『なでしこジャパン』の下の世代、『ヤングなでしこ』の存在を知っていますか?U-20代表と呼ばれている20歳以下の若い選手達です。2012年8月19日より、FIF U-20ワールドカップが日本で開催されました。各選手はこの大会で自分の力をアピールし、ビッグクラブへの移籍やA代表への選出を目標にしています。今回はヤングなでしこのセンターバックとして活躍する高木ひかり選手のプレースタイルに迫ります!
U-20ではセンターバックとサイドバックを兼任
高木ひかりの本職はセンターバックになりますが、元々はフォワードを務める攻撃的な選手で、現在はボランチからサイドバックまでを兼任するユーティリティプレーヤーです。今回のU-20ワールドカップでは6試合中5試合に先発し、2試合をセンターバック、3試合をサイドバックとして出場しています。
攻守にバランスの取れた右サイドのキーマン
高木本人は「サイドバックは不慣れなので苦手」と語っています。しかし、準々決勝の韓国戦ではアグレッシブなオーバーラップから田中美南とのコンビネーションで右サイドを崩し、ペナルティエリア内まで高速ドリブルで侵入し、中央に絶妙のグランダークロスを入れてアシストを決めています。オーバーラップのタイミング、ドリブル精度、広い視野と高いキック精度から生み出されたラストパスで韓国のディフェンスを完全に崩したこのプレーは、ヤングなでしこのパスサッカーの象徴として絶賛されました。このような難易度の高いプレーを不慣れなポジションで実践できるのは並大抵ではなく、多くのポジションを国際舞台で経験してきた高木ならではの引き出しの多さが表れたシーンだと言えます。
ドイツ戦で崩壊したディフェンスを救ったのは高木
準決勝のドイツ戦では0-3の惨敗で苦杯をなめた日本。ドイツの圧倒的なフィジカルの強さに動揺し、センターバックの木下栞と土光真代、更にはゴールキーパーの池田咲紀子までもがイージーミスを連発し、守備を修正する間もなく立て続けに3ゴールを奪われました。自信を失いかけたセンターラインの立て直しが急務という状況のなか、吉田監督の出した答えは高木ひかりのセンターバックへの復帰でした。 3位決定戦のナイジェリア戦では、5試合ぶりにセンターバックとして先発した高木ひかり。ドイツと同じく身体能力に長けるナイジェリアの攻撃陣をどう抑えるのかに注目が集まりました。
高木は臆することなく堂々としたプレーでナイジェリアと互角に渡り合います。パワーとスピードで強引に突破を仕掛けるフォワードに対しても、一発で飛び込んで裏を取られることはなく、巧みなポジショニングで攻撃を遅らせながらゴール前で数的優位を作ります。前線にロングボールを放り込まれても、フィジカルの強い相手フォワードに恐れることなく果敢に競り合ってボールを跳ね返します。常にリスクを回避したセーフティーな選択でディフェンスラインを統率し、ボールにアタックする選手とカバーに入る選手を最後尾から巧みにコントロールして守備の陣形を整備します。ディフェンスの司令塔というべき存在でナイジェリアの攻撃を1失点に抑え込み、銅メダル獲得のキーパーソンになりました。
優れたビルドアップでポゼッションをリード
自陣ゴールに近いポジションを取るボランチやディフェンダーは、一度のパスミスで致命的なシーンを招いてしまいます。それだけにキック精度に高い質を求められるポジションです。高木ひかりは優れたビルドアップ能力を持ち、常にフィールド全体を見渡せる広い視野を持ちます。安易にボールを後ろに下げるような逃げのパスを選択せず、ショートパスとロングパスを織り交ぜながら正確なパスをチームに供給します。高木がディフェンスラインのボール回しに参加することで、バイタルエリアでのパスミスからカウンター攻撃を受けるリスクは軽減され、日本のボールポゼッションは安定します。
総括
守備ではフィジカルの強さに加え、タイトなマークとクレバーなカバーリング能力を備え、攻撃では精度の高いドリブルと優れたパスセンスを有する攻守にバランスの取れたディフェンダーです。ディフェンスに人材不足を抱える『なでしこジャパン』には直ぐにでも欲しい選手ではないでしょうか。今後、日本の女子サッカー界のディフェンスを長く支える存在になると思います。
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