美しい雲が印象的な写真なのだが、この空の下にはさまざまな困難がある。
汚染水移送の操作ミスのみならず、タンクの腐食による高濃度汚染水の漏洩などのトラブルが続発してきたフランタンク。原発構内で進められている解体作業のうち、H1東エリアでの解体が終了したと東京電力は発表した。今後はより安全性の高いタンクへのリプレースなどが進められると考えられる。
フランジタンク振り返り
解体された現状からは想像がつかないので、設置されていた頃の写真で見てみよう。
鉄板を輪にしてボルトで止めた円筒を積み重ねて設置されていた。溶接されているわけではない継ぎ目からの漏洩が相次いだ。
膨大な数のタンクを設置する場所を確保するためには、原発建屋周辺ではとうてい足りなかったため、高濃度汚染水を貯蔵するタンク群は、敷地内でも標高が高い場所に設置されていた。(多核種除去設備ALPSが高台にあるのも理由のひとつだろう)
敷地の高い場所で漏洩が発生するとどうなるか。当然、漏れだした高濃度汚染水が地中に浸透して地下水を汚染する恐れがある。フランジタンクからの漏洩事故は、事故原発の地下水処理を複雑かつ困難なものにしてきた。
2013年9月に同種のフランジタンクである、H4エリアNo.5タンクで内部検査が行われた。その時の調査写真を引用する。
想像以上に酷い状況だった。これらのタンクには原子炉建屋で汚染された水からセシウムなどをある程度取り除いた上で、濃度を約2倍に濃縮した汚染水などが貯えられていた。濃度2倍ということは、ストロンチウム-90などのベータ核種が2倍。そして汚染水処理の初期に大量に含まれていた津波による塩分も2倍だったということ。
ボルトは錆で膨張し、継ぎ目部分が緩み、パッキングは変質して飛び出す――。
漏れ出した高濃度汚染水は側溝などを通って海へ流出したものもある。漏洩対策としてタンク周辺に二重の堰も設置されたが、それでも漏洩は発生した。
タンク下のコンクリート盤を除染しても、雨が降るたびに堰の中の雨水の放射能濃度が上昇する。原因は、タンク下の除染できない部分に溜まった汚染物質が雨に溶け出すことらしい。もはや空からの雨水すら汚染水を増やす原因となっている。
2年ほどでこんな状況になるタンクに頼らざるを得なかったとは。一旦発生してしまうとあらゆる困難が待ち受けているわけだ。改めて原発事故の底知れぬ恐ろしさを思い知らされる気がする。
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