2015年5月にSEALDs(シールズ:自由と民主主義のための学生緊急行動)を創設。政治に無関心な若者が多い中で、安保法制に反対する毎週金曜夜の国会前デモで一躍時代の寵児に。今月5月26日・27日渋谷にて「音楽×アート×社会をつなぐ都市型フェス」と銘打ったイベント「THE M/ALL」を開催する。これからの活動に賭ける想いをお聞きしました。
奥田 愛基(おくだ あき)
社会活動家。1992年、福岡県北九州市生まれ。2011年、明治学院大学国際学部に進学後、2013年、東日本大震災をテーマにした短編ドキュメンタリー「生きる312」で国際平和映像祭グランプリを受賞。同年12月、10代から20代の大学生を中心としたグループ「SASPL(サスプル:特定秘密保護法に反対する学生有志の会)を友人らと創設。その後2015年5月、SEALDs(シールズ:自由と民主主義のための学生緊急行動)を創設。同年夏、安全保障関連法案に反対する国会前抗議を毎週金曜日夜に主宰し、大きな注目を集める。2016年春、大学を卒業後、現在大学院修士課程に在籍。『変える』(河出書房新社)の他、共著に『民主主義ってなんだ?』など。
ジャンルを超えたカルチャーを創りたい。
――3年前の夏、安保法制強行採決に反対する国民10万人が押し寄せた国会前デモで一躍SEALDsの存在は注目されました。その後、解散を経て今月末に大きなイベントを渋谷で開催します。これはどんなねらいで企画されたのですか?
今回はデモとかとはちょっと違う発想で、その手前にあるカルチャーを基軸に考えています。音楽やファッション、マガジンなどを通して、楽しみながら、自分たちがどんな社会にいるのかもっと自覚的に居たいと思っています。欧米のアーティストやミュージシャンは歌や作品だけじゃなくて、社会に対して自由な発言をしてますよね。受け手も賛否ありつつ、そういう発言する人がいることを認めている。僕はヒップホップが好きですが、トランプ大統領就任後もっと如実にそれが表に出てきてると思います。アカデミー賞やグラミー賞の基準も、単純に作品が素晴らしかったからというだけでなく、社会の文脈が重要視されていますよね。音楽も映画もこの社会から切っても切れないものだし、商業主義的に分断されてるのは単純に面白くないなと思ってます。
――日本の音楽からは政治を批判するようなものってなかなかうまれませんよね。
まあ別に政府批判の音楽が良いってわけじゃないと思うんですが、いい音楽がポンとそこにあって、みんながいいねいいねといって、次の音楽を消費するのではカルチャーは生まれないんじゃないかと思ってます。ずっとオリコンチャートだけ聞いてるみたいな。これはアーティストのせいではなく、リスナーにも原因があると思う。今度のイベントでは音楽だけでなく30時間ぶっ通しのトークセッションもあります。ゲストは研究者、アーティスト、ライター、映像作家など、いろんな人に来てもらいます。政治も社会も恋も音楽も全部横断的に話していく場にします。
――大がかりなイベントになりそうですが、すべて仕切っているのは奥田さんですか?
いえ、僕だけではなくたくさんの人に関わってもらっています。僕が前に出なくてもいいのですが、宣伝を兼ねて誰か前に出ないとならないので、僕がこうして取材などには対応しています。中心的に動く人は必ず何人かいます。例えばブッキングやフライヤーなどのデザイン、服をつくったり。会計などそれぞれの役割で違う人が、それぞれのチームをまとめているという感じです。僕は自信があるのかないのかわからない。普段はへらへらしていて、やるか!という時に、じゃあやります…ってタイプです。基本ダメなやつなんで。
――今発表されているだけでも豪華アーティスト陣のラインナップで、このイベントを無料にするためにクラウドファンディングという仕掛けもされていますが。
お金がある人もない人も、どんな人でも無料で参加できるようにクラウドファンディングを実施しています。チケットを買うつもりだったひとは応援の気持ちを込めて、寄付をしていただければ幸いです。普通にやったら5000円以上しそうなラインナップですが、なんとか無料にしたいと思っています。今日現在でリアルなことをいうとあと300万ぐらい集めています。これを出てるときは無料になってたらいいな。(※注:目標金額4,500,000円に対して133%達成。597人の支援により6,019,000円の資金を集めて2018/04/29 23:59に募集を終了しました)
中学から親元離れ、自立心を叩き込まれる。
――ご著書「変える」も読ませていただきました。中学の途中で沖縄へ転校され、高校も島根の田舎の全寮制へ進学なさって。学校教育も素晴らしかったのでは?
