東京電力は、6月4日付で報道配布資料として「福島第一原子力発電所4,000トンノッチタンク群からの水の漏えいについて」を公開した。
漏えいの時系列、推定原因、4,000トンノッチタンクの設置場所、漏洩箇所等の写真、堰の外側の線量測定結果などが記載された資料だが、漏えいしたのが「汚染水タンクエリア堰内雨水」との表現は前日のプレスリリースと変わらない。
推定原因にはポイントとなる部分がいくつかある。
平成25年10月頃、4,000トンノッチタンク群のうち、1,000トンのノッチ
タンク群に汚染水タンクエリア堰内雨水(平成25年8月に漏えいが発生した
H4エリアの堰内雨水を含む)の移送を実施。その際、ノッチタンク天板から
の水位が20~30cmで移送を終了したことを確認。
その後、1,000トンのノッチタンク群への汚染水タンクエリア堰内雨水の移
送は実施していない。
しかし、タンク天板の開口部から雨水が浸入し、タンク水位が徐々に上昇。
タンク天板上部から11cmにあるボルト穴から滴下に至ったものと推定。
また当該タンクは、パトロールを実施する対象としていなかったため、漏え
いを早期に発見することができなかった。
タンク蓋の開口部分から雨水が入って水位が上昇。その結果水漏れ、というのが推定原因のストーリーだが、もっと驚きなのは、「平成25年8月に漏えいが発生したH4エリアの堰内雨水を含む」という認識がありながら、「パトロールを実施する対象としていなかった」ということだ。
昨年10月、迫りくる台風27号に向けての対策を公開した資料には「H4北」と「B南」のエリアの堰内水を4,000トンノッチタンクに移送することが記されている。いずれも汚染濃度が高いと判明しているエリアだ。しかも4,000トンノッチタンクからは新設の強力ポンプで3号機タービン建屋に汚染水を移送することになっている。(下記の資料参照)
特別扱いされるはずだった汚染水が放置され、漏えいしたボルトの辺りには、藻まで繁茂している。一体どれくらいの期間漏れ続けていたのだろう。それにしてもタンクの蓋は万力で止められているくらいだから、仮設のものらしい。仮りの蓋を設置したのは、雨で水が増えないようにとの考えがあったからに違いない。つまり、溢れて漏れる危険性を認識した上で、隙間のあいた蓋を被せていたということだ。
中身はもちろん溜め方に関しても、「危ない水だ」と認識していながら計画通りに移送せず、それどころか「パトロールを実施する対象としていなかった」――。
たとえ論理的に破綻していても、せめて「中身は雨水でした」と強弁しなければ、もはやその場に立っていることすらできないほど、東京電力は追いつめられているのかもしれない。
本当のことを全部明らかにして、ごめんなさいと謝罪して、責任をしっかりとってもらって、後は事故原発をどうすればいいのかを、国民全体で考えるという方向に持っていくことはできないのだろうか。その方が東電や関連メーカーの専門家たちももっと力を発揮できるようになるだろうし、きっとこの国も少し明るくなれると思うのだが。
文●井上良太
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