U-20女子ワールドカップで銅メダルを獲得し、一躍全国区の人気となった『ヤングなでしこ』。2015年のワールドカップに向けて、この世代のプレーヤーが『なでしこジャパン』の新戦力になることが期待されています。3年後を見据えた上で、国際大会で活躍できるのは誰なのか？今回はサイドハーフ編として、注目の選手をピックアップしたいと思います！

A代表のなでしこジャパンが採用するシステムは4-4-2で攻撃的な中盤は左右のサイドハーフの2人。U-20のヤングなでしこのシステムは4-2-3-1でトップ下とサイドハーフを含めて攻撃的MFは3人です。なでしこジャパンでは攻撃的な中盤のポジションが1つ減る形となります。柴田華絵をA代表に召集しようと考えた場合、左サイドハーフの川澄奈穂美と右サイドハーフの宮間あやがライバルとなりますが、プレースタイルが比較的似ている川澄奈穂美とのポジション争いが予想されます。

しかし、同ポジションには上尾野辺めぐみなど、実力と経験を備えたベテランが控えており、田中陽子や仲田歩夢など同世代で活躍する才能ある若手が台頭してくるので、出場の機会を得るのは容易ではありません。とはいえ、ロンドン五輪代表のメンバーを見ると、現段階でなでしこジャパンの中盤の戦力は頭打ち。3年後の女子ワールドカップでの戦いを考えた場合、世代交代も含めて才能ある新戦力の発掘が不可欠です。  

U-20W杯では6試合に出場し、3得点を記録してシルバーボール賞を獲得した柴田華絵。鋭いドリブル突破と豊富な運動量、ここ一番の勝負強い得点でヤングなでしこの攻撃の核として機能しました。対する川澄奈穂美はなでしこジャパンのスター選手の1人。フォワードとサイドハーフを遜色なくこなし、スピードを生かした突破力、優れたオフザボールの動き、高いシュート精度でゴールを奪う万能アタッカーです。一見すると似たようなプレースタイルを持つこの2人。柴田は川澄に対抗できるサイドハーフに成り得るのでしょうか？

・スピードと突破力ヤングなでしこの中盤では随一のスピードを誇る柴田華絵。ドリブルではクイックネスの速さが際立ち、細かいステップと瞬間的なスピードでDFを抜き去る動きは独特です。U-20W杯のドイツ戦ではディフェンスラインを斜めに切り裂くような鋭いドリブルから抑えの利いたミドルシュートを放ってゴールを脅かしました。僅かな隙を見逃さず、DF2～3人を振り切ってシュートに持ち込む瞬発力が持ち味です。

一方の川澄も類まれなアジリティを持ち、瞬間的なスピードはA代表でも1、2を争うほどです。ドリブルも得意ですが、ディフェンスラインをこじ開けるような強引な突破はせず、ラストパスに繋げるフェイクのドリブルや、クロスを上げる為にサイドスペースに飛び出すドリブルなど、単独突破よりは周囲を生かすプレーが光ります。プレーの質に違いはありますが、両社とも優れたアタッキング能力を持つので『スピードと突破力』はほぼ互角と見ていいでしょう。

・パスワークとアシスト能力チーム1と言える抜群の運動量を誇る柴田華絵はパスワークにも優れた力を発揮します。ボールの受け手と出し手の動きを読んだ第3の動き出しが素晴らしく、バイタルエリアで味方のパスを引き出すプレーは天下一品です。鋭いキラーパスを出して勝負を決めるタイプではなく、細かいパス＆ランを繰り返しながらゴールに迫るムービングアタッカーです。

川澄奈穂美もパス＆ランを駆使してゴールに絡んでいくムービングアタッカーですが、柴田との違いはプレーの幅の広さでしょう。アタッキングサードからペナルティボックスにガンガン飛び出していく柴田に比べ、川澄はサイドに留まってクロスを上げるチャンスメーカーに徹したり、サイドから中央にカットインしてスルーパスやミドルシュートを選択するなど、戦況によって役割を変える柔軟性を持ちます。ゴールに直結するプレーを得意とする柴田と、アシスターとしてもポイントゲッターとしても機能する川澄。『パスワークとアシスト能力』は川澄奈穂美が一歩リードしている感があります。

・シュート精度と決定力 U-20W杯では貴重な場面でゴールを奪うシーンが目立った柴田華絵。初戦のメキシコ戦ではチームを勢いづける先制ゴールを奪い、韓国戦ではゴール前25メートル付近からポスト直撃のスーパーミドルを決めて勝ち越点を奪うなど、得点が欲しい場面でゴールを奪う勝負強さを見せました。DFに囲まれても混戦から体を張って泥臭くシュートを捻じ込むプレーと、思い切りの良いミドルシュートはDFの脅威となりました。

対する川澄奈穂美も勝負強いことで有名な選手の1人です。ドイツW杯の準決勝スウェーデン戦では左サイドのクロスを先制ゴールを奪い、ゴール前30メートル付近からスーパーループを放ってダメ押しとなる3点目を挙げました。左サイドから中央にカットインして放つカーブをかけたミドルシュートを得意とし、ペナルティボックスからインサイドキックで狙い澄ましたシュートは抜群の精度を誇ります。

意外な場面で値千金のゴールを決める柴田と川澄。ここ一番の勝負強さは互角だと思います。しかし、フォワードを本職とする川澄はシュートパターンの豊富さとペナルティエリア内のシュート精度の高さは素晴らしいものがあります。『シュート精度と決定力』をトータルで考えた場合、川澄に軍配が上がるでしょう。

ミッドフィルダーに豊富なタレントを持つなでしこジャパン。ここにヤングなでしこのスター選手が加われば中盤の層はより厚くなります。チームの特徴を生かす為にも、システムを4-2-3-1に変更して中盤のポジションを1つ増やすことも検討するべきでしょう。今後の成長と活躍次第では柴田がA代表で川澄に台頭する可能性は十分にあると思います！