11月19日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
所内高電圧回路に使用する動力用電源盤で地絡。2号機使用済燃料プール代替冷却系、窒素ガス分離装置(A)を停止
※11月19日午後1時9分頃、免震重要棟遠隔監視室において、6900V電源盤所内共通M/C(メタクラ)※1A系の地絡警報が発生。
当社社員が設備の状況を確認したところ、免震重要棟1階の電源室の進相コンデンサ※2盤に隣接するA系変圧器一次高圧盤内の地絡電流制限抵抗器より発煙を確認。このため、午後1時33分に双葉消防本部へ連絡。当該警報発生に伴い主要設備およびプラントパラメータに異常は確認されていない。
発煙については、発煙が確認された後、間もなく煙が消えたことを確認。
その後、現場確認を実施した結果、午後2時3分に免震重要棟1階電源室の進相コンデンサ盤に隣接するA系変圧器一次高圧盤内の地絡電流制限抵抗器※3のカバーが黒くなっているのを確認。
また、午後1時10分頃に、構内の旧事務本館西側法面付近で、エリア区画用のロープを固定する鉄製のピンを高圧ケーブルに誤って接触させたとの連絡が、午後1時24分に協力企業作業員より緊急時対策本部に入った。
なお、所内共通M/C(メタクラ)A系の地絡が発生している負荷しゃ断器の開放準備のため、A系に繋がっている以下の負荷を停止。
・午後2時14分 2号機使用済燃料プール代替冷却系
・午後2時39分 窒素ガス分離装置(A)
その後、午後2時41分、所内共通M/C(メタクラ)A系の地絡が発生している負荷しゃ断器を開放し、6900V電源盤所内共通M/C(メタクラ)A系の地絡警報が復帰。
2号機使用済燃料プール代替冷却系停止時点における燃料プール水温度は23.0℃、燃料プール水温度上昇率の評価値は0.133℃/hであり、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、SFP水温度の管理上問題はないことを確認。
2号機使用済燃料プール代替冷却系については、電源が多重化されており、予備側の電源に切替えが可能であることから、準備が整い次第、再起動する予定。
窒素ガス分離装置については、(C)系が運転しており、窒素封入への影響はない。
本件に関してけが人の発生はない。
※1 M/C(メタクラ):所内高電圧回路に使用する動力用電源盤
※2 進相コンデンサ:力率を改善する設備
※3 地絡電流制限抵抗器:設備保護のために地絡の電流を抑制するものである。
【注目点】いうまでもなく東京電力は電気を作って売る会社だ。その会社の施設で、原子力災害からの復旧を行なう過程で電源が失われる事故が起きたところに、このトラブルの深刻さがある。作業員にとってエリアを区切るためのロープを固定する鉄製のピン(一般的なロープ固定用ピンは、長さ1.5mほどの鉄ピンと呼ばれる)を打ち込む作業というのは、ごく当たり前のことで、おそらく現場監督も「そこ、トラロープで区画するからピンを打っといてね」くらいな感覚だったかもしれない。ところが事故原発の敷地内では「そうは問屋が卸さない」ということを如実に示したトラブルだ。
重要な配線がある場所を周知していなかったのか、あるいは周知することが困難なほど多くの作業チームが活動しているということなのか。いずれにしろ、トラロープを張る作業ですら、事故原発の重要な機能が損なわれてしまう「状況」にあることだけは間違いないだろう。
1~6号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・1号機ディーゼル発電機(B)室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に実施中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
◎日報に新規事項の記載なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・RO淡水化装置運転中
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクEからの排水を実施。排出量は608トン
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクEの当社および第三者機関による分析結果[採取日11月8日]については同等の値であり、運用目標値を満足していることを確認したことから、(既出)
11月19日午前10時9分より海洋への排水を開始。なお、排水状況については、午前10時13分に漏えい等の異常がないことを確認。その後、午後2時19分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。排水量は608m3。
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクFからの排水準備が進む
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクFの当社および第三者機関による分析結果[採取日11月10日]については同等の値であり、運用目標値を満足していることを確認。
サブドレン・地下水ドレン 集水タンクの分析結果(11月8日採取分)
地下水バイパス 通算90回目の海洋排水を実施。排出量は1,494トン
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ2の当社および第三者機関による分析結果[採取日11月5日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認したことから、11月18日午前10時21分より海洋への排水を開始。なお、排水状況については、午前10時36分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
その後、午後4時19分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。排水量は1,494m3。
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