息子へ。東北からの手紙(2013年12月15日)

iRyota25

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今日は沼津の映画館に一緒に行ってきたんだから、手紙ってのも変な話なんだけど。

映画「朝日のあたる家」原作・脚本・監督:太田隆文 キャスト:並樹史朗、斉藤とも子、平沢いずみ、橋本わかな、山本太郎、いしだ壱成ほか ロケ地:静岡県湖西市
映画「朝日のあたる家」原作・脚本・監督:太田隆文 キャスト:並樹史朗、斉藤とも子、平沢いずみ、橋本わかな、山本太郎、いしだ壱成ほか ロケ地:静岡県湖西市

日曜第一回目の公開に行ったのは、太田監督の舞台挨拶のタイミングを見計らってのことだったんだよ。上映前に「部外者立入り禁止」と手書きで書かれた紙が張り付けられた急ごしらえのパーティションの向こうに、髭ぼうぼうの監督の姿を見つけた時には、「オレもけっこう持ってるじゃん!」って小さくガッツポーズした。監督のことはいろいろな人から聞いていたけど、自分としては初対面だったからね。

映画であれ、なんであれ、感想は人それぞれだ。映画を観る、あるいは何かを経験する前から何らかの先入観だったり予断だったり、そういうものがある場合もあるだろう。今日のお前も山本太郎さんについての前情報をたくさん持っていたようだしね。

でも、それはそれでいいと思う。お前と映画の監修役だった佐藤大さん以外、たぶん観客全員が涙ぐんだり泣いてしまうくらい感動してしまう映画だったのだけれど、見終わった後、きわめて冷静に「次女の行動」に疑念を呈したりするお前は、それはそれで「悪くない」と思った。

なんてったって、映画の中の世界を、自分が生活している世界と同じ時間の中で感じていた(追体験していた)ってことに違いはないんだから。

映画が終わった後、太田監督や浜松からやってきた佐藤大さん、市長の小野さんたちと話したり、記念撮影をしたりするのにどんどん時間が経って、その間手持ち無沙汰にさせてしまったのは悪かったな。でも、あの映画はなんとか派とか、イデオロギーとか、もっと言えば「脱原発」とか「原発推進」とか、そんなアタマで考えるような主義主張なんてものをはるかに飛び越えたところで、とにかくみんなに観て欲しいということでつくられたものだ。それはまぎれも無い事実。

映画の後、あれこれ長話していた人たちって、この映画のことを離れたら、けっこうみんなバラバラの考え方の持ち主かもしれない。理想の未来の形は人間の数だけあるもんな。でもこの一事についてはって集まって話をしていたんだ。(このことは本当に大切なことだと思う。意見の対立が最後まで折り合うことなく、ただ対立を深め続け、形式上の決定権を持つ側が押し切るという出来事がどうしてこうも多いのだろう!)

あの原発事故以来、いつ誰の身の上に降り掛かってきてもおかしくない出来事。安倍総理は「踏ん張りどころ」なんて言っているが、これまでの調子で続いていれば、かなり高い確率で間違いなく繰り返されるであろう原発事故。

次の当事者は、まぎれもなくお前だったり、親戚だったり、友人だったり。つまりは「他人事ではない」ということを、リアリティをもって心に刻んでほしい。たぶん、その一念が監督の思いを多くの人たち、役者さんやスタッフたちはもちろん、撮影地となった湖西市とそこに暮らす多くの人々、スポンサーが付かないなかで監督の思いに共鳴して制作費を積み上げて行った市民の人たち、さらに商業映画界からほぼスポイルされた形だったこの映画をなんとか上映させたいと走り回った多くの人たち…。そんな人たちのたくさんの手、握手すればぬくもりが伝わってくるような血の通った手で作り上げられ、支えられ、そして上映されてきた、そんな映画だったんだとオレは感じた。

映画の公式ホームページに、監督ブログっていうコーナーがある。太田さんは監督はもちろん原作、脚本まで手がけただけじゃなく、製作資金を集めるプロデューサー役も自ら担った。のみならず、公開後の広報活動までほとんど手弁当状態(予算がショートして持ち出し、要するに自腹ってこと)で、全国の映画館をまわり、舞台挨拶で思いを語り、観客と対話し、ツーショット写真を撮っては拡散してもらうという、そんな地道な活動を続けてきたんだ。オレはそのことに本当に感謝と敬意を表したいと思う。だが、映画をつくろうと決意したころには、

「そんなテーマで映画を作ったら、二度とメジャーで勝負できなくなるぞ」

とまで、先輩たちに言われたっていうんだぜ。それでも、この映画をつくろうと決意した時、太田さんの中で「一歩」が踏み出されたのは間違いない。映画をつくり、公開する中での苦労があまりにも大きくて、そのとき踏み出した「一歩」がどんなものだったのか、立ち話の中ではうまく聞き出すことができなかったけど、次に会ったときにはぜひそのことにフォーカスして話を聞いてみたいと思っている。

経済成長のために原発は不可欠だって考えている人もいる。万一の場合に人類全体に取り返しのつなかい影響を及ぼす危険をはらんだ原発は廃絶すべきだと考えている人もいる。難しい話だからよくわからないという人たちもいる。この映画は、地上に暮らすありとあらゆる人にとって、他人事ではない現実を感じさせてくれた。映像を通して、役者たちの「肉声」を通して、観る人たちの骨にまで刻み付けてくれた。

ある人が、この映画を見さえすれば「答えは明かだ」という感想を述べていた。でも、オレは違うと思う(そうあってほしいとは思うけどね)。この映画は結論を示しているものではなくて、多種多様な考え方を持った人たちが、本当の意味で語り合う上での共通のベースとなるもの。そこに、この映画の良さがあるのだと。

お前の批判的な見方は、そのことを改めて思い知らせてくれた。今日は、ありがとう。また、話そう。「朝日のあたる家」のこと。そしてお前たちが主役となる未来のこと。

ともに未来を語れる映画に出会えて良かった。「まだ、間に合う」。どさくさまぎれのようなあの台詞は、本当に暗示的だと思う。

映画「朝日のあたる家」予告編 NO1

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 映画 朝日のあたる家 公式ホームページ
asahinoataruie.jp  
 映画 朝日のあたる家 公式ホームページ 劇場(上映映画館一覧)
asahinoataruie.jp  
 映画 朝日のあたる家 公式ホームページ 予告編
asahinoataruie.jp  

いくつかのバージョンの予告編が紹介されています。

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