7年後の、このまちで語られること

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先生、先生のこのお教室のおかげで、今年はなんとか無事に過ごせています。例年2月、3月になると、どこが悪いというのはないのに気が塞ぐ、身体も動かない、そして何に付けてもいろいろ思って泣いていました。でもそれが、今年はないんです。今朝、お教室に行く支度をしながら、「あ、今週末なんだ」って思ったくらい。なんていうとちょっと言い過ぎですけどね。

先生、このお教室を開いていただいてありがとうございます。こうしてやっていられるのは、先生とお教室の皆さんのおかげです。

油彩画、陶芸、踊りにお茶、華、手芸などなど、ここにきてようやく津波の前にあった市民講座や教室が戻ってきつつある。元あったそのままの形で再建したところもあれば、有志が自分たちにできる形で試行錯誤を繰り返しながら再出発にこぎ着けたたところもある。

カルチャースクールというと、軽薄でペラペラっとした習い事という印象を免れないが、津波のあとの地面から芽を出し、春の空気を探るかのように葉を茎を伸ばしているものはまったく別物のように思う。

習う内容、たとえば油彩画の絵の具の油の種類とか、踊りの指先の動きがどうのとか、仕上がりの完成度とか、要はコンテンツとでも言えばいいのか、そういうものが大切でないとは言わない。しかし、いくつかのお教室に顔を出させてもらっていて、空気を通して伝わってくるのはもっと別の大切なこと。

それは仲間ができるということ。仲間とのやりとりを通じて、関わりが深まって行くこと。関わりが深まることで、相手の存在も自分の存在もともに際立って行くということ。

「こころの復興よね」とお教室の先輩がいった。「私自身、ほんとうは復興という言葉は使いたくないんですけどね」

「こういうことなんだろうね」

誰ともなく、つぶやいた言葉がしみ込んでいく。

お稽古の後の空気が微笑した。

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