【まとめ】東北の友人たちが言うことには。

iRyota25

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復興支援ベース アーカイブス -4

東北の町で知り合った人たちが教えてくれた話を書き起こした「東北の友人たちが言うことには」。過去記事としてストックの底に沈めておくには惜しい記事を、アーカイブスとしてまとめます。

においの記憶

テレビも新聞もネットメディアでも伝えることのできないもの。それでいてストレートに記憶に結びついているもの、「におい」。東北の友人たちから繰り返し話してくれる「におい」の記憶。あの日からのことを忘れないためにもう一度。

 その1「におい」
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せっかくの義捐金なのに「このお金は使えない」

家族をなくし、家を失い、仕事もなくなってしまった。それでも町がもう一度立ち上がるのを私は見守っていくんだ。そんな長いおしゃべりの後、彼女がこう言った。
「ありがたいんだ。遠くから来た初めて会う人たちまでが、町を良くするために使って下さいって義捐金を届けてくれる。でもね、このお金は使えないの」
こんな時だからお金は貴重だ。本当は喉から手が出るくらい欲しい。それがきっと本音だろう。でも彼女はお金よりももっと大切なことを教えてくれたんだ。

 その2「このお金は使えない」
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「ストーブは反射式」と教えてくれる東北の友だち

「3月とはいえ寒かったろ? 雪も降ったくらいだもの。そんな中、避難所生活で役に立ったもの何だと思う?」
じいっと目を見詰めながら彼女は聞いてきた。うーんと考え込んでいると視線を切ることもなく答えを教えてくれた。「ストーブ。それも反射式のやつ」
ファンヒーターは電気がなければ使えない。ターボヒーターみたいなのは音がうるさい割に避難所全体が温まるわけじゃない。その点、反射式のストーブだったら、暖をとるだけじゃなく湯が沸かせる。ご飯だってなんとか炊ける。避難所じゃね、お湯が貴重なんだよ。寒くて風邪引きそうな時にお湯を一口飲むことでほっとできる。赤ちゃんのミルクを作ることもできる――。
「ストーブは反射式がいい」。その一言から彼女は避難所生活がどんなものなのか、紐解くように話してくれたのだった。

 その3「ストーブは反射型がいい」
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日本人は民度が高い、のウソ

テレビも新聞も伝えない。雑誌に載せられることがあってもほとんど誰にも信じてもらえない。だって、日本人は大震災の直後に暴動を起こすことはなかったし、支援物資の配給にもきちんと列をつくっていた。日本人はモラルが高いと海外から来たジャーナリストたちは自分の国に伝えたほどだ。日本人は民度が高い。震災の後、そんな根拠なしに誇らしく思うような空気が漂っていた。
でも、被害を受けた町にはバールでこじ開けられた自販機が転がり、津波被害を受けたコンビニのレジは壊され、炊き出しでもらった食べ物を「これ不味い」と捨ててしまう人もいた。立ち入りが制限された福島の町には窃盗団が跋扈した。色眼鏡は良くない。いろいろな意味でそうなんだ。東北の友人たちの言葉は、そう教えてくれる。

 その11「聞きたくない話」
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町の将来は見えないけれど、もう次は頼れない

津波の大きな被害を受けた町ではかさ上げ工事が進む。山を切り崩した土砂で、低地がどんどん埋められていく。役所のホームページには未来の町のきれいなパース図が掲げられている。
でも本当のところ、町の将来がどうなるのか誰にもわからない。たしかに計画通り区画整備は進むだろう。しかし問題は、美しく整備された町に、どれだけの人やお店が戻ってくるかだ。土地だけ出来ても人がいなければお店の商売は成り立たない。家だけ建ってもお店がなければ人々の暮らしは不便なものになる。
東北の被災したすべての町の現実だ。
だけど、もう次は自分たちで判断してやっていかなければと、その人は言った。
「仮設のお店を出させてもらっただけでもありがたいんだから。もう頼れないでしょ。次は自分たちの番なのよね」

 その13「仮設を出たら自分たちの問題」
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いいことも、悪いことも、つらい話も、それこそ聞きたくないような話も、みんな東北の友人たちが経験してきたこと。それを教えてくれるのは、伝えたいという気持ちが強いから。テレビも新聞も雑誌も伝えてくれないから、自分たちが伝えて行かなければと思っているから。

そんな思いから話してくれたことを、ぼくもできるだけ多くの人に伝えていきたい。

構成●井上良太

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