AREVA除去装置、廃止へ。稼働はわずか3カ月

iRyota25

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東京電力は8月11日、フランスAREVA社の除去装置を廃止すると発表した。この装置は原子炉やタービン建屋に溜まる高濃度滞留水からのセシウム除去の目的で導入されたもの。

除染装置
除染装置

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薬剤タンク
薬剤タンク

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 AREVA除染装置の廃止計画について
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事故原発での汚染水処理は、大まかに次のような流れで行われている。

原子炉の冷却のために注水した水や地下水が、破損した原子炉や建屋からタービン建屋に溜まる(高濃度滞留水)

⇒高濃度滞留水はタービン建屋から廃棄物集中処理施設に送られ、おもにセシウムが除去される

⇒セシウムが取り除かれた水はRO逆浸透膜浄水装置(東レの浄水器トレビーノと同様の仕組み)や蒸発濃縮装置で、放射性物質が濃縮された汚染水と、真水に近い水に分けられる。真水に近い水は原子炉の冷却に回される。濃縮された汚染水は構内のタンクに溜められ、多核種除去設備ALPSで処理が続行される。

AREVA除去装置は、高濃度滞留水を処理する最初の工程、セシウム除去に使われる装置のひとつだった。

独特の処理方法

廃棄物集中処理施設のセシウム処理施設の配置(Google Mapに加筆)
廃棄物集中処理施設のセシウム処理施設の配置(Google Mapに加筆)

セシウム除去に使われる装置はAREVA除去装置だけではない(というか、AREVA除去装置はほとんど稼働していない)。汚染水処理が始まった当初、AREVA除去装置とセットで導入された米キュリオン社のセシウム吸着装置(2011年6月17日運転開始)、2カ月遅れで導入された東芝の第二セシウム吸着装置(サリー:2011年8月18日運転開始)と合計3系統がある。

現在はサリーとキュリオンのいずれかを運転し、運転していない方はメンテナンスを行うといった稼働状況。

AREVA除去装置はというと、2011年9月15日に停止して以来、ずっと「待機」状態だった。稼働したのは、なんと3カ月のみ。東京電力のホームページによると、処理能力は高いということなのだが…。

除染装置(アレバ社)

汚染水に薬剤を注入し混ぜて、セシウムなどの放射性物質を沈殿させ、浄化された上部の水を取り出す。処理能力は高いが、沈殿した汚染物質(廃スラッジ)が発生するため、現在は運用を停止し待機の状態。

除染装置(アレバ社)|東京電力

東京電力「AREVA除染装置の廃止計画について」より

東京電力「AREVA除染装置の廃止計画について」より

サリーやキュリオンは、多孔質のゼオライトという鉱物にセシウムなどを吸着させて濾過する仕組み。これに対してアレバは汚染水中の放射性物質を薬によって吸着凝集・沈殿させて取り除く方式だ。沈殿させた放射性物質を取り除くため装置が複雑になり、稼働直後からポンプなどの故障が多発していたという。

サリーやキュリオンで一次浄化、逆浸透膜で真水に近い水と高濃度汚染水に分けて、多核種除去設備ALPSで放射性物質の多くを除去しようという流れができつつある現在、故障が多いアレバを維持し続ける意味はないという話になったということか。

AREVA除去装置の稼働実績は「累積処理量:約7.6万m3」。処理によって発生した廃棄物(沈殿物)は「597m3」だったという。

それにしても稼働3カ月は短すぎる

東京電力は、アレバの待機状態を維持する上で作業員の被ばくが大きいこと(雰囲気線量:10~100mSv/h程度)をあげているが、アレバの装置からの線量が高いのか、元々線量が高かった場所に設置したからなのかは不明だ。

さらに、NHKや時事通信によると東京電力はこの装置にかかった費用を明かしていないという。電力会社特有の総括原価方式(かかった費用に一定割合の利益率を掛けて電気料金を決める方式)により、3カ月しか動かなかったアレバ装置の費用が、電気料金に転嫁された可能性もある。

世界最大級の原子力複合企業であるアレバ社は、株式の大半をフランス政府がもつ実質的な国策企業。原発事故直後の2011年3月31日、急遽予定を変更して訪問先の南京から来日した当時のサルコジ仏大統領「閣下」のトップセールスにより、日本の国民はずいぶん高い買い物をさせられたことになる。

 外務省: フランス共和国大統領ニコラ・サルコジ閣下の来日
www.mofa.go.jp  
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文●井上良太

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