12月5日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
11月5日に発生した2号機タービン建屋内ポリエチレン配管からの高濃度滞留水漏洩の原因は「施工時の投光機の熱」
インシデント発生から1カ月にしてようやく、またしても初歩的なトラブルだったことが判明した。やや長くなるが、既出部分も含めて引用する。
※11月5日午前0時9分頃、2号機タービン建屋に設置されている滞留水移送設備の漏えい検知器が作動した。このため、午前0時11分に2号機タービン建屋から高温焼却炉建屋への滞留水の移送を停止、午前0時12分に3号機タービン建屋から高温焼却炉建屋への滞留水の移送を停止した。当社社員が現場確認した結果、滞留水移送配管の下部に設置してある約2m×5m×5cmの堰内に高さ約2cmの水たまり、堰外に約5m×5m×1mmの水たまりを確認した。また、当該配管は塩化ビニール製シート※1で覆われており、そこから数秒に1滴程度、堰内に滴下していたが、配管を覆っている塩化ビニール製シートには、水が残っているものの、午前2時30分現在、水の滴下は停止している。確認された水たまりは、2号機タービン建屋内に留まっており、環境への影響はないと考えている。
※1 塩化ビニール製シート
配管からの漏えいを速やかに検知するため、漏えいした水を漏えい検知器に導く目的で、あらかじめ設置したもの。
水たまりが確認された箇所の上部に敷設された4本の滞留水移送配管について、ろ過水による漏えい試験を実施したところ、そのうちの1本の配管(以下、「当該配管」という。)から水の漏えいを確認した。
また、当該配管について、漏えい箇所近傍にある配管貫通部のシールプレートやコーキング材を剥がして目視確認したところ、配管に親指程度のへこみがあること、へこみの表面に亀裂があることを確認した。
漏えいの発生に伴い各建屋滞留水の移送を停止しているが、当該配管を隔離して、建屋滞留水の移送を実施できることが確認できたため、11月11日午後4時2分より各建屋の滞留水移送を再開。(ここまで既出)
漏えいが確認された配管については、その後の調査で当該配管施工時に使用した投光器が接触し、投光器の熱により損傷させたことが判明。損傷した配管については、交換を行うとともに通水試験等を実施し異常のないことを確認。当該配管について、12月7日に系統への復旧を行う予定。
【注目点】長文による説明だが要約すると、高濃度滞留水の移送を担う極めて重要な配管であるにも関わらず、施工時に発生していた損傷を発見することができず、その後の漏洩を引き起こしたということ。
12月4日に発生した予備変電所電源設備でブレーカーが落ちた件の続報
※12月4日午前8時21分頃、所内電源設備の予備変電所電源設備において過負荷トリップを示す警報が発生。プラントの主要パラメータおよびモニタリングポスト指示値に有意な変動は確認されていない。
当該電源設備には、プラント安定化のための主要設備負荷は、接続されていない。
現場を確認したところ、予備変電所電源設備のうち、構内配電線に電源を供給している遮断器が「切」位置(過負荷トリップ)になっていることを確認した。
また、前日23時頃に行った構内配電線への電源供給を、予備変電所電源設備から別の電源系へ切り替える操作の際に、誤って別の構内配電線の開閉器を「切」位置にしていたことが判明。(既出)
その後の調査で、予備変電所電源設備が過負荷トリップした原因は、本来「切」位置とすべき構内配電線の開閉器が「入」位置となっていたため、予備変電所電源設備と別の電源が並列に接続された状態となり、その後に作業等で構内配電線の負荷が増大して過電流となったことで予備変電所電源設備の当該遮断器が「切」位置(過負荷トリップ)となったことが判明。
本件は設備故障によるものではないことや、現場確認においても当該電源設備に異常が確認されなかったことから、誤って「切」位置とした構内配電線の開閉器について、12月4日午後7時26分に復旧操作(電源「入」操作)を実施。復旧操作後において、電源設備および接続されている各設備に異常なし。
1~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に実施中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
◎日報に新規事項の記載なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 第二セシウム吸着装置(サリー)を運転
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
その他の項目に新規事項なし
・セシウム吸着装置停止中
・RO淡水化装置運転中
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクFから海洋排水を実施。排出量は811トン
※ サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクFの当社および第三者機関による分析結果[採取日11月24日]については同等の値であり、運用目標値を満足していることを確認。12月4日午前10時27分より海洋への排水を開始。(既出)
その後、12月4日午後4時に排水を停止。排水量は、811m3。
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクGから海洋排水を開始
※ サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクGの当社および第三者機関による分析結果[採取日11月26日]については同等の値であり、運用目標値を満足していることを確認。(既出)
12月5日午前9時58分より海洋への排水を開始。
地下水バイパス
◎日報に新規事項の記載なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
12月4日のタンクエリアパトロールや汚染水タンク水位計による常時監視において、漏えい等の異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
H4エリア周辺地下水【E-1】全ベータ濃度(単位:Bq/L)
採取日 11/26 11/27 11/28 11/29 11/30 12/1 12/2 12/3
E-1 1,800 2,300 2,600 3,100 4,200 2,800 2,100 2,000
浪江雨量(mm)26.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5
H4エリア周辺地下水【E-10】のトリチウムは8,900Bq/L
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
H6エリア周辺地下水【G-1】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 11/26 11/27 11/28 11/29 11/30 12/1 12/2 12/3
G-1 720 1,600 820 1,800 2,800 3,500 2,400 1,700
浪江雨量(mm) 26.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5
H6エリア周辺地下水【G-2】トリチウム濃度(単位:Bq/L)
採取日 11/26 11/27 11/28 11/29 11/30 12/1 12/2 12/3
G-2 680 2,000 2,300 4,900 850 700 640 640
浪江雨量(mm)26.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5
1~4号機タービン建屋東側 地下水観測孔No.2-6でのセシウム上昇は新たな汚染水の流入によるものではないと考えられるため、再確認の予定
※ 12月4日採取した護岸地下水の分析結果のうち、地下水観測孔№2-6のセシウム137について、前回値(12月2日採取)1.4Bq/Lに対し420 Bq/Lに上昇していること、およびセシウム134について、前回値(12月2日採取)0.54 Bq/Lに対し96 Bq/Lに上昇していることを確認。
12月3日に採取した当該観測孔周辺の2~3号機間の護岸やその他の観測孔におけるセシウム134、137の分析値、および12月4日に採取した港湾内の分析結果については、前回と比較して有意な変動はないことを確認。
今回の上昇については、新たな汚染水の流入によるものではなく、採取等の過程における放射性物質の混入も考えられることから、12月5日、再度当該観測孔の水を採取して確認する。
その他の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
1~3号機放水路
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
K排水路
<最新のサンプリング実績>
今回の分析結果については、前回と比較して有意な変動は確認されていない。
関連データ(東京電力以外のサイト)
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