銀河鉄道の夜と銀座の夜

iRyota25

公開:

3 なるほど
1,912 VIEW
2 コメント

息子へ。東北からの手紙(2014年7月5日)

6月半ばの夜以来、ほぼ連夜参加している人もいるらしい。父さんは今年2回さ。伊豆から電車に乗って東京の銀座へ。新幹線が発達したこんにちでは、仙台あたりの人が東京に来るのと大して変わらないくらいの、ちょっとした小旅行。

だけど、会社の終業時間が過ぎるやいなや飛び出して、近くて遠い銀座に行くのには、それだけの意味があるのさ。

東京や品川の駅で、そしてかつての省線の電車内の強烈な人々の数に圧倒され、おら東京はイヤだと感じながらも銀座に行くのには、それだけの意味があるのさ。

父さん自身、あんましよく分かってないその理由の一端を、「鷺のお菓子をチョコレートみたいにはぎ取るように」少しだけ、書いてみようかな。

銀座に東北がやってきた

最初に参加したのは7月5日の土曜日だった。復興バーは石巻の海の近くで、津波の時には大きな浸水被害を受けた店舗を、ボランティアの人たちが手作りで復旧して、石巻の街の夜の交流の場所として再出発した場所。ほぼカウンターだけの小さくて、いかにもバーって感じの店なんだ。そのお店で、いつの頃からだったけ、「●●さんナイト」っていう、石巻にゆかりのある人に、その晩のバーをまるごとお任せするイベントが始まって、それがなかなか好評でね。

石巻の夏祭り「川開き」への呼び込みという意味もあって、そんな復興バーを銀座で出張開店する「復興バー銀座」は去年から始まった。今年は「●●さんナイト」のシステムで、毎日日替わりでいろいろな人たちがマスター&ママさんとしてお店を切り盛りしている。

で、7月5日はというと笑顔プロジェクトの日。そして、どういう経緯なのかは分からないけれど、大船渡の新沼さんたちが始めた311Karats。も相乗りすることになって、東北から新沼さんがやってきた。それじゃあと言ったかどうか分からないけれど、南三陸で長須賀ビーチ再生をやってる勝又さんも「行く行く」ってことになって、彼らの知人友人含めてたいへんな人数が銀座に集結することになった。

とにかくたいへんな人出。今年の復興バー銀座は、銀座の中央通りから1本西側の一等地で、1階が受付&飲食スペース、地下がキッチン&飲食・歓談スペースに振り分けられていたんだけれど、文字通り「立錐の余地なし」の状態。「朝の小田急線か田園都市線の電車の中で飲んでるみたいな感じ」とぎゅうぎゅう詰めの店内で隣り合わせた人が話していたけど、まさにまさに。とにかく、あれだけの人数がよくもこのスペースにって感じだった。第三者的な目で見れば、そんな中でも頑張って飲み食いして、お喋りしている我々もすごいと思うけどね。

なんでそうまでして飲んでるんだろう。きっとその場に居合わせた全員が考えたことだろう。そして全員が同じ答えを導き出して、それぞれ「うん!」と納得して、満員電車状態の店内で東北のおいしいお酒を飲み、隣近所の人たちと話し合っていたのだろう。だって、新沼さんと話したいし、カッツンとガツッと握手したいもん。なんだろう、単純に言うならそんな感じ。大切な人たちと会って自分の立ち位置を再確認したいって感じ。満員電車の中で酒飲んでる人たちは、みんな純粋だったのさ。

復興バーを始めたのは石巻2.0の人たちだ。その代表である松村さんに何度か話したことがある。石巻は外からたくさんの人たちがやってきて、震災の前のように復旧するんじゃなくて、それよりもっと面白いまちに作りかえるんだってことで様々な活動が進められている。バーだけじゃ喰ってね。

震災による被害も大きかったけど、はっきりいってトップランナーだ。だから、そのノウハウとか人材とかを他の町と共有したり横展開したらどうだろう? 父さんだけじゃなく、そんな風にいう人は少なくなかったらしい。

でも松村さんはそんな話にはあまり乗り気じゃない感じだった。自分たちは石巻の団体として、この町に関わっていく。当面はそれが大切なことだと。

それもそうだなと思っていた。まずは自分の町を。当然だ。

グラスがつないでいく銀河の道

じゃあ、手をつなげていくための手助けを自分はできるのではないか。それが自分の仕事なんじゃないか、と思うようにもなっていた。それぞれの地元で頑張っている人たちを横に連携してもらうような何か。そういうことをやっていきたいと思っていた。

それがまさに、ここにあった。

復興バー銀座に。

この日は石巻2.0関係の人はほとんどいなくて、笑顔プロジェクトとカラッツの関係者でお店が満杯だったんだけど、災害緊急支援活動のために立ち上げられたカラッツの男臭い人たちと、都会の匂いがする(ってカラッツのみなさんゴメンなさい)笑顔プロジェクトの人たちがごちゃまぜになってつながって行っていた。

活動の内容とか考え方とか、みんな違っている。東北出身の人もいれば、ボランティアとして東北に入って行っている人たちもいる。それぞれ違っている人たちが、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車のような場所で乾杯し、笑い合い、握手する。

「被災地の横連携」なんてまるでお役所のプロジェクトみたいなもんじゃなくて、こうやって人と人はつながっていくんだなっていう、すんごく素敵な場所があの日の銀座にあったんだ。

このつながりが、これから東北の夏の青空の下で広がっていく。

ビルの谷間の東京の空と、東北の銀河の夜空はちゃんとつながっているんだ。

(たぶん、大幅に加筆・改筆して再アップしますので時々ご覧ください)

写真と文●井上良太

最終更新:

コメント(2

あなたもコメントしてみませんか?

すでにアカウントをお持ちの方はログイン

  • O

    onagawa986

    東北から遠~いザギンで(笑)
    東北つながりの人たちが
    東北についてあつく語り合い
    東北の酒
    東北の食を堪能してる
    なんともおもしろくて不思議な空間
    あ~あ、私も東北人なんだけど
    いぎで~な~(笑)

    • I

      iRyota25

      銀座も銀座、資生堂のすぐ近くのど真ん中で、あんな風にみなさんとお会いできるとは!
      たのしかったですよ♪ だけどやっぱり現地が一番! あの日以来、ココロここに在らずで大変です。