東京電力「吉田調書」を読む(3)外のことは分かりません

iRyota25

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○質問者 それで、5時46分の時点では、これは、圧力が書いていないですけれども、パラメーターではね、このとき淡水注入開始とあるんですけれども、水がこれは入って。

○回答者 これは、非常に我々もそこをどいういふうに判断するのか難しくて、水が本当に入っているかどうかなんですけれども、要するに、もう流れているかどうかくらいしかないです。流量計もないもないですから、ホースのところを持ってですね、水が流れているかと、流れているということぐらいで入っているという判断しかないんです。さっき言ったように、圧力バランスの話ですから、チェッキ弁でこっちの押し込む圧力と向うの圧力の差分ですから、流量計も何もないところ、何か流れているよということで。

○質問者 脈動するというか、流れているような気がすると。

○回答者 そんな感じなんですよ。何の景気もないので、手探り状態です。あとは、水が減っているということしか確認できていない。

吉田調書 2011年7月22日 48ページ

チェッキ弁、チェック弁とは逆止弁のこと。圧力次第で一方通行で開閉する。それにしても、この時点で最後に残された注水の手段だったが、しっかり炉心まで水が入っているのかを確認するすべもないという現実。

東京電力の取締役で、発電所の責任者である吉田所長をして「手探り状態」といわしめる、この原発施設の現実は重たい。

原発の外、近隣住民の動向は「わからない」

今回の部分を締めくくるにあたって、もうひとつ「わからない」と吉田所長が発言した内容を伝えなければならない。

○質問者 それから、この時系列に沿っていきますと、その後、ベントの話がずっと続いて行っているんですが、ここに、6時33分のところで、地域の避難状況として、大熊町から都路方面に移動を検討中であることを確認とあるんですけれども、こういった地域の方々の避難状況がどうなのかということについては、これは、情報としては、こちらのプラント内、これは本部の方に入ってくるんですか。

○回答者 これは、本店から。

(中略)

○質問者 いろいろと向うの自治体との間での、今、こちらはどういう状況で、自治体の方はどういう状況でというところで、お互いに連携を取らなければいけないと思うんですが、それはオフサイトセンターなんかで取られているんですか。

○回答者 基本的にはオフサイトセンターです。それが取られていたかどうかは、私はわかりません。一義的にやるのがオフサイトセンターになっているはずですから、原災法上はですね。

吉田調書 2011年7月22日 49ページ

事故対応で大変だったのだろう。しかし、放射能が漏れないようにすることが事故対応の最大の目的である以上、原発内部で進む緊迫した状況が、免震重要棟の緊急対策本部から数キロ外側の住民にどのように知らされているのかわからない、また、住民の動向がどうであるかといった情報を、事故対応する上で取ろうとした気配がまったくないのがどういうことなのか、まったく理解できない。

質問者は、ここで深追いしようとせず、質問を畳もうとする。

○質問者 では、ここは余り。

○回答者 外の話は、私全然わかりません。結果として、こういう状況ですということが入ってきているのが、本店を通じて入ってきているということしかないんです。

吉田調書 2011年7月22日 49ページ

もう結構ですと質問を終わろうとする質問者に、吉田所長は「外の話は、私全然わかりません」と当然のことのように言う。

東京電力には、事故は絶対起こさない、万一事故が起きた時には被害を最小限に食い止めるという思想があったはずだ。当然膨大なマニュアルもあっただろう。訓練だってもちろんだ。しかし、なぜ事故を起こしてはならないのかという根本的な理念があったのかどうか、疑問に思わざるを得ない。

(つづく)
次回は、事故直後から報道などで大きく扱われてきた、菅総理の原発入りの箇所を読み進めます。

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