3月6日(木曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心にチェックします。本日分は新規事項の多い日報です。
各号機の状況についての記載に先立って、冒頭に特記される事項が3月6日の日報では多いため、事項ごとに見出しを立てます。見出しはこの記事の筆者によるものです。
協力企業作業員が警報付ポケット線量計(APD)を装着せずに正門を通過(続報)
昨日詳しくチェックしたAPD未装着インシデントがなぜ発生したのか、その経緯についての記載です。APDに読み取らせる必要のある作業件名コードを持っていなかったのでAPDを借りられず。⇒そのまま原発構内の登録センターへ向かった。⇒警備員によるAPDの装着確認が行われなかったため、結果的にAPD未装着作業員の入域を許してしまった。
作業件名コードという新たな言葉も登場しますが、最終的には三番目の
「警備員によるAPDの装着確認が行われなかった」
ことが重大ですね。紹介ビデオでは入念なチェックが行われていたのですが。。
※3月5日午前8時30分頃、正門において、トラックに乗車した協力企業作業員が、警報付ポケット線量計(APD)を装着せずに、正門を通過したことを確認。当該作業員は午前9時35分頃に正門から退域。
当該作業員は、正門のAPD貸出所にて作業件名コード(WID)(*)の不携帯により、APDを借りることができなかったが、車両をUターンさせるスペースが無かったために発電所構内に進行し、そのまま登録センターに向かったことが判明。
また、警備員によるAPDの装着確認が行われていなかったことも判明。
なお、当該作業員のAPD未装着時の被ばく線量は約2μSvと推定。対策として、今後は車両で入構する運転手のAPDの装着確認を徹底する。
*作業ごとの被ばく線量を管理するため、作業前にAPDに作業件名などの情報を入力している。
5号機燃料交換機「荷重計」に不具合
核燃料を交換するには、格納容器・圧力容器の巨大な蓋をあけ、圧力容器上部に納められた機器を外した上で、圧力用域内から燃料棒がセットされた燃料ラックを引っ張り上げて行われる。引っ張り上げるのに使われるのがホイスト(巻き上げ機:ゲームセンターのクレーンゲームと同様の機能のマシン)で、今回の不具合は「主ホイスト荷重計」がダウンスケール(低い側に振り切れた状態)していたというもの。
原因はヒューズ切れと推測しヒューズ交換を行ったが、ふたたびヒューズ切れが発生。原因調査を継続して行うとしている。
※3月5日午前9時30分頃、5号機燃料ラック点検に伴い燃料交換機の作業前点検を行っていたところ、
燃料交換機の主ホイスト(*)用の荷重を検出する計器の電源が停止していること、また、燃料交換機上の操作卓に設置されている「主ホイスト荷重計」がダウンスケールしていることを当社社員が確認。
その後の現場調査において、燃料交換機の主ホイスト用の荷重を検出する計器の回路にある保護ヒューズが切れていることを確認。
そのため、午後3時頃、当該保護ヒューズの交換を行い、当該計器の電源を投入したが、再度、保護ヒューズ切れが発生。このことから、今後、原因調査を継続して行う。
*燃料移動の際に使用する燃料つかみ装置を昇降させるための装置。
多核種除去装置(ALPS)B系の処理停止
昨日分の日報チェックで、報道関係各位一斉メールによる情報として紹介したインシデントの続報。前処理を行った汚染水を、核種に合せた吸着を行う吸着塔送り込むブースターポンプの不具合で、3系列ある多核種除去装置(ALPS)のうちのB系が処理停止となったことを記載。なおALPSは、実際の汚染水を使っての試験(ホット試験)中。
※3月5日午後5時40分、多核種除去装置のインバータ故障警報が発生し、3系統(A系、B系、C系)あるうちの1系統(B系)のブースターポンプ(*)No.2が停止。
これに伴い、B系が循環待機運転に移行した。
B系のインバータおよび当該ポンプ電動機の点検を行ったところ、それぞれに異常は確認されなかったが、インバータ内部に当該ポンプの電動機が過負荷となったことを示す信号が記録されていた。
B系はクロスフローフィルタの差圧上昇が起きたことから、比較的低流量で安定した処理運転を行っていたが、過度の低流量状態で運転を継続すると、当該ポンプが過負荷となる信号が動作する設計となっており、今回はこの信号が動作し当該ポンプが停止したものと推定。
このため、B系が過度な低流量状態での運転とならないように、当該ポンプの上流側のタンク水位およびポンプ流量の監視を強化して適切に制御することとし、3月6日午前4時5分、当該ポンプを起動し、処理運転を再開。起動後の運転状態に異常はない。なお、同設備で試験運転を行っているA系およびC系については、異常はない。
*鉄共沈処理(有機物の除去、α核種の除去)や炭酸塩沈殿処理などをした水を吸着塔へ送るポンプ。
乾式キャスク1基で「圧力異常」の警報が発生した件
燃料プールから取り出し、動力によらない冷却を狙う乾式キャスクで警報が発生。
キャスクの蓋は二重蓋なので、「蓋間圧力異常」とは、蓋の間を意味すると思われるが詳しい説明が見つかりません。今後の発表に期待したいところです。
キャスク内部は腐食防止や将来の内圧上昇に備えて真空にされています。今回の警報は計器誤作動の可能性もありえますが、真空の度合いが変化したことを示す可能性があります。
※3月6日午前7時56分頃、乾式キャスク仮保管設備に保管しているキャスク1基において、「蓋間圧力異常」の警報が発生。
当該キャスクに設置してある2つの圧力計のうち、1つは正常な値を示しており、もう1つは異常な変動を示していることを確認。また、現場確認したところ、キャスクの外観に異常は確認されていない。
2台ある当該キャスク圧力検出器の内の1台(No.1検出器)の指示値が、255~280kPa(abs)の範囲で安定しておらず、警報設定値(294kPa(abs))を下回っていることを確認。
同日午前8時40分、当該キャスク仮保管設備用門型クレーンを停止したところ、No.1検出器指示値(通常値(330kPa(abs)))は335kPa(abs)に復帰し、安定状態となった。
また、No.2検出器の指示値については、333kPa(abs)であった。
今後、当該キャスク圧力検出器の点検を行う。なお、午前8時10分現在において、モニタリングポスト指示値の有意な変動は確認されていない。
1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
毎日継続して記載されている上記の4項目に加え、新たに設置したサブドレン(地下水汲み上げ用の竪穴)の核種分析を記載。
・今回新たに設置した原子炉建屋(山側)のサブドレン(N5)のガンマ核種、全ベータ、トリチウム(3月4日採取)の分析を実施。セシウム134が5.2Bq/L。セシウム137が5.7Bq/L。全ベータが検出限界値未満(検出限界値は14Bq/L)トリチウムが490Bq/L。
2号機~6号機
新規事項なし。
◆2号機
1号機の4項目と同じ。
◆3号機
1号機の4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
新規事項はパトロール結果とサンプリング実績について記載。
<最新のパトロール結果>
3月5日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12の
サンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
サンプリングについてのみ新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
サンプリングについてのみ新規事項として記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月6日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
最終更新: