息子へ。被災地からの手紙(2013年8月1日)

iRyota25

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宮城県石巻市「川開き祭り」2日目

川開き本番の朝、未明まで雨が残った。激しく降った時間もあった。
天気が心配で目が覚めて、街に出てみると、七夕飾りが落ちている場所もあった。
空を見上げる。雲がゆっくり流れている。切れ間から薄日も差してきた。

そして、花火のフィナーレのその時まで、奇跡的に雨は降らなかった(ぱらっと来た小雨を除く)。

2日目は忙しかったよ。なにせ今日が祭りの本番だからね。
でも、お祭りが本格スタートする前に、日和山の向こうの門脇にある「がんばろう!石巻」の大看板には行っておきたくて、ふれあい商店街の電器屋さんで自転車を借りて走った。

【ぽたるページ】東北、この一枚。川開きの朝の「がんばろう! 石巻」
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土曜日に設置されたばかりの「七夕飾り」。前に進む力を再確認する場所「がんばろう!石巻」にふさわしく、元気に風にゆれている。

土曜日に来た時よりさらに、咲いてるひまわりは増えたかもしれない。
「がんばろう!石巻」にはたくさんのひまわりに加え、七夕飾りが設置されいた。それも5つも。看板を設置した黒澤さんから、1年目から七夕飾りをつくったこと、材料がそろわなくていろいろ工夫した話を聞いたのを思い出した。東北の人にとって七夕は特別な思い入れがあるんだと考えていたら、七夕飾りの下のふさふさのところを、当の黒澤さんが横切っていくではないか!

黒澤さんや仲間の佐藤さんたちが、毎日ここにやってくるのは知っていた。
いつか偶然、ここで会えたらいいなあと思っていたら、その日が今日だったというわけだ。

黒澤さんは七夕飾りの「解説パネル」を設置しにきたということだった。もちろん手伝ったよ。「がんばろう!石巻の会」のサポート会員としてね。

手伝いながら教えてもらった。
5つの七夕飾りのうちのひとつが、北海道から贈られた御当地ヒーロー「サーモンファイター」だということ。石巻の仮設住宅の人たちが心を込めて作ったものも設置されていること。石巻の観光キャラクター「いしぴょんず」や石巻萬画館の御当地ヒーロー「シージェッター海斗」をかたどったものがあること。

解説パネルを設置しながら黒澤さんは言った。

これからも七夕飾りを続けていけたらいいな。無理のない形でね。
このエリアは住宅を建てられない地域。震災復興祈念公園になることになっています。
公園になった時に、この通りいっぱいに、ずらっと七夕飾りが並んだらどうでしょう。
5月には鯉のぼりをずらっと並べるのもいいですね。

「夏にはひまわりの花も咲きますしね。」
父さんにも、街道沿いに並んだ七夕飾りや鯉のぼり、そしてひまわりの花が目に浮かんだ。住むことができない土地になったからこそ、人が集える場所であってほしい。

cafeはまぐり堂は、パレードのスタート地点近くに出店
cafeはまぐり堂は、パレードのスタート地点近くに出店

祭りの本番の日、朝一番からいい出会いがあった。
ここで黒澤さんに偶然会えて良かった。

仕事先へ向かう黒澤さんを見送って、門脇小学校から旧北上川沿いに市街地に向けて自転車を走らせていくと、街はすでに交通規制も始まっていて、たくさんの浴衣姿の人たちがそぞろ歩きしていた。人波を避けて日和山のふもとの道を走っていくと、萬画神社に続く路地。もしかして何か飾り付けでもあるかな、と走ってみる。残念ながら萬画神社はいつもと変わりなかっけれど、ちょうどお向かいに「はまぐり堂」さんの出店が出店準備の真っ最中。

