ありがとう、松谷みよ子さん。ご冥福をお祈りします

iRyota25

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児童文学作家の松谷みよ子さんが2月28日、老衰のため逝去されていたというニュースが流れた。

児童文学創作シリーズ 『ちいさいモモちゃん』 著者:松谷みよ子 発行年月日:1964/07/15
児童文学創作シリーズ 『ちいさいモモちゃん』 著者:松谷みよ子 発行年月日:1964/07/15

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 <訃報>松谷みよ子さん89歳=児童文学作家 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース
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松谷さんといえば「ちいさいモモちゃん」。うちの母が姉に読ませたかったのかな、傘を差したお人形の写真がカバーに使われた単行本が、ずっと子供の頃の本棚にあったのを思い出す。その後も、小学校の推薦図書なんかで全国の民話を集めた本に、監修者としてその名を見る事も多くて、こどものための物語をしっかりより集めて下さる方なのだと思ってきた。そんな松谷さんが亡くなられていたという。

毎日新聞が生前の松谷さんのインタビュー記事を掲載していた。つい昨年のことだ。

 松谷さんには行きたい場所がある。それは宮城県の女川だ。

 若い頃、民話を採集するため、全国のお年寄りを訪ねて旅をした。「もう、どこへでも1人で行ったのよ」。車も通れない山道を歩き、橋が落ちていれば4キロ離れた別の橋を渡り、撃たれたばかりのイノシシと一緒にトラックに揺られたこともある。旅の途中、女川で岩崎としゑさんという女性に出会った。「むかす、むかす(昔)」で始まる民話とともに、実際に経験した津波の怖さを語ってもらった。現代の物語は今を生きる人々の「民話」なのだと気づき、その出会いが「現代民話考」全12巻などの著作につながった。

 東日本大震災の後、女川へ行きたい思いは募る。しかしこの数年間、体調を崩しては入退院を繰り返しているため、まだ行けていない。

人生は夕方から楽しくなる:児童文学作家・松谷みよ子さん | 毎日新聞 2014年08月22日 東京夕刊

今年のはじめ頃、古本屋で松谷さんの文庫本を久しぶりに買った。「モモちゃんとアカネちゃん」。小学校に入学するモモちゃんにアカネちゃんという妹ができて…という話だのだけれど、物語のもうひとつのテーマはパパとママの「りこん」だ。

苦しみや不安が暗い森の中の恐ろしげな木々のように、あるいは靴だけが帰ってくるという象徴的な言葉で描かれる。正直なところ、これを小さな子供たちに読ませていいのだろうかとすら思うような場面もあった。でも、違うんだと思うようになった。時間はしばらくかかったけれど。

人はみんな、それぞれひとつだけしか命を持っていない。ひとつだけしかない命をいかす為には、時として辛い決断や別れもまた必要だという事が描かれていたのだと思う。小さな子供のうちだからこそ、人生にはいろいろなことがあることを知っておいてほしい。弱っちい偽物じゃない愛情が描かれた代表作なのではないかと思う。

そんな矢先のご逝去の知らせ。一度でもいいから会いたいと願っていた方がまたひとり亡くなられた。

彼女が女川に行きたいと願っていたということを知って、思いがさらに募る。

「むかす、むかす」で始まる昔語り。女川の人たちの間で伝えられてきたお話は、宝物として伝えて行かなければならないと思う。今回の津波でさらに思いを深くされたであろう、町の語り部たちの言葉をさらにもっと先までつなげていくために。

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