U-20女子ワールドカップで銅メダルを獲得し、一躍全国区の人気となった『ヤングなでしこ』。2015年のワールドカップに向けて、この世代のプレーヤーが『なでしこジャパン』の新戦力になることが期待されています。3年後を見据えた上で、国際大会で活躍できるのは誰なのか?今回はセンターバック編として、注目の選手をピックアップしたいと思います!
選手層の薄いセンターバックに新風を吹き込めるか?
ロンドン五輪で銀メダルを獲得したなでしこジャパンですが、その強さの原動力になったのはディフェンス力の高さです。特にセンターバックの岩清水と熊谷のコンビは安定しており、アメリカやフランスなどの大柄でスピードのあるフォワードと対峙しても十分に対応できることを証明しています。問題はレギュラーが欠場した穴を埋めるバックアッパーの存在です。
五輪大会前の壮行試合では矢野喬子や田中明日菜がテストされたものの、イージーミスで失点を重ねるなどバックアップとしては物足りない結果に終わりました。層の薄いセンターバックに新しい選手を補強することがなでしこの大きな課題になっています。
代えの利かない岩清水梓に対抗できる選手は誰か?
高さと強さを持つ熊谷は相手の大型フォワードをマークするストッパータイプの選手です。そして岩清水は少し下がり目の位置からディフェンスラインを統率するスイーパー的な役割を担います。スイーパーはマークの受け渡しやカバーリング能力など、読みの鋭さとリーダーシップを求められるポジションです。
筆者が岩清水の代役として注目している選手はU-20女子W杯で活躍した木下栞です。木下は岩清水とはタイプの異なるセンターバックですが、最終ラインでスイーパーとして守備陣のリーダーになれる素質を秘めた数少ない選手です。木下栞が岩清水梓にどこまで近づける存在なのか?実際のプレーを例に検証してみましょう。
・マンマークとラインコントロールセンターバックとして第一に問われるスキルは言うまでもなく総合的な守備力です。岩清水はディフェンダーとしては162cmと小柄ですがフィジカルが強くてマンマークに優れたプレーヤーです。ヘディングの強さに加えてスピードもあり、強豪国のフォワードと対峙しても振り切られることはありません。木下は165cmと高さもあり、ヘッドも強く的確なポジショニングで相手の動き出しを封じます。しかし、フィジカルの強さを前面に押し出して突破を仕掛けてくるアタッカーに対してマークに弱い面も見られます。
最後尾でのラインコントロールですが、岩清水はチーム全体をコンパクトに保つためにラインを高く押し上げる傾向があります。的確なコーチングと優れた判断力でオフサイドトラップを自在に仕掛ける選手です。木下も強気なラインコントロールから高い位置でボールを奪う現代的なディフェンダーですが、最終ラインから中盤に飛び出して攻撃に参加するリベロのような動き出しが最大の特徴です。
・ビルドアップと攻撃参加
岩清水は正確なボールコントロールと高いキック精度でディフェンスラインに落ち着きを与える選手です。守備に対するリスクマネジメントを怠らず、常にセーフティなパス交換を選択できるので自陣ゴール前で致命的なパスミスを犯すことはありません。中央から積極的に攻撃を仕掛けることはありませんが、最後尾から効果的な縦パスを中盤に入れて堅実にゲームを組み立てます。
確実なパス回しを選択する岩清水に比べて、木下のパスワークは非常に攻撃的です。センターサークル付近からペナルティエリアに向かって40メートル近いロングパスをフォワードの頭に合わせたり、前方にスペースがあれば中央からドリブルで攻め上がり、バイタルエリアまで飛び出して強烈なミドルシュートを放ちます。
・スイーパーとしてのストロングポイント岩清水と木下はセンターバックとして最後尾からディフェンスラインを統率するスイーパーであることに違いはありません。しかし、そのプレースタイルは似て非なる対照的なものです。的確なカバーリングと緻密なラインコントロールで守備陣を統率する古典的なスイーパータイプの岩清水梓。中長距離のミドルパスでゲームを組み立て、隙あらば敵陣深くまでオーバーラップを仕掛けてゴールを狙うリベロの木下栞。独自のストロングポイントを持つ2人のDFが、どのように起用されていくのか興味深いところです。
総合評価
攻撃力では圧倒的なセンスを持つ木下ですが、守備面ではまだまだ岩清水に代わる存在には至りません。しかし、これから多くの国際経験を積むことで守備面の弱さは改善されると思います。なでしこジャパンは得点力の低さが課題の1つとされています。彼女が超攻撃的リベロとして開花したとき、攻撃のオプションとして強力な武器に成り得ると思います。
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