これまた、ちょっとした偶然。

お隣の浜で震災前に採れた天草でつくったという、特製のところてんをいただいた。
海の香りのするところてん、絶品だった。

いろいろな人に街で偶然出会うのって、祭りの醍醐味なんだなぁ。

偶然の出会いだけではない。
そこにいるだけで、いろんな人が集まってきて、いろんな人に出会えてしまう、
そんな特別な場所が、お祭りの時にはたくさん出現する。

父さんにとって、8月1日のその場所は、ふれあい商店街の一番奥の電器屋さんの前の屋根付きソファー。この場所が、実によかったんだな。

花の芽をつなぐ…の壁画の前の特設あずま屋、兼、ライブの特等席
花の芽をつなぐ…の壁画の前の特設あずま屋、兼、ライブの特等席

祭りのプログラムで調べて、お目当てのイベントを見に行く。満喫した後、人込みを避けてソファーに戻って寛ぐ。そしてまたお目当てを見に出かけていく。石巻に通うようになってから懇意にしてもらっている電器屋さんのけいていさんのご厚意に甘えて、前進基地のように、というかほとんど自宅のように使わせてもらった。感謝、感謝だ。

どうして父さんがこの場所を起点にして、街に出ては戻り、出ては戻りを繰り返していたか。それにはちゃんと理由がある。けいていさんの店の前では、けいていさんの音楽仲間たちによるライブが、お祭りのあいだ中、花火のスタート直前までロングランで続いていたんだ。

ロック、レゲエ、プログレッシブ、たまに歌詞だけシャンソン…。
アコギにピックアップを付け、真空管アンプにiPadのイコライザーをつなぎ、1ギター+1ベースを基本に演奏が続く。そこにけいていさんがクラリネットで、店長の息子さんがカホン(箱そのものといった打楽器)で参加したり、パレードの引率帰りに立ち寄った中学の校長先生がカホンを叩いたり、ちんどんサミットで全国から集まった錚々たるちんどんさんが賑やかしにやってきて、その場でセッションが始まったたり。2.0の小泉さんがまるでトークショーのようなお喋りを披露してくれたり、店長の息子さんの友達でギターをやってる少年にギター教室が行われたり、仮設商店街の人たちが座るソファの真ん中で、外国人のカップルがひたすらまったりしていたり…。

屋根付きソファーのテーブルの上には、石巻で一番うまいという焼き鳥とか、日和キッチンで買ってきた地鹿(?)の焼肉とか、黄金色のトウモロコシとかに、相澤商店さんおすすめの日本酒や美食酒房SANGIさんのワインが並ぶ。

音楽の合間、蛇踊りのこととか、エイサーがすごかったこととかが話題になる。

いろいろな音と音楽が、ぐるぐるになって、ちゃんぽんになって、回っている。
(酔ってるわけじゃなく)
音楽のジャンルとか国籍とか楽器の種類とかも渾然となった、不思議な感覚。
(酔ってるわけじゃなく)

そして目の前には、仮設商店街の建物に描かれた壁画。花の芽をつなぐ運動・第一弾。多摩美術大学有志28名による作品だ。

音楽のことはよく分からない父さんだが、曲に合わせてシャッターを切りたくなった。そうして撮ったのが下の写真の束。音楽に合わせて、街の未来を期待する気持ちが、何となく反映されたように感じた。

魚の目が笑っていたなんて、今日初めて気づいたよ。

朝顔にハンドル取られて…
朝顔にハンドル取られて…

シャッターを切りながら、
あ、これが石巻という土地柄なんだと分かった。
古くからの商人の街。入ってくるものを厳しく吟味はするけれど、
拒絶することなく、多彩な要素がひとつの大きな器の中に共存している。

ひとりひとり、意見も考え方も感じ方も信念も違うけど、
おそらく、大きな目で見れば、石巻は多様性の街だったのだと信じたい。
これからも、いや、これからはいっそう多様なものが共存できる町に、
必ずや、なってくれると信じたい。

いろいろなことがあった一日だったから、さらに書き足していくことになるかもしれない。その時にはまた連絡するね。

もう一泊して明日帰る予定だ。

それじゃ、今夜も元気で!

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