U-20女子ワールドカップで銅メダルを獲得し、一躍全国区の人気となった『ヤングなでしこ』。2015年のワールドカップに向けて、この世代のプレーヤーが『なでしこジャパン』の新戦力になることが期待されています。3年後を見据えた上で、国際大会で活躍できるのは誰なのか?今回はセンターバック編として、注目の選手をピックアップしたいと思います。
アジア最高のストッパーと評される熊谷紗希のバックアップを探せ
なでしこジャパンのセンターバックと言えば熊谷紗希と岩清水梓のゴールデンコンビが頭に浮かびます。高さと強さを武器にしてエースフォワードを封じ込める熊谷と、的確なカバーリングと巧みなラインコントロールでディフェンスを統率する岩清水は、互いを補完し合える関係にあります。ワールドクラスの守備力を誇るなでしこジャパンのセンターバックですが、選手層が極端に薄いことが問題視されています。
熊谷紗希は170cmを超える高さを持ち、攻守のバランスに優れていることから世界的に見ても屈指のストッパーだと思います。熊谷のバックアップには宇津木瑠美が候補として挙げられていますが、宇津木の本職はボランチであり、国際試合でも十分にテストされていない為、センターバックとしての能力は未知数です。
熊谷に対抗できるのはU-20W杯でレギュラーを確保した土光真代
現時点で熊谷紗希に匹敵する有力な選手は思いつきませんが、個人的に期待しているのはU-20W杯でセンターバックのレギュラーを確保した土光真代です。1996年生まれの土光はU-17代表からU-20代表に飛び級で選出されると、U-20W杯ではレギュラーとしてセンターバックの一角を任されました。
20歳でドイツW杯優勝を経験した熊谷紗希と16歳でU-20W杯銅メダルを獲得した土光真代。若くして大舞台で活躍し、修羅場の中で急成長を遂げた2人の姿は宿命とも思える共通項があります。絶対的なレギュラーである熊谷に対して、土光はどこまで対抗できる存在なのでしょうか?
・フィジカルコンタクトとスピード
ストッパーにとって生命線とも言えるのがフィジカルコンタクトとスピードです。熊谷紗希は171cmという長身に加えて体幹も太く、ボディバランスに優れた典型的なクラッシャータイプのストッパーです。ワールドクラスのセンターフォワードと対峙しても空中戦で競り負けることはなく、ルーズボールの競り合いであたり負けすることもありません。世界レベルの身体能力を持つセンターバックだと言えるでしょう。
土光真代もフィジカルの強さでは負けません。腰の強い屈強な身体の持ち主で、U-20W杯でも身体能力の高いアフリカの選手にもあたり負けしない強さが印象的でした。スピードという点では熊谷以上のスプリント能力を持ち、ドリブルで仕掛けられてもスピードで振り切られることはありません。163cmとデイフェンダーとしては平均的ですが、年齢を考えればこれから身体能力も成長するでしょう。
・マンマークとカバーリング
1対1のマッチアップにおいて、熊谷紗希の守備力はワールドクラスと呼べるでしょう。強靭なフィジカルを生かしたチャージングでフォワードに前を向かせず、突破を仕掛けられても独特の間合いから鋭いタックルでボールを奪い取る技術を持ちます。前に出るインターセプトの強さが武器の熊谷ですが、前に出過ぎて裏を取られるケースも目立ちます。ポジショニングに関しては今後に課題も残しています。
マンマークの強さでは土光も熊谷に匹敵する力を持ちます。オフェンスとの距離感を測るのが上手く、相手がドリブルで出てきた瞬間に、自分のタイミングでボールを奪う技術を持ちます。スピードとフィジカルの強さを前面に押し出し、強烈なタックルで相手フォワードを弾き飛ばします。ポジショニングにも優れており、カウンターで裏を取られるケースはほとんどありません。空中戦での競り合いも標準以上の力を持ちます。
・ビルドアップとフィード精度
熊谷紗希は最終ラインからゲームを組み立てられる希有な選手です。20~40mの中長距離のパスなら味方の足元にピタリと合わせる高いキック精度を誇ります。ビルドアップにも優れており、フリーの選手を見つけるのが上手い選手です。自陣からセンターサークルを超える大きなサイドチェンジを得意とし、後方からチームの舵を取り役を務めます。パス能力の高さを買われ、所属クラブではボランチを任せられています。
対する土光のフィードは攻撃的なものではなく、セーフティーな安全第一の横パスが基本です。キック精度が非常に高く、パスミスが少ないのが特徴です。ダイナミックなロングパスを前線に繰り出すフィードセンスはありませんが、奪ったボールを確実に味方に繋げる模範的なセンターバックと言えるでしょう。
総合評価
両者を総合的に比較すると、攻守両面に優れた熊谷紗希に軍配が上がります。しかし、土光真代の持つスピードとマンマーキング能力は熊谷に匹敵するものがあります。所属クラブの日テレ・ベレーザでは岩清水梓とセンターバックのコンビを組む土光真代。熊谷には無いラインコントロールの上手さも備えており、今後の活躍次第ではバックアッパーとしてA代表に招集される可能性も十分にあると思います。
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