驚きの画像だった。福島第一原発の2号機原子炉建屋内に、キツネと思われる動物が侵入していたことが年も押し迫った12月28日に発表された。
報道では、動物が全長130センチくらいとか、動物が侵入した場所の空間線量が1~10シーベルト/毎時であることなどが報じられたが、東京電力の「写真・動画集」で発表されたのは4点の静止画のみで、関連するニュースリリースも発表されていない。写真・動画集のページに付された情報は下記のみ。
タイトル:2号機原子炉建屋内における動物の確認について
掲載日:2015年12月28日
撮影日:2015年12月21日
提供:東京電力株式会社
テレビ朝日系のニュース映像のテロップをいくつか引用すると、「21日午前6時ごろ 2号機原子炉建屋内にキツネが1匹いるのを監視カメラが撮影」「1時間あたり200ミリシーベルトと高線量」「東京電力 元々敷地内にいたキツネではないか」。ニュースでは東京電力が「敷地内にいたキツネ」とした理由を、原発構内が囲いで覆われているからだとした。
毎日新聞は、キツネが見つかった場所は、格納容器の中にロボットなどを投入する貫通部の付近で、線量は最大で毎時10シーベルトと極めて高かったと伝えた。周辺の線量については朝日新聞も毎時10シーベルトと報じていた。
10シーベルトは致死線量を超えている。この場所に1時間いればほぼすべての人が急性障害で死亡するという極めて高い線量だ。もちろん付近への立ち入りは厳しく制限されているという。
しかしその割には、ゴミバケツやロープ、貼り紙やホースなど人間の活動した痕跡が色濃く残されている。それも、極めて高濃度な場所だから急いで作業してスピーディに撤収するというではなく、日常の場のような雰囲気まで感じられないだろうか。10シーベルトと報じられた場所なのに生活臭にも似たものを感じるのはどういうことか。
少なくとも言えるのは、その場所は人間が立ち入って作業することが可能な、原発施設の中でも最前線のひとつだったということだ。
そもそもそんな場所になぜキツネは入り込んでしまったのだろうか。もちろん人間の食べ物があるような場所ではない(防護服を着用する作業場所では飲食は厳禁とされている)。もしかしたら、野ネズミのようなキツネの餌になる小動物がひそかに棲息しているのかもしれない。あるいは、原子炉建屋が発する温かさが冬場の寝床として好適だと感じたのか。
そんな厄介極まりないな場所に野生動物が迷い込んでしまったこの出来事、珍事とするには気が重くないだろうか。配電盤に入り込んだ野ネズミが起こした重要施設の停電といった事態の再発を危惧する声もあるが、キツネの身も案じられてならない。
もしかしたら、高線量という一方で、生身の人間が労働している現場の実態を知らしめるために誰かに使わされたお使いなのかも、などど思ったりもしてしまうのである。
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