【遺構と記憶】津波に立ち向かい、未来を見つめる龍の松

iRyota25

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その松は今日も岩井崎に立っている。

からだをよじ曲げるようにして、しかしすっくと頭を上げて海に向かって立っている。ここは気仙沼市階上(はしかみ)の岩井崎。太平洋に突き出した芝と松林が美しい景勝地として震災前から知られてきた。とくに岬の先端にある潮吹岩は有名だ。

あの日、龍の松は津波の激流にさらされながら立ち続けた。そして津波の後、岩井崎の先端にその姿を現した。

たくさんの人たちがその姿にこころを揺さぶられた。津波の猛威によってかたちづくられた龍の松は、勇気や希望、つよい気持ちの象徴となった。

そして、龍の松は今日も立っている。

龍の松は、三陸復興国立公園「岩井崎」として長く保存され、後世に受け継がれて行くことになった。松の根元に設置された説明パネルには次のように記されている。

岩井崎「龍の松」

平成23年(2011年)3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災では、ここ階上地区も高さ17mあまりの津波に教われ、多くの方が犠牲となりました。

岩井崎の松の木も多くが倒され波にさらわれましたが、波が引いた後、岬先端部に1本の松が残され、その姿は、まるで海に向かい津波に立ち向かう龍のようであったことから、いつしか「龍の松」と呼ばれるようになりました。

大震災から時がたち「龍の松」は、海水による傷みが激しく枯死状態となりましたが、地域の方々や岩井崎を訪れる多くの方々の声と熱意を受け、本市では「龍の松」を被災から立ち上がる気仙沼市民の復興への希望の象徴とし、また、大震災の記憶を後世に伝え、鎮魂の思いを胸に未来に進む気仙沼市民の強い意志を表すため、長く保存することといたしました。

この保存事業は、全国の皆様、世界中の皆様から、気仙沼市民にいただいた温かい御支援によって実現したものであり、深く感謝申し上げます。

これからもわたしたちは、「龍の松」のように震災に負けず、強い気持ちを持ち続け、復興、更にはゆたかなふるさと創りに向け前進します。

平成28年(2016年)2月27日 気仙沼市

岩井崎「龍の松」

龍は津波に立ち向かうこころの象徴。人々を未来に向けてこころ奮い立たせる。

岬の先端の潮吹岩の写真に、ひとりの女性の姿が写り込んでいた。その日、岩井崎を訪れていた何人も人たちと同じように、岩から豪快に潮が吹き上げるのを見ているのかと思ったら、その人は胸元で手を合わせていた。

龍は津波に立ち向かうこころの象徴。人々を未来に向けてこころ奮い立たせる。そしてそのこころの深いところには、大きなかなしみも抱いている。

気仙沼である人が言っていた。震災の後、ボランティアさんの多くが「被災地から勇気をもらいました」と言われたが、被災地のわれわれが再建に取り組んでいるのは何も勇気があるからじゃない。そうするしかないからだ。

松の姿に、岩井崎の景色に、そんな言葉を思い出した。

津波を寄越した海に向かって、今日も龍の松は立っている。

(岩井崎について続報します)

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