【仙石東北ライン開業】新車両登場に秘められた物語

yumenoshippo01

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5月30日(土曜日)、震災でバス代行が行われてきた仙石線が完全復旧。さらに仙石線の復旧部分を利用して「仙石東北ライン」が連絡路線の整備によって新たに設定されます。そして仙石東北ラインにはディーゼルハイブリッドシステムの新車両「HB-E210系」が投入されることになっていて、いままさに注目と期待の最中にあるのです。

地元地域紙「石巻日日新聞」にも全面広告がどーん。仙石線の再開と並ぶうれしいニュースとして大々的に報じられています。

新聞広告ではちょっと分かりにくいかもしれませんが、新型車両は輝くステンレスボディに沿線の桜のイメージのピンク、仙石線の色ブルーと東北本線の色グリーンが配された、スマートでおしゃれな印象です。

でもでも新車両は仙石線再開のお祝いのために投入されるのではなく、元々仙石線と東北本線とで電気方式が異なっていたからという、止むに止まれぬ事情があったからなのだとか。その理由を紐解いていくと、驚きの歴史が見えてくるのです。今宵は仙石線と東北本線を結ぶ仙石東北ラインをめぐる歴史秘話をお伝えします(な〜んて、ヒストリアへようこそ♪ じゃないけど)

そもそも別会社の路線

驚きの事実その1は、仙石線は大正時代に宮城電気鉄道という私鉄が建設を始めた鉄道路線であるということです。国有鉄道(当時は鉄道省? 現在はJR)として建設された路線ではなかったのです。しかも、仙台駅付近で東北本線と交差するため地下に入る鉄道、つまり一部は地下鉄として建設されたのです。驚くべきことに、これは東京の銀座線よりも早い、日本に置ける地下鉄路線第一号でもあるのです。

別会社どころかライバル

仙石線には「多賀城駅・西塩釜駅・本塩釜駅・東塩釜駅・松島海岸駅」といった駅がありますが、東北本線にも、ほぼ対応するように「国府多賀城駅・塩釜駅・松島駅」という駅が設置されています。その理由は宮城電気鉄道と国鉄とでお客さんを取り合っていたからと言われています。それもそのはず、松島は当時から日本を代表する観光地のひとつでした。2つの鉄道は松島観光にやってくるお客さんを巡って創業当初よりライバル関係にあり、集客にしのぎを削っていたのです。

実際に地図を見てみると、多賀城から高城町にかけてのエリアでは、2つの路線は異常なほど近くを走り、とくに松島付近では交互に路線を縫うように敷設されいるのがわかります。さらに仙台駅で仙石線ホームが離れているのも、石巻駅の駅舎が仙石線用と石巻線用の2つあったのも、2つの鉄道会社のライバル関係を示しているのだとまことしやかにささやかれ続けているのです。

仙石線と東北本線が争っていたことを示す現在の路線図

石巻の歴史に詳しい方からは、東北本線の敷設に当たり石巻を経由するルートも検討されていたということですが、当時から北上川と太平洋を結ぶ船運で栄えていた石巻の豪商などの人々が反対したために東北本線が高城町付近からまっすぐ北上する路線になったのだという話を聞いたことがあります。

石巻は宮城県第2の都市ですが、こと商業に関しては仙台にも負けないという自信を江戸の頃から脈々と受け継いでいたのかもしれません。

考えてみると、明治時代、そして大正時代の頃には、地方の経済は鉄道敷設計画を左右するほど大きな力を持っていたのです。そのことは石巻ならずとも、たとえば久留米、たとえば博多、小倉や鹿児島中央駅(かつての西鹿児島駅)もそうですね(九州地方の例ばかりですが、梅田の大阪駅だってそうです)、全国各地で中心繁華街から少し離れた場所に鉄道駅が建設されてきた歴史を見ると、鉄道ナニするモノゾとの地方経済会の意気さえも伺えるのです。ちょっと脱線しちゃいましたね。鉄道話で脱線は御法度ということで……。

HB-E210系C-2編成 東北本線で試運転中 陸前山王駅にて(wikipediaより)
HB-E210系C-2編成 東北本線で試運転中 陸前山王駅にて(wikipediaより)

commons.wikimedia.org

いにしえのライバル関係から生まれた新型車両

はたして、元々ライバルだったから電気方式が違うという単純な話なのかどうかはわかりません。しかし東北太平洋岸で重要だった2つの路線は、電車化に当たって正反対の道を採択します。開業当時から地下鉄区間のあった仙石線は、当時から私鉄の主流だった直流電化を選択しました。一方の東北本線は交流。しかし、宮城電気鉄道は戦争中に国によって買収され国有化されることとなり、以後、仙石線としての歴史を歩み始めることになったんのです。しかしながら、仙石線も同じ国鉄の路線になったものの、電気設備を更新するのは大変なので、仙石線に限っては東北本線とは異なる直流電化が変更されることなく、そのまま現在に至っています。すぐ近くを走っているにもかかわらずです。

観光地・松島の旅客輸送を競い合うライバルとして、線路が重なり合うほどすぐ近くを走ってたからこそ、今回の直通運転は実現しました。しかし、電化方式が異なるので、ふつうの電車では東北本線と仙石線を直通で走ることができません。そこで投入されることになったのが「HB-E210系」。いわば、70年以上も昔のライバル関係があったからこそ、さらに言うなら、すごく近くを走っているけど、電化の形式は違うもんね! という状況があったからこそ両線に乗り入れ可能な新型車両が、沿線の桜の色をモチーフにしつつ新たに導入されることになった――ということなのです。

まさに、事実は小説より奇なり、ですね。

石巻日日新聞5月18日の記事によると、JR東日本は5月16日と17日、新型車両の試乗会を実施したそうです。車内アナウンスを聞いたり、LED照明が施された内装が見学できたとのことですが、いやもう早く乗ってみたいものですね、鉄道ファンならずとも!

走り出しは電車のようにモーターで始動して、加速していくのはディーゼル、減速時はモーターで発電する回生ブレーキでエネルギー回収というハイブリッドディーゼル。乗り心地の良さも独特とのことです♪

皆さまもぜひ、震災被害からの再生の象徴である「仙石線」と「仙石東北ライン」にご乗車になられてみてはいかがでしすか? 東北本線と仙石線の間をバイパスする新開業の路線ではいにしえからの歴史を、そして東名駅、野蒜駅を含む新設路線では、復興への確かな歩みを感じ取っていただけることでしょう。

【HB-E210系】 東北本線で試運転をしていました : 陸前山王にて @ 2015-01-28

YouTube

週に一度は撮り鉄を。 (Japanese trains!)さん
2015/01/28 に公開
C-2編成です。陸前山王にて 14:39 に撮影。
Hybrid train "Series HB-E210", departing from Rikuzen-sanno on test-run. (Tohoku line : JR East)

通過音だけだとよく分かりませんが、ぶぼ〜っと排気音を上げて走るディーゼル列車とはたしかに違うようです。ぜひ撮り鉄、乗り鉄のみなさんはもちろん、たくさんの方にディーゼルハイブリッドで再生した石巻への旅を満喫していただきたいものです。

 「仙石東北ライン開業 仙石線全線復旧」東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社
www.jr-sendai.com  
 仙石東北ラインの列車ダイヤについて
www.jr-sendai.com  

仙石東北ラインと仙石線のダイヤが掲載されています

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