FBがゴールデンイーグルスのえんじ色に染まった。
おめでとう!
楽天イーグルス!
おめでとう!盛り上がりのその前に
さかのぼること1時間ほど。
早めに仕事を終えて帰りたかったんだけど、遅くなった。
帰りの電車でFBを見たら、獅子舞保存会の遠藤さんがパブリックビューイングでクリネックススタジアムに来ているとのこと。
即、コメント。手が先に動くってこういうことか。
自分は九州の出やから生粋のLionsなんやけど、
今年は天下をとってほしい。もちろん楽天に!
応援頑張って下さい。
いいゲームになりますように!
駅から自転車飛ばして家に帰って、テレビをつけたら、
NHKの9時のニュースは冒頭から「楽天優勝ネタ」を引っ張ってた。
そろそろ決まっていると踏んでいたのに、意外やその時点ではまだ7回か8回。
終盤になって楽天が逆転したということろで試合経過から離れ、
NHKが仕込んでいたネタが流される。
仙台のアーケード街の様子が映されたと思ったら、東北各地の表情ということで、
石巻のふれあい商店街が画面に。
見たことある人の顔がテレビに映る。きっとレンくんとかアサミちゃんとか、たくさん知ってる人が登場するかも、とワクワクしながら画面に見入る。最後に集合写真的なカットで、ウメシンスポーツの梅さんやけいていさんも映ってた。
いやもうこうなれば勝手にお祭り騒ぎさ。親子三代Lionsファンなのにね。
でもニュースはこのまま西武ドームからの野球中継になるのかと思ってたら、
「この話題は後ほどまたお伝えするとして、次のニュースです」
で、出てきたのがこれさ。
日本は儲かります!
首相の安倍さんがニューヨーク株式取引所で演説したという映像。
何かに酔っていたのか、ちょっと頬を赤らめた首相が、指を三本立てて、
「アベノミクスは買い時だ!」と英語で力説する。日本語では「日本は儲かります!」続けて「日本をアメリカみたいな国にしたい!」と。
東北各地で楽天の優勝の瞬間を見逃すまいとしていた人たちの表情からは、
あまりにもかけ離れた、別世界のニュース映像だった。
ワタクシごとではあるが、非常に違和感だった(日本語としては変だが思うがその時に思ったママ)。
たまたま読んでいた橋本治のエッセイの最終話の最後の部分を思い出した。曰く
「日本のこの先は被災地のあり方を前提とするしかないな」
橋本さんの言葉は、楽天優勝直前の興奮の中にある現地の人たちの表情にすっとしみ込んで行くと思ったが、
首相の米国での浮かれた物言いは、むちゃくちゃな例え方をするなら、地球の反対側という物理的な距離感なんてすっ飛ばして、ずっとはるか彼方までぶっ飛んで、たとえるなら、数日前に報じられたボイジャー1号が太陽圏を離脱したというニュースと同じくらいに、未知の空間で語られたきわめて奇異な言葉(あるいは返答を聞くまでに18時間とかかかるくらいの超絶的な対話)にしか聞こえなかった。
政治の話の後はバラエティで、その後はCM
50年も昔に黒田三郎が世相を純化した詩どころでなく、
ニュースの話題はころころ変わって行く。
どんな順番だったかなど覚えていられないほど、バラエティにとんだネタが紹介されて行った中のひとつがこれだった。いや、とんでもなく重要なニュースなのだが。
前日、東電の社長と2カ月半ぶりに面会し、書面を受け取るだけは受け取った新潟県知事が、安全審査への書類提出を条件付きといいつつ認めた——。
前日のNHKニュースが新潟の泉田知事の考え方について詳しくくわしく、民放も新聞社も伝えないくらい詳しく伝えていたのに、ずいぶんとあっさりとお認めになられたものだと、頭の整理をするひまもなく、ニュース画面は再び球場に切り替わるのだ。
仙台のクリネックススタジアムの観客への軽いインタビュー。遠藤さんは映らないかななんて画面の隅々を探しまわったり、9回の裏で我がライオンズが逆転のチャンスをつかんでいるのだが、今日のところはどう声援を送るべきかと悩んだり。
そんなことしてる間に、田中投手が仁王さまのような形相で、うちの3番4番を連続ストレートで三振に斬って取り、楽天イーグルスが今期のパ・リーグを制覇した。
よかった。
よかったと思ったまま、即FBにもコメントを上げたけれど、遠藤さんがクリネックスに行ってるんだと知った時の興奮からは、ちょっと離れてしまっていた。
あれ、これ、それ、これ、どれ?
