梅雨空が晴れたら♪ 6月の伊豆は夏のよそおい「熱海!」

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お店の軒先に吊るされたイカの干物がまるでオブジェみたいだったり、アーケードの先にびっくりするような老舗の佇まいが飛び出してきたり、その隣の道は車の背中が見えるくらいの急斜面の坂道だったり……。熱海、すごい!

熱海の新名物、自家製「からすみ」

観光名所からちょっと離れた道を歩きつつ、突然、「あれ、これは?」ってのに出会えるのも古くからの観光地だった熱海ならでは。

とあるお店の入口付近に設えられていた踏み段と柱。これ、昭和30年代に一世を風靡した「人工大理石」という素材を使って建造されたもの。輝く小さな貴石(宝石を含んだ原石の破片のようなもの)をモルタル(セメントと砂を混ぜた接着剤)に空隙がないように丁寧に練り込んで、左官職人さんたちが丹念に形にした物をさらに表面研磨して作り上げて作り上げられたものだ。

単純な話、大理石の偽物なんだけど、そこに傾注された技術とか手間とかはハンパないんだ。都会でも人工大理石はデパート等でたくさん使われていたけれど、いまでは減る一方だ。無造作に出会えるのは熱海がまだ「熱海」だからなのかもしれない。

そんな熱海の町なみ、なくなっていくものばかりかといったら、全然そんなことない!坂道をさらに少し上って行った先の珍味問屋「くり原」さんで、こんな珍味に出会うことになる!

地物の干物とか、材料を輸入した物でもエイヒレとか絶品の干物をたくさん扱っている店で、個人的には欠かせない立ち寄りどころだったのだけれども、今回はずっと気になり続けていた「自家製・カラスミ」をゲット。

カラスミというのは魚(ボラ)の卵巣を丁寧な処理を繰り返して製造される、原材料こそ天然ながら、ほとんど工芸品と言ってもいいほどの食品。世界三大珍味に入選しなかったのは、極東の島国のごく一部でしか作られず、生産量そのものがあまりにも少なかったから。

キャビア、フォアグラ、トリュフと並べたって、美味しいお酒の宛として勝ることはあっても負けることなどありえないほどの珍味。その珍味・カラスミが、本来なら一本あたり数万円のところを、スライスした状態で1000円ほどで楽しませてもらえるのである。お店のご主人の心意気とか、ほんとうに美味しい物をたくさんの人に知ってもらいたい心ばせとか、いろいろ感じて、スライスからすみのパッケージを見ただけで涙が出ちゃう。

スライスされてて廉価だから、ホテルの一室で軽く一杯って時のおつまみにもぴったりだろう。おそらくどんなにお金持ちの人だって、ほんとうに上物のカラスミをふんだんに食べるなんて機会はまずありえないだろうから、いいものをちょっとだけ試してもらうというこのパッケージには、PRとの機能も込められている。

といって、誰からかまわず買ってもらえさえすればいいなんてもんじゃない、「ウチの味をお気に召していただけたら」とのパンチが、商品の中にしっかりと込められているのだ。

ワシはまた買いにいきますよ。「自家製」と唱っているのに、「台湾産?」なんて尋ねるくらいトンチンカンなお客だったけど、美味しかったもん。

カラスミとくれば日本酒でござろう!

くり原さんんで、カラスミだから酒びたしにして食べなきゃね? なんて知ったかぶりしたら、「いえいえ、うちのカラスミはそのまま頂いてもらって大丈夫なのよ。ワインにでも合うくらいだから」と嗜められたにも関わらず、お店を出るなり頭の中は「カラスミと来たら日本酒でしょ」と目もギラギラ。

しばらく歩いてもうすぐ駅前から続くアーケードの商店街も間近という場所で、一件の酒屋さんを発見した。

画像検索で「酒屋」と入力すると出てくるような(逆に出てこないかもしれないが)、まさにニッポンの酒屋さんなのである。

ずらりと店内に並ぶ地酒の数々。その中に、伊豆に越して7年の自分にとっても見たことがない一本があった。日本酒「あたみ」!

熱海で酒が造られているなんて聞いたことない。で、酒屋の店番の若いおねえさんに尋ねていると、奥から女将さんがやってきて、「熱海はね、昔はいいお酒が造られていたの。でもいまは酒造屋さんがないから、昔ながらの熱海のお米と熱海の水を使って駿東(静岡県東部)の酒蔵で造ってもらうようにして復活したのが「あたみ」ってお酒なのよ」と教えてくれた。

もうこうなれば、この「あたみ」を呑まない訳にはいかないだろう。もちろん宛はカラスミで。なんて話を女将さんにすると、いやでもまあ、宛は何でもいいのよ、なんて優しいお言葉ながら、ゆるぎなきものが感じられるお言葉。

一升瓶で買わなきゃね、っていうと、「いいの。まず小瓶でのんでからにして」なんてところからして自信満々なのだが、じゃあ大瓶でって言っても譲らない。

女将かっけー、と心の中で喝采しながら五合瓶を一本買わせてもらった。写真撮らせてっていったって、お店の写真ならいいけど私はダメ。じゃあお店の看板が映るところで女将さんが瓶を持ってるとこを。それならいいけど。なんていいながら、最後の最後、女将さんの笑顔と一緒にってことで一枚撮らせてもらった。

すごく貴重な一枚なんだよ。

美人の女将さんが、ちょっと照れながらキュートに収まった最後の一枚。これって、最高の旅の思い出だよね。帰宅後、友人を招いていただいた「あたみ」。絶品だった。今度は連れてけってみんなに言われた。それだよね♪

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