学校が嫌だったから、自分の頭で考えて行動するようになりました。先生がしっかりしていたというより、その場所がよかった。カリスマ的な先生がいて、その人に影響を受けたわけでなく、どの先生にも言い返したし、基本的に生徒に考えを託してくれた。あと、親の存在はデカいです。中学でいじめがあって不登校になった時、父親とはやり合いましたし、母親にもほんとに酷いこと言って、まあ親めっちゃ嫌でしたね。
――お父様のような怖い存在は大切ですね。どうやってそこを乗り越えました?今はもちろん応援してくださって仲の良い関係でいらっしゃいますけれど。
怖い存在っていうか、なんていうか、近いからこそ許せないんですよ。言ってくることの全てがいちいちムカつくというか。不登校になって、最初は両親とも僕を学校へ行かせようとしていたのですが、そのうち諦めましたが、このままではいけないという感じで。でも、その時手放してくれたことがよかったのかもしれません。僕が沖縄の学校へ転校を決めて家を出たとき、母は泣いていたし。その時はなんで泣いているのかな?とわからなかったのが、離れてみてわかるようになった。親もひとりの人間なんだ、と思うようになりました。
――自立したからこそ距離をもって親を見つめることができたのですね。
父親は、中高時代に勉強もスポーツもできる優等生ぽかったし、でも息子は勉強もスポーツもできないし、いじめられている(笑)。父は牧師として、家も失い、家族もいないホームレスの方の支援をずっとしていた。なのに、自分の息子は「家族嫌だ」と言ってくるみたいな。家族に「マザー・テレサ」がいると困るものですよ。今も父は支援活動続けていて、3000人を超えるひとが自立して暮らしてます。NPO起ち上げて100人くらいメンバーもいる大所帯なので大変みたいです。
――北九州で過ごした小学生時代は、どんな子でしたか?習い事はしていました?
自然が豊かな場所でしたから、魚や虫を捕って遊んでいました。習い事は、教会に大きなピアノがあってピアノ教室として開放して近所の子たちも習いに来ていました。僕も小学3年生から6年生まで続けましたが嫌でやめました。女の子と一緒にやっているのが恥ずかしくなったし。水泳、英会話、学習塾などいろいろやらせてもらいましたが、やってみてはすぐやめていました。ほとんど何かに役に立っている気はしませんが、鍵盤の音をきいてなんとなく何の音かは分かるかな、だからなんだって感じですけど。それと、中学で学校へ行かなくなっても、小学校で英会話をやっていたおかげで、蓄積があった分なんとかついていけました。
イメージを崩し、新しいアイデアで変えていく。
――SEALDsとして活動をされてきてうれしいこと大変なことどちらもあったと思いますが、それはどんなことですか?
考え方の違いを知り、やることやっていると認められるのはうれしい。僕にとってデモはあんまりおもしろくないもので、年齢層高い人がゼッケンして旗持って…というイメージでした。そういう先入観をどうやって崩すか、かっこよく見せる方法はいっぱいあると思う。フライヤーとか、動画のCMを作り。デモだけじゃなくて、なんにおいてもそうですが普通ここまでやらないよね~ってことを考えている時が一番楽しいです。
――そこは広告的なセンスが問われますね。新しい視点、距離感でどう伝えたら伝わるか?みたいなことを考える仕事なので。新しいデモ、いいですね。
プラットホームとしてのデモのおもしろさはありますね。昔はネットがなかったけれど、今はSNSを利用してデモに参加している人がそれぞれTwitterやFacebookなどでデモをしながら投稿して様子をあげていく。多くの人が参加できて、口コミで広げられるし、マスメディアにも拡散できる。記者会見よりもデモは拡散力が違う。デモって反対派だけが集まっているように見えますが、いろんな人がいていいと思う。参加する敷居を下げたいです。
――今はReDEMOSという団体の代表ですが、今後はどんな展開を考えていますか?
アイデアを考えている段階ですが、映像の仕事をしていた経験をいかしてメディアをやっていく道もあるかなと。例えば対談の録画ってあまり振り返って観ませんよね。対談を3カメで撮ってリアルタイムでSNSと連携して画質もよくかっこいいメディアとしてできたらおもしろい。ライブでやっているのが大切。今の瞬間を、もっと早く同時多発的に起こしていきたい。録画したのだと、もう終わったことでしょ?って感じなので。
それと、実家のドキュメンタリーを撮ろうと思っています。ショートドキュメンタリーで20~30分の作品を今夏には出したいと思っています。
――新しいアイデアがもっといっぱい出てきそうですね。では子どもを育てる大人へ、習い事選びのヒントになるメッセージをお願いします。
幼い頃、パソコンとか教えてくれる大人が周りにたくさんいたので、当時の小中学生にしてはパソコンでいろいろできた。今考えるとそれも習い事だったように思います。周りに何かしら教えてくれる人がいて、つい1年前はDJを教えてくれる人が現れて、最近DJもやっています。習い事って決まったカテゴリーの中で習わないといけないものではないと思います。これおもしろい、これ習いたい、というものに出会ってほしい。やらされると嫌になってキライになってしまいますから。興味がある、楽しいと思えることを。僕もやりたいこと、まだまだいっぱいあります。
編集後記
――ありがとうございました!メディアで拝見はしていたもののリアルでお会いする奥田さんは今っぽくて物腰の柔らかな若者。バブルが弾けてからうまれた祝福されない世代…と著書にありましたが、私も社会人になったのが同じ頃。世代は離れていても共感する言葉がたくさんでした。「ケンドリック・ラマーとボブ・ディランが今年のフジロックに出演するのがすごく楽しみ!」と語る音楽好き。いじめという壮絶な体験があったからこそ、強く優しくポジティブなパワーをたくさん発して人を惹きつけているのだと思います。まだまだこれからたくさんの花を咲かせてくれそうです。応援しています!
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