旅のランドスケープ「広島のチンチン電車」

iRyota25

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大通りの真ん中にある電停にチンチン電車が停まります。車が行き交う大きな通りの真ん中に、わらわらと人々が降りてきます。

わら
わら
わらわら… おばちゃんが路面に降りてしまいました
わらわら… おばちゃんが路面に降りてしまいました
わらわらわら… 電車からはまだまだ人が降りてきます。おばちゃんどんどん歩いていきます
わらわらわら… 電車からはまだまだ人が降りてきます。おばちゃんどんどん歩いていきます

ここは広島。ひろでん(広島電鉄)9号線の八丁堀の電停です。そうそう電停って言葉は、路面電車が走る町に暮らした人以外には馴染みがないかもしれません。電停は電車の停車場の略。停電の逆ではありません。

八丁堀はひろでんの本線ともいえる路線と乗り換える電停なので、こうしてわらわらとたくさんの人が電車から降りてくるのです。車道にあふれるほどの人だかりになることだって珍しくありません。

たしかに危険かもしれないですが、道の真ん中の高さ20cm、幅50cmくらいの小さなホームにたくさんの人が並んで立って、信号が青になるのを待っている。その様子がなんともいえない郷愁をさそうのです。いえいえ郷愁なんて夕陽色したセピアな感覚ではなくて、何か大切なものを失ってしまったような切ない思い。チンチン電車がかつて走っていた町で生まれ育って、でもいまではもうなくなってしまった我が身としてのは、広島の町をチンチン電車が走っているのを見ると、羨ましくて仕方がないのです。この街はたいせつなものを失わずにいるのだと、羨ましさが返す刀で喪失感となって自分に降り掛かってくるのです。

チンチン電車の呼び名のゆえんは、車掌さんと運転士さんの間で、発車オーライとか、電停を通過するなどをチンチンと鳴らす鈴の数で知らせ合っていたことなのだとか。車道を自動車と並走するからスピードは遅いけれど運賃は安い。ひろでんでは路面電車の区間は160円の一律運賃。電停の間隔はバス停より短いくらいで、紙屋町東と紙屋町西は交差点のこっちとあっちという近さ(小田急線の登戸・向ヶ丘遊園間なんて目じゃない圧倒的な近さ)。ちょっとした距離を気軽に乗り降りできるのが、何と言ってもチンチン電車のいいところ。中心市街地の空洞化は全国的な大問題ですが、路面電車が走る町は、たとえば広島も長崎も、いまでも町なかに元気があふれています。海外でもヨーロッパやオーストラリアのコンパクトで魅力的な町には路面電車がよく走っています。

ドイツ製の5000形もたくさん走っています
ドイツ製の5000形もたくさん走っています

路面電車を失った町が、もう一度路面電車を取り戻すことはまず不可能でしょう。空洞化してしまった中心市街地の再生もそうとう困難なことだと思います。

歩く速さに近いスピード感で、町なかを結ぶチンチン電車。これからも広島が路面電車が走る街であり続けてくれることを祈ります。

最終更新:

コメント(2

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  • A

    akaheru

    年に一度ほど広島へ行きますが、必ず乗りますチンチン電車。乗るたびに、昔おじいちゃん、おばあちゃんに会いに来た懐かしい思い出が甦ってくから不思議です。いつまでも走り続けてほしいですね!

    • I

      iRyota25

      わたしゃ、西鉄のちんちん路面電車を思い出してじ〜んなんです。各地の路面電車を譲り受けて走らせているひろでんは、走る博物館なんて言われたりもしましたが、西鉄車両もたしかあったはず。「♪〜 しばらくぶりの〜故郷はぁ〜、大きな町に姿を変えていた(中略)体を揺すって走ってたぁ、路面電車はいまはもういない〜♪」ってチューリップの歌が胸の中で鳴り止みませぬ。