店は結構入ってみたことがあるのだが、この「ミ・レイ」が一番おいしいと思う。何を注文しても文句なし。値段もごくごく普通。店員さんのサービスも充実。是非予約して大勢で行かれるとよいと思う。おいしゅうございました。
ベトナム料理は当然外国料理なのに、このお店は同時に「蒲田的」だと思った。独特の雰囲気が漂う街、蒲田。「田園調布」や「自由が丘」を擁する大田区にありながら、京浜東北線、東急、京急それぞれから違うにおいを運んできてさらに発酵しているような街。「ニイハオ」や「歓迎」の餃子もあるし。また行きたい。
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