息子へ。被災地からの手紙(2013年7月31日)

iRyota25

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夜行バスがとれなくて、新幹線&ミヤコーバスで石巻入り。

うなるような轟音を立ててジェット機が駅上空をバンクしながらフライパスしたのは、
バスが駅に到着したのとほぼ同時だった。

(広報用の写真です・・)

(広報用の写真です・・)

「ブルーインパルスだ!」

嫌いじゃないが、とくにファンというわけでもない。でも、空を見上げて声が漏れた。

「か、かっけぇ~!」

到着早々、石巻人になっているみたいに感じて、うれし、恥ずかし、こそばゆかった。

到着後のお決まりコースは、リーガルショップ→日和キッチン→ふれあい商店街。
「あれ、ずっといたの?」
いろんな人に同じことを言われてしまった。
0泊3日で土曜日に石巻にいて、4日後にまた石巻にいる。みんなが言うように、石巻に逗留してた方が楽だったかもしれない。

この日は石巻最大のお祭り「川開き」の一日目。
地元では前夜祭の扱いだけど、慰霊祭と流燈(灯篭流し)という、
たいせつな行事が予定されている。

自然と人が集まってくる場所(1)

まずは街をぐるりと回ってみよう。
立町大通りから、寿町通り、アイトピア通り、橋通り…。

空模様があやしいこともあるのだろうが、どうも人の出が少ない感じ。
やはり、前夜祭という意識が強いのか、
「今日も花火は上がるみたいだけど、数も少ないみたいだよ。」
なんて言葉を耳にしたりもする。

ちょっと「うーん」な気分で旧北上川のほとりまで歩いていくと、
復興マルシェの向かいの駐車場に、

「沖縄料理」

の文字。あっ、ここだ!

明日のエイサーと、ばっちりコラボでやってるお店に違いない!
と、テントの中を覗いてみると、いました、いました。
キミちゃん、サコちゃん、きょんちゃん、さらにマッハ、初対面の皆さんも顔見知りみたいにヤッホーっと挨拶してくれる。

「石巻で唯一の、たぶんだけど、オリオンビール。ぜひ飲んでって!」

セールストークもパワフルだけど、鉄板の上できょんちゃんが焼いてるチヂミや、ドラム缶グリルで焼いてるホタテの貝焼きの引力も超・強烈だ。
さっき日和キッチンでドーナツを買って食べたところだったから、チヂミは後で回ってきた時のお楽しみにして、ホタテの貝焼きとオリオンビールをいただくことにした。

そしたら、沖縄名物の島ラッキョウの塩焼きも付けてくれて!
これがまたうまいこと。
沖縄のビールと島ラッキョウ、そして石巻のホタテのコラボ。明日のエイサーへの期待度がぐんと高まった。


ちなみに、オリオンビールってのは、沖縄の生ビールだよ。
ただ飲み食いしてたわけじゃなく、ちゃんと明日の情報収集もしてたんだからねっ!

 【ぽたるページ】「出会えばきょうだい」沖縄のエイサーが石巻で炸裂
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自然と人が集まってくる場所(2)

つづいて訪問したのは、土曜日にオープンしたばかりの「石巻 まちの本棚」。

土曜日にお会いした女性に挨拶したら長話になって、2時間くらいお喋りした。
そんな長話ができる本屋さんって他にはないだろう。もちろん、図書館の閲覧室じゃ私語禁止だしね。

本を貸すわけじゃない。売るわけでもない。そこに本があって、人が集まって、本を真ん中において、出会ったり、話をしたりしてつながっていく――。

そんな「まちの本棚」のいいところを満喫させてもらったというわけ。

本棚の前の小上がりに上がって胡坐をかいてもいいし、靴は履いたまま縁側みたいに腰かけてもいい。柱に凭れ掛かっているととっても楽。リラックスしきった状態で、この場所のこと、この場所のこれから先のこと、震災直後のこと、現在進む再開発のことなどなど、たくさんお喋りした。

その間、何人もの人が入ってきた。本を見に来たという人や、女性に会いに来た人もいたけれど、お祭りで歩き回って疲れたからと、ぶらっと入ってくる人もいた。

いいなー、と思った。
ベビーカーから抱っこで下された1年2か月目という赤ちゃんが、テーブルと本棚を使って伝い歩きする。お母さんがその様子をムービーに撮ってる。お父さんは赤ちゃんに目をやりながらも、本棚の本が気になる様子。

あー、ここは特別な場所なんだなあと改めて思った。
この空間がいつでも利用しやすくあり続けてくれることを祈った。

自然と人が集まってくる場所(3)

川のほとりの慰霊祭とほぼ同時進行で流燈がはじまった。
光の点が旧北上川の川幅いっぱいに広がって、ゆっくりとゆっくりと流れてきた。
夕間暮れ。空の光が淡くなっていくにつれ、
川面の光の点がくっきりと浮かび上がる。

光の点を追うように、川下に向かって歩いていくと、
内海橋の向こう、萬画館が間近な場所で、眠ってお母さんにおんぶされた子と、
お父さんに肩車してもらって川面を眺める子がいた。なんだろう、
いつの日も変わらない、人々の姿がそこにあるようで、ジーンとした。

【ぽたるページ】東北、この一枚。石巻川開きの流燈
 【ぽたるページ】東北、この一枚。石巻川開きの流燈
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この日、旧北上川には震災で亡くなった人々の名が書かれた1万の燈籠が流された。

川沿いに歩いてきたところは、沖縄屋台のすぐ近くだった。
きっと神様がチヂミを食べるようにと導いてくれたのだ、なんて思ったりしながら、
屋台の前の順番待ちの列に加わっていたら、背中をツンツンと押された。
石巻日日新聞の阿部さんだった。
Facebook上では前から知り合いだったが、
リアルな世界での対面はこないだの土曜日のこと。
今日も石巻に向かっていることをFacebookに上げていたから、
「どこかで会えるかな」と探してくれていたのだとか。

ありがたかったよ。

ビル壁映写会や花火の時間も迫っていたから、
あとでレジリエンスバーで待ち合わせることにした。

【ぽたるページ】東北、この一枚。ビルの壁面にかつての町の姿を映す映写会
 【ぽたるページ】東北、この一枚。ビルの壁面にかつての町の姿を映す映写会
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アイトピア通りの観慶丸本店ビル壁面に、石巻市民が撮影した昭和36年以降の8ミリ映像が放映された。川開き、運動会、花見、海水浴・・映し出されるかつての町の姿に、多くの人々が涙を流した。「これ、いいよ。また来年もやってほしい」と。

沖縄屋台の人を引き寄せるパワーは、ほんと絶大だった。
花火の時間に訪ねたレジリエンスバーが、
やはり、いろんな人々の集合場所になっていたのはもちろんだけど。

石巻川開き初日の夜は、たくさんの人たちの声の坩堝のような状況で、
しずかに流れて行ったのだった。

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