3月10日(月曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心にチェックします。
淡水化装置の溜まり水、5号機燃料交換機の続報、さらに5号機燃料交換機の作業終了後に発生した天井クレーン停止。立て続けに発生するインシデントについて報告されています。
各号機の状況についての記載に先立って、冒頭に特記された事項について、それぞれ見出しを立てます。見出しはこの記事の筆者によるものです。
淡水化装置No3(逆浸透膜式)マルチメディアフィルタ付近の堰内水溜まり(続報)
淡水化装置のシステム構成図、現場写真などが報道配布資料として公開されています。
日報では、溜まり水の主な核種の分析結果を記載。
溜まり水の主な核種の分析結果は以下の通りであり、2月11日に採取した淡水化装置入口水の分析結果とほぼ同程度であった。
<溜まり水の分析結果>
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:2.4×102Bq/L)
・セシウム137:2.2×102Bq/L
・全ベータ:2.3×107Bq/L
<参考:2月11日採取の淡水化装置入口水の分析結果>
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:8.6×102Bq/L)
・セシウム137:1.7×103Bq/L
・全ベータ:2.8×107Bq/L
*水処理設備の放射能濃度測定結果(平成26年3月4日公表)
水溜まりの発生原因は特定されておらず、引き続き原因調査を行う。
*マルチメディアフィルタ
逆浸透膜のつまり防止のために逆浸透膜の前段に取り付けられたフィルタ
報道配布資料の締めの言葉として記載されていた下記が、現状を分かりやすく示しています。
→水溜まりの発生原因は特定されていないが、結露水としては高い
値であることから、淡水化装置の遮へい材に覆われている箇所も
含め、引き続き原因調査を行っていく。
福島第一原子力発電所 淡水化装置(RO-1)ジャバラハウス内に おける水溜まりの発見について(RO-3マルチメディアフィルタ付近) 東京電力 平成26年3月10日
内容は重複しますが、このインシデントについての報道関係各位一斉メールの最新版のリンクもご紹介します。
5号機燃料交換機、主ホイスト用の荷重を検出する計器の電源が停止した件(続報)
謎の出来事でした。
主ホイストは、燃料つかみ装置を上下に昇降させる巻き上げ装置です。震災後の核燃料移動では、地震の揺れの影響などで燃料ラックに変形や引っ掛かりが生じている懸念があります。無理に引き上げると危険であるため、荷重を検出する計器が重要視されています。
その装置の電源が停止していたのです。
電源停止が確認されたのは、3月5日9時30分頃。その後、荷重を検出する計器の回路にある保護ヒューズが切れていることを確認し、午後3時頃、当該の保護ヒューズの交換を行い、電源を再投入したところ、再度、保護ヒューズ切れが発生。
このことから、3月6日付の日報では、以下のように記載されていました。
このことから、今後、原因調査を継続して行う。
その後の原因調査と対応が3月10日付の日報で報告されました。
調査を実施したところ、荷重を検出する計器のデジタル表示器に不具合が発見されたため、デジタル表示器の取替えを行った。
3月10日、燃料交換機の動作確認を行い機器の健全性を確認。
しかし、これで一件落着ではありませんでした。関連する設備での不具合が続けて発見されたのです。
5号機原子炉建屋天井クレーンが走行中に停止
核燃料移動の際に、燃料交換機と連携して作動する天井クレーンの不具合が発覚しました。
※3月10日午前11時00分頃、5号機燃料交換機の上記の対応が終了し、その後の片づけ作業において、原子炉建屋天井クレーンを動かしていたところ、当該クレーンが走行中に停止。同日午後0時36分頃、現場確認をしたところ、クレーン走行用インバータ盤の電源が停止していた。なお、当該クレーンは荷を吊っていなかった。現在、現場調査を行っているが、現時点で設備損傷の情報はなく、けが人はいない。
このインシデントについての詳しいリポートは、報道関係各位一斉メールでもまだなされていません(3月11日午前11時現在)。
2011年8月25日に撮影された5号機原子炉建屋天井クレーンの写真が下記のページに掲載されています。
1号機~2号機
新規事項なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目
3号機
1号機と同じ4項目に加え、
タービン建屋地下からの高濃度汚染水移送の送り先が切り替えられたようです。
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年1月24日午後2時37分~平成26年3月10日午前9時35分)
・3号機タービン建屋地下→プロセス主建屋へ高濃度滞留水を移送開始(平成26年3月10日午前9時51分~)
高濃度汚染水移送についての詳細は下記のPDFに記載されています。
集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)、プロセス主建屋ともに、4号機南側の大型排気塔の近くにある「集中廃棄物処理建屋」と呼ばれる建屋群に位置するようです。
4号機
使用済燃料プールから共用プールへの燃料移動中の4号機では、循環冷却設備の弁を交換するため冷却を一時停止したことが新規事項として記載。
※3月10日午前11時13分、4号機使用済燃料プール代替冷却系について、当該系統の循環冷却設備弁の交換等を行うため、停止。なお、冷却停止時の使用済燃料プール水温度は13.0℃で、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.289℃/hで、停止中のプール水温上昇は約3℃と評価されることから、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題ない。
5,6号機
新規事項なし。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
◆共用プール
新規事項なし。
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
新規事項として、第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
※3月10日午前10時54分、第二セシウム吸着装置(サリー)の空気作動弁の駆動用空気供給ラインを、信頼性向上の観点から既設の樹脂製チューブを銅製チューブへ交換するにあたり、当該弁の操作ができなくなることから第二セシウム吸着装置(サリー)を停止。今後、セシウム吸着装置にて水処理を行う予定。
サリーは、ゼオライトという粘土鉱物がセシウムを吸着する性質を利用したセシウム吸着装置。それまでの外国製装置と区別するため第二セシウム吸着装置と呼ばれる。高温焼却炉建屋内に設置されている。
※セシウムは消えてしまうわけではなく、タンク内に入れられたゼオライトに吸着。高い濃度でセシウムを吸着したゼオライトはタンクごと交換され、原発構内で保管されている。
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
サンプリング実績を新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項の報告なし。
地下貯水槽の状況
最新のサンプリング実績を新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月10日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: