海辺の地をゆく「女川町・清水」2013年1月31日

iRyota25

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2013年1月31日(693日目)の女川町清水・日蕨地区

「海辺の地をゆく」というタイトルなのに、どうして山の風景なの?あの日、このすぐ近くの清水地区仮設住宅のあたりまで、海が広がったのです。女川で津波というと、建物が消えた町なかや岸壁が壊された港、積み木のように転倒した鉄筋コンクリートのビルなど、海の近くの被害が連想されるかもしれません。しかし、あの日の津波は川に沿って山の奥まで流れ込み、たくさんの人々の生活を破壊したのです。

今後、日本のどこで発生しても不思議はない巨大地震。その津波被害について考えるため、女川の港から清水地区まで走ってみました。

スタートは埠頭から

女川湾に浮かぶ江島や出島への航路が発着する埠頭です。岸壁のかさ上げが行われています。

振り返るとそこには転倒したビル。

その向こうには、高い擁壁に守られたお城のように見える女川町立病院。駐車場の高さは約18メートル。ここでも多くの方が亡くなりました。津波は山の方から回りこんできて、駐車場にいた人たちを巻き込んだそうです。少し見えにくいですが、バナーにはこんな言葉が。

女川の町は俺たちが守る!! 中村雅俊

中村雅俊さんは女川町の出身です。

500メートル地点、女川橋

女川湾のいちばん奥まったところです。ここまで車のトリップメーターでジャスト500メートル。ここから左折して、山に向かって走ります。

1キロメートル地点は瓦礫置き場のただ中

船着き場から1キロ。左折した場所からは500メートル。ずっとがれき置き場が続きます。橋の欄干は直されていますが、まわりには津波で破壊された施設が残されています。女川のがれき置き場は、津波で大きな被害を受けた場所にあるわけです。

このあたりは伊勢と呼ばれる集落でした。振り向けばまだ海に向かって開けた地形だということは分かります。ここから300メートルも内陸に向かうと道が右にカーブして、海はまったく見えなくなります。

1.7キロメートル地点の引きちぎられた橋

清水地区と新田(しんでん)地区の分岐となる橋の付近です。国土地理院の地形図で確認すると、橋を渡った先に10メートルの等高線が描き込まれています。沿岸部で20メートルの高さを記録した津波が、狭い谷沿いに奔流となって流れ込んだ衝撃の大きさがうかがえます。

橋の少し上流に大きな岩がありました。海から来たものか、上流から流れてきたのかはわかりません。まわりには自動車の窓ガラスや部品がいまも散乱していました。岩の向こうにある青いペイントが残る物体は、ダンプトラックのバックゲートです。

2.1キロメートル地点の裂けたガードレール

さらに上流の橋のガードレール。鋭く断ち切られています。このあたりまで来ると、海辺の町という雰囲気はまったくありません。景色だけ見ればのどかな山間部の農村といった感じです。でもこの谷を、津波に乗って大きな漁船が何度も行き来したのをたくさんの人が目撃しています。「どうして山の中を船が走っているのか」、「エンジンで走るのよりもずっと早く走っていた」など、目撃した人は少なからずパニックになったと言っていました。

断ち切られたガードレールの上流遠くに見えてきたのが清水地区(中央)と新田地区(右側)の仮設団地です。

2.3キロメートル地点、塩害でやられた杉

川の東側、新田地区仮設住宅の下流から東側を見ています。山の杉の木が切られているのは塩害で木がダメになってしまったから。左の民家の軒先が津波で壊されているのがわかりますか?標高は15メートルから20メートルある場所です。

2.6キロメートル地点の杉林も津波に襲われたました

こちらは川の西側、清水地区仮設住宅から少し下った場所。船着き場から2.6キロの地点です。やはり塩害でやられた木が伐採されています。手前の建物基礎も、津波に直撃されたようです。

津波は山の中までやってくる――。巨大地震や巨大津波の危険があるこの国で、これから自然災害にどう備えるか。東日本大震災の教訓をどう生かすのか。考えるべきこと、話さなければならないことはまだまだたくさんあると思います。

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●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)

最終更新:

コメント(3

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  • P

    pamapama

    わたしの住む県も大きな地震の際には津波が予想されています。写真と似た地形のところもありますのでどんなに「想定」しても足りないのかもしれません。この先何年地震が来なくても「備えよう」という気持ちを切ってはいけないのでしょうね。

  • A

    akaheru

    山の中まで達する津波。被災していない自分も想像しただけで恐ろしくなります。実際に被害に遭われた方の恐怖は本当に図り知れません。人間の想定をはるかに超えてくる自然災害。どれだけ警戒してもしすぎると言う事はないのかもしれません。

  • H

    habihabi64

    女川の復興を心よりお祈り申し上げます。地震の恐ろしさ、津波被害の現実を、私もまずは自分の意識から、そして家族や知人へ伝えてまいります。ご高齢者の方々の避難経路の確保や、避難訓練の方法など、地震がきたらどうするかとういうことを、あらためて家族や会社で状況ごとに考えていきます。