2014年12月12日、福島と山形の県境にある吾妻山で、噴火警戒レベルが1(平常)から2(火口周辺規制)に引上げられています。気象庁の発表によると、12日に継続時間のやや長い火山性微動が観測された後、火山性地震が増加傾向になっているそうです。さらに、火口の東南東約1キロに設置されている傾斜計に、西上がりの変化が見られるとのこと!
いま吾妻山で起きていること
火山性微動はマグマや水蒸気など、流動性がある物質が火道(火山噴出物の通り道)を移動する際に発生すると考えられています。火山性地震は、火山活動によって岩盤が破壊されて起きる現象です。また傾斜計は、火山の山体の微妙な変動を測定するための計測機器で、噴火が間近に迫った時に山体が膨張する現象をとらえます。
現在の吾妻山は、山体が膨らむほどマグマなどが火口の近くまで上がって来ており、水蒸気やマグマの動きも激しくなり、それに伴って山体の岩盤が割れる現象も起きているという状況だと考えられます。
火山性微動や山体膨張といった現象が発生したからといって、必ず噴火するというわけではありませんが警戒が必要なのは間違いありません。「吾妻山の噴火警戒レベル」によると、レベル2は「火口から500m以内に噴石飛散」の危険があるとされています。気象庁警戒情報を受けて福島市では吾妻山への入山規制を発令しました。
誤解は禁物。レベル1でも危険な場所はある
そこで注意が必要なのが、気象庁が発表する「噴火警報・予報」のレベルです。噴火警報・予報が発表されるのは、全国110の活火山のうち「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として選定された47火山についてで、警報のレベルは5段階になっています。
吾妻山の警報レベルは、レベル1からレベル2に引き上げられた段階。それならまだ危険度が高くないように思ってしまうかもしれませんが、「それは間違いです」。
気象庁が発表する噴火警報は、「そこに入った場合に生命に危険が及ぶ」範囲を示すものです。レベル2だから危険度が低いというものではないのです。
上の表をよく見ると明記されていますが、「平常」とされるレベル1でもこう記されています。
火山活動の状況によって、火口内での火山灰の噴出等が見られる(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)。
レベル1でも安全ではないのです。では現在の吾妻山の状況、レベル2はどうか。
火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)噴火が発生、あるいは発生すると予想される。
やはり生命に危険が及ぶのです。今年9月27日に火砕流を伴う噴火が発生した御嶽山の現在の噴火警戒レベルは「3」です。レベル3では生命に危険が及ぶおそれがある範囲が居住地域の近くまで拡がります。レベル4では居住地へ重大な被害を及ぼす可能性が高まっている状況、レベル5ではさらに切迫している状況を示しています。
つまり、噴火警報・予報はレベルによって危険の範囲が違うだけで、生命の危険があることは変わらないのです。
噴火警報は、噴火に伴って発生し生命に危険を及ぼす火山現象(大きな噴石、火砕流、融雪型火山泥流等、発生から短時間で火口周辺や居住地域に到達し、避難までの時間的猶予がほとんどない現象)の発生や危険が及ぶ範囲の拡大が予想される場合に、「警戒が必要な範囲」(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)を明示して発表します。
現在、警報が発せられている火山は?
47火山については5段階のレベルで警報が運用されていますが、その他の火山については、予報、火口付近の危険を示す警報(2段階)、居住地に重大な被害を及ぼす恐れのある場合の特別警報の4段階で、また海底火山については予報と噴火警報の2段階で運用されています。
2014年12月16日現在、噴火警報が発令されているのは以下の13火山です。
現在噴火警戒レベル3の火山。(写真下の「出典元」は気象庁が開設しているそれぞれの火山の情報ページにリンクしています)
噴火警報が発令されている火山(写真下の「出典元」は気象庁が開設しているそれぞれの火山の情報ページにリンクしています)
気象庁による警戒・予報は発表されていなくても、蔵王、箱根、富士山など火山性微動や火山性地震が増えたと話題になっている火山も少なくありません。東日本大震災で日本列島の地下構造に大きな変化が生じていると考えられる今、大きな噴火が発生する危険性は否定できないと考えられています。
これから積雪量が増していくと、噴火に伴って融雪型の火山泥流が発生する危険性も増加します。日本が火山国であること、そして気象庁が発表する噴火警報・予報は、危険の度合いではなく、危険の範囲を示すだけのものであるということ、そして、危険とされるエリアに入ると、たとえレベル1でも生命に危険が及ぶということを、いつも頭の片隅に置いておいてください。
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