おお、うまそうなじゃじゃ麺。できたてほやほやで湯気も立ってます。
じゃじゃ麺はうどん風(だけどうどんとは違う)オリジナル麺をゆでて、特製の肉味噌やキュウリ、香味野菜をまぜまぜして食べる麺。盛岡市発祥で「岩手三大麺」のひとつに数えられてます(あと2つはわんこ蕎麦と冷麺)。
さあ、さっそくまぜまぜしましょう。
「下の方からかき混ぜて、肉味噌をしっかり麺に絡ませるのがコツだよ」とのマスターのアドバイスに従って、徹底的にまぜまぜします。
肉味噌の香ばしい匂いが店内を満たしていきます。仙台味噌をベースに肉はもちろん、黒ごまやクルミなどを合えた味噌なのだとか。どうりで香しいわけです。
じゃじゃ麺と言えば岩手の名物料理ですが、今日、これを頂いたのは岩手にあらず、福島県はいわき市、夜明け市場の「じゃじゃ馬」さん。いわてとは一文字違いのいわきですが、何百キロも離れています。福島県でじゃじゃ麺を食べられるのは、じゃじゃ馬さんの他にはもう一軒しかないのだとか。
じゃじゃ馬さんも元々は岩手出身の方が出したお店だったそうですが、昨年3月から福島県広野町出身の現在のマスターが営業を引き継がれています。
「本場のじゃじゃ麺屋さんに行くと、酢やニンニクや辛味噌なんかを自分で味付けして下さいってことになっている。それはそれで楽しいんだろうけど、じゃじゃ麺文化がなかったいわきでは、テーブルにお出しした時点で味が完成していなければと思ってね、たとえば酢。じゃじゃ麺の味を引き立てる大切な調味料なんだけど、お客さんの様子を見ているとちょっとしか掛けない。本当はね、ぐるぐるっと三周くらい回し掛けないとじゃじゃ麺の味にならないんですよね」
だから現・じゃじゃ馬さんでは、出されたそのままを食べても美味しいように味付けしてからお客さんにお出ししているのだとか。その他諸々、本場では考えられない工夫がこらされていて、たとえばマヨネーズを掛けるとか、御法度と言えそうなことまで。
「肉味噌の味に酢で酸味が加わっているから、マヨネーズが意外と合うんだよね。いわきにはマヨネーズ文化があるから試しにやってみたらこれが受けたんです。驚いたのが大阪から来たお客さんに大好評。ぜひ大阪に支店をなんて言われています」
たしかに、マヨネーズをちょっと混ぜてみると、東北の味が大阪風に一変。驚きです。
じゃじゃ麺と言えばもちろんチータンタンは欠かせません。じゃじゃ麺を少し残しておいて、テーブル備え付けの生卵を落として、またまぜまぜ。(居酒屋のテーブルに生卵がそのまま置かれているのは、盛岡のお店と同様ながらかなりのインパクトです)
卵を割ると手が汚れますよね。ちゃんとティッシュが用意されています。それもテーブルの上ではなく頭上に。カウンター席だけの店内を有効利用する工夫です。こんなところにもちょっと感動!
じゃじゃ麺の卵スープ、美味しいチータンタンを召し上がれ。
岩手の三大麺のひとつじゃじゃ麺は、いわば伝統の食べ物。だけど、その土地土地で地元の人たちに受け入れてもらえるようにアレンジしていく。伝統は守らなければならないものだけど、人々に愛されなければ存続できない。さて、どちらを取るか。ではなくて、受け継いでいくことで少しずつ変化していく――。そんなちょっと哲学的なことまで考えさせてくれる、いわきじゃじゃ馬さんのじゃじゃ麺なのでした。岩手のじゃじゃ麺といわきのじゃじゃ麺、食べ比べる機会があればぜひどうぞ。
じゃじゃ馬さんは夜明け市場の中にあります。表には暖房完備のバルコニー席もあるのでグループで出掛けてもわいわい楽しめますよ。
じゃじゃ馬(夜明け市場内)
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