星野監督が胴上げされる。
アナウンサーが、しっかり回数を数えて「7回でした。背番号が77だから」なんて誰に対してなのか分からないけど報告するかのように伝える。
あとはチャンネルもがちゃがちゃ切り替えたし、下手すれば翌朝のテレビの印象までごっちゃになってしまっているけど、この日の夜に電波で流されていたコンテンツは、自分の頭の中と同じくらいごっちゃだったと思う。
楽天の優勝。
東北の人たちの歓喜。
楽天の選手達の東北への思い。
首相のアメリカでの軽やかな舌回りの演説。
原発の不安の地味な再提起。
宮城の人たちだけはない、東北全体に浸透していた頑張れ楽天の思い。
そこに投射されていた被災地の思い。
そしてまた、アメリカでの首相の発言が覆い被さる。
※
さらに、こんなニュースも同時進行していた。
さっき紹介した橋本治の文章を図書館で借りた本から探し出してみたら、前後はこうなっていた。
一年前の大震災の時、私は異様に冷静だった。「日本のこの先は被災地のあり方を前提にするしかないな」と思った。原発はもう動かせない。世界経済のあり方も見直しが必要だ。そうである以上、かつてのような「経済による復興」は起こらない。だとしたら、被害に遭わなかった所が、応分にその困難を引き受ける——。それ以外に「復興」はないのではないかと思ったが、今でもそう間違ってはいないと思う。
「橋本治という立ち止まり方」朝日新聞出版 2012年10月30日
安倍首相はきっとこういうだろう。
被害に遭わなかった所、元気な人たちが引っ張って行くことが、東北も含めてこの国をいい方向に導いて行くのです!
しかし、一見似たようなことを言うにしても、
石巻日日新聞の近江社長の
「早く立ち上がれた人間が、次からの人たちのために足跡を残して行くことが大切」という言葉や、
がんばろう!石巻の黒澤さんが
「がんばっていくことが、まわりの人たちの励みになればね。そうすれば自分自身の励みにもなる」と言っているのとは、
まるで正反対のように感じてしまうのはなぜだろう。
金持ちが儲けやすい国になれば、トリックルダウン(ぽたぽたと余りがこぼれる)効果で社会全体が潤うという、2011年9月のウォール街占拠で「国民の99%」を称する人たちに指弾されたやり方を押し通そうとする特権的政治・経営関係者グループと、「ほんとうのローカリスト」が何なのかを考え抜いて生きている人たちだから、
別物で当然。
ということなのだろう。
楽天、だからこそ頑張って!
球団創設から9年。苦労の末に優勝した選手達にとっては、こんなゴタゴタに巻き込まれることは迷惑至極だろう。
でも最終回の田中投手が、まるで仁王さまのような顔つきだったこと、
徹底して直球を投げ通したこと、
ふつうなら、当然打ち返しただろう球に、
Lionsの3番4番が手を出すことすらできなかった、(浅村の最後のストライクは、見逃しだけはイヤだという思いの空振りだろう)あのマウンドで見せた気迫は、
間違いなく、東北人をもう一度奮い立たせたはずだ。
東北人がずっと引き継いできた強さと靭さ——。それは、
島基宏捕手の「見せましょう野球の底力を」であり、
石巻工業の阿部翔人主将の甲子園での宣誓であり、
女川中学女子バスケット部の全国大会での頑張りだった。
貫いている。
外側の人たちの心ない言葉や行い、政治的言動や政策に対して、
彼らは、彼女たちは、決して屈しないことを
声で、そして行動で叫び続けることを、ずっと引き継いできた。
その集大成のひとつが、9月26日だったのだと思う。
これからの日本のあり方は、被災地を前提にするしかない。
その通りだ。逆に、そう思うからこそ、
これからの日本のあり方が明らかになってくる。
嬉しいのに苦しいのは、東北大好きだけど生まれながらのLionsが対戦相手だったという矛盾ではなく、
優勝決めた日になんでそんなニュースと並べられるというアンビバレント。
でも、そんなものまで引き寄せるくらいだからこそ、次の光が見えるのかもしれない。
そう思えるからこそ、
こんな厄介な日に初優勝を決めた東北のチームが、
新しい歴史をつくってくれると確信できる。
思いっきりエールを送ろう。
おめでとう!
こんな日に勝ったのは、あたたちだからこそ。
きっと日本一になれ!
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