4,000トンノッチタンクからの漏水が「単なる雨水ではなかった」との考えを公表。社会とのあるべきリレーションの一歩として評価したい!
6月10日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
ノッチタンクからの漏水について「発電用原子炉施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより、核燃料物質等(気体状のものを除く)が管理区域内で漏えいしたとき。」に該当すると判断
単なる雨水ではなく「堰内に汚染が残存しその影響で放射能濃度が高く」なった水である可能性を東京電力が認め、公表。
当該ノッチタンク群に貯留していた水は、汚染水タンクエリア堰内に溜まった雨水ではあるものの、その中には、昨年8月19日に淡水化装置濃縮水の漏えいが確認されたH4北タンクエリアの堰内に溜まった雨水も含まれていた。H4北タンクエリアの堰内に溜まった雨水は、漏えいした淡水化装置濃縮水を回収した後にH4北タンクエリア堰内に溜まった雨水ではあるものの、堰内に汚染が残存しその影響で放射能濃度が高くなっていると考えられる。
本件については、堰内に溜まった雨水が流れ出たものと判断していたが、関係箇所に確認した結果、過去の漏えいの影響で雨水の放射能濃度が高くなっており「核燃料物質により汚染された水の漏えい」と考えられることから、6月9日午後4時20分、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第62条の3に基づき制定された、東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉施設の保安及び特定核燃料物質の防護に関する規則の第18条第12号「発電用原子炉施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより、核燃料物質等(気体状のものを除く)が管理区域内で漏えいしたとき。」に該当すると判断。
* 測定対象物から約5cm離れた箇所における測定
事故原発の処理に向けて「まっとうなこと」が行われる可能性が示されたものとして歓迎します。拍手したくなりました。事故なき廃炉は、日本中、いや人類が希望してやまないもの。そもそも当たり前のことであるのは論をまちませんが。
Fタンクエリアの滞留水処理装置(淡水化装置)からの漏水についての続報
また、漏えいした水の分析を行った結果は以下の通り。
・セシウム134:3.6×102 Bq/L
・セシウム137:1.0×103 Bq/L
・全ベータ:9.3×103 Bq/L
漏えい箇所は、当該装置に設置されている導電率計のフランジ部であることを確認。漏えい量は、当該装置のトレーラー内に約23リットルおよびトレーラー外に約44リットルの合計約67リットルと推定。漏えいした原因については、引き続き調査中。
タンクエリア作業員の顔面と鼻腔に放射性物質(続報)
※6月9日午前11時55分頃、Bタンクエリアにおいて配管寸法確認を行っていた作業員が、免震重要棟において汚染検査を受けたところ、顔面および鼻腔内に放射性物質の付着が確認された。(ここまで既報)
ただちに当該作業員の顔面および鼻腔内に付着した放射性物質の除染を行った上で、福島第一原子力発電所を退域し、内部取込みの恐れがあることから、同日午後3時34分にJヴィレッジにてホールボディカウンタ(全身測定)*を受検。その結果、今後50年間に受ける放射線の量は0.51ミリシーベルトと評価され、記録レベル(2mSv)未満であり、問題のないことを確認。
今回の顔面汚染は、当該作業員が現場作業を行ったゴム手袋を交換せず、全面マスクの装着状況を手直しした際に、全面マスク内部に汚染が入り込んだものと推定。
* ホールボディーカウンタ:体内にある放射性物質を体外から測定する放射能測定装置。
第4回目となる地下水バイパス海洋排出の続報。放水口付近のサンプリング結果
同日、この際の南放水口付近の海水についてサンプリングを実施し、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機
1号機と同じ4項目に加え、タービン建屋地下の高濃度汚染水の移送を記載
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(6月9日午後4時30分~)
3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
加えて、タービン建屋地下の高濃度汚染水の移送について記載。
※燃料プール冷却を停止した上で行っていたプール内崩落物の撤去作業は停止のまま
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(6月9日午後4時50分~)
4号機〜6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス揚水井の状況
新規事項なし
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果 〜焼却建屋滞留水の移送が終了〜
高濃度滞留水を誤って移送した焼却建屋からプロセス建屋への移送を実施中。5月16日10時30分に移送が完了した工作建屋に続き、焼却建屋滞留水のプロセス主建屋への移送が完了したことを記載。
・焼却建屋:6月10日午前11時1分、回収作業が完了。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
6月9日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規事項なし
地下貯水槽の状況
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年6月10